第一章14 『ノブナガ』

「「「「ノブナガ様は最高だ〜」」」」


「「「「ノブナガ様はカッコイイ〜」」」」


「「「「ノブナガ様は世界一!!」」」」


 様々な種族の八人の男達が、軍隊で訓練時に唱和される行進曲を大声で歌ってる。


 ハッ――恥ずかしい。こんな恥辱を受けたのは生まれて初めてだ。


 俺は八人の屈強な男達が担いでいる、その神輿に乗ってノブナガと俺はアスラル共和国を闊歩していた。

 神輿の上に人が乗るのはタブー。それを全く気にしてないのがこの人のスタイルだ。

 俺は全力で俯き、両手で顔を隠していた。通行人、全員の視線がかなり痛い。


 しかし、凄いのは通行人、ほぼ全員が「おぉノブナガ様だ〜」など、感嘆の声をあげる人しかいないのだ。

 これは――この人の人望だろう。


 この国は様々な種族が、いざこざがなく平穏に過ごしいてる。

 アルカディアはおかしい。プレイヤーは人族ヒューマンしか選択が出来ないのに、アルカディアでは人族ヒューマンが一番劣等種族である。それ故に、住むには息苦しい国もある。


 だからこそ、人望が厚いこの人の言葉を――――


『ほほぅお主、わしと似て中々の美丈夫だな。ランクアップの記念だ。わしの家で祝う。来るのだ』


 冒険者ギルドで声を掛けられ、俺は一目見てノブナガと分かった。

 和服の上に黒い外套を纏い、不格好な黒いロングブーツを履き、長い黒髪をポニーテールにしている男。


 俺はノブナガの言葉を拒否する権利はあの場ではなかった。


 目付きも怖いし、拒否して変な噂も流れるのもめんどくさい。それにこの人は悪い人ではない。めんどくさいけど。二度ど言うが。


 ノブナガは俺がサンだった時、お世話になった者だ。

 しかし、この人は破天荒すぎる。また変なクエストを依頼されないか不安である。


 クエスト:ギルドから依頼。または唐突に起こる場合もある。


 俺は豪奢な宮殿へとそのまま案内される。

 この宮殿が変わっているのは、外見は洋風の城なのに内装は日本のお城だ。何回来てもマジマジと見てしまう。


 そして、畳の大広間に案内され、ノブナガは上段間に腰掛け、俺はノブナガの眼前の下段間に座る。

 俺の左右にはノブナガの家臣が二人いた。いるのは種族、獣人族ビーストの猿モデルの者と、犬モデルの者が構えていた。


 俺は訝しみながらノブナガを見つめた。そのノブナガは俺の視線から一切逸らさずに、ずっと瞳を返している。少し気まずい雰囲気の中、俺はゆっくりと口を開けた。


「あの――どうして俺がAランクなのを知っているんです? その……帰ってもいいですか……?」


 冒険者ランクの情報は秘匿のはず、本人の許可がなければ発表されないが、ノブナガは俺がAランクだと知っていた。


 それは気になるが、早くこの場から立ち去りたいのが本音である。


「貴様!! 初対面でノブナガ様に失礼ではないか!!!」


 俺に睨みながら、威圧を込めた言葉を飛ばすガタイのいい男。真紅に染まった赤髪で、イヌミミを生やした者。

 声に反応すると共に俺はステータスを確認した。



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 PN:カツイエ<獣人族ビースト

 LV:75 JOB:パラディン

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 名前を見えるのは本当に便利だな。カツイエさんとはサンの時、反りが合ったのにな。


 今は俺に対してカツイエは、警戒心満々だった。


「よい、カツイエ、わしの客だ!! お主の問の答え――それは、ただのわしの感だ!」

「――――」


 カツイエはノブナガの一言で黙り、すぐさま下がった。


 この人のそうだ――なんとなく、なんとなくが強い人なんだ。

 なんとなくギルドに立ち寄った、なんとなく声を掛けた――なんとなくカマをかけた、なんとなく当たる。

 そうこの人のパッシブスキル。


 ――――天下布武。


 ノブナガの凄まじい、スキルである。


「まぁ、そう警戒心するでない。単純に祝いだ。サル! 例のものを持ってこい!」


 また、この人は昔から――――


「あの、ノブナガさん、人にはちゃんと名前があるんです。そう言う変なアダ名はつけない方がいいと思いますよ!! この人にはトウキチって言う名前があるんですから」


 ノブナガの眼がカッと見開らかれ、ニヤリとする。

 隣のカツイエは俺に今にも飛びかかって来そうだが。しかし、ノブナガは瞠目して笑う。


「ハッハッハッ!! よいよい!! 懐かしい!! 昔も同じ事を言われたのだら忘れてたわ!! ハッハッハ!!」


 俺はノブナガの言葉を繰り返し、頭に浮かび立てる。すると鋭い閃光の様に思い出す。


 あっそうだ俺。同じこと言ったことがある。この人に――


「じゃあ、その……」

「わかった、わかった! トウキチ! 直ぐに持ってこい!」


 俺はトウキチの方へ視線を転じる。優しい顔をしたちょび髭を生やした男が居る。そして、流れでステータスを確認した。



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 PN:ヒデヨシ<獣人族ビースト

 LV:76 JOB:バーサーカー

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 ――――この人、名前が違う。名前を偽っているんだ。


 俺はライトになってから、ステータスを確認すると、職業と名前が表示される様になった。プレイヤー同士はフレンド登録で名前が明瞭になる。


 NPCの場合は自己申告になる。どうしてこの人は、名前を偽っているんだ。ティアと言い、トウキチと言い――いやティアの場合は表記がエレナだ。

 

 ――――わけがわからない。


 するとトウキチは玉手箱をノブナガに渡す。ノブナガはトウキチから受け取った、玉手箱を持ちながら、俺の目の前に座った。


「これは俺からの褒美だ」


 俺は目を見張り、玉手箱の中の物とノブナガを交互に見てしまった。

 


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 装飾品:ノブナガのマント<レジェンダリー>

 上昇値:――

 アイテム説明:漆黒の外套、不明。

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 装飾品:白月の仮面<アンコモン>

 上昇値:ヘイトが少し減少する。

 アイテム説明:白い仮面、右目側に三日月の絵柄がある。とても軽く、丈夫。

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 その玉手箱には黒い外套と白い仮面が入っていた。

 アイテムにはレアリティがあり。コモン、アンコモン、レア、エピック、レジェンダリーとある。


 レア以上は殆ど手に入らない。誰もがレアまでの物を強化して使う。レジェンダリーは幻のアイテムで唯一無二である。

 それを簡単に渡すのがノブナガ。


 俺が欲しいと思っていた――フード付きの外套、黒でカッコイイし、しかも、白い仮面って姿も顔も隠せる。


 このタイミング、この時で渡す。これがノブナガのスキル、天下布武。ただ――なんとなく。なんとなくで人を魅了させる。


「これは褒美だ」

「ありがたく、いただきます」


 俺は直ぐに受け取った。


 俺は笑みが零しながら、その場から去ろうとする。

 すると――ノブナカがバシッっと、俺の左手首を掴む。そして、鋭い眼光を俺に向ける。


 ――嫌な予感。


「少し頼みたい」



 ===============

 クエストが発生しました

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 ===============

<ノブナガの依頼>

 クリア報酬:――

 クエスト失敗時:――

 ヒサヒデと共にレッカイドウに発生したモンスターを倒せ。

 ===============



 ――――緊急クエスト。


 この人最初からこれが目的か。

 このノブナガのなんとなくが、俺に新たな出会いをもたらす。


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