第一章11 『リスタート』
俺はエントランスゲート前に居た。あれから桜と別れて俺はこの場所にいる。先ほどの一風堂の和食料理はとても美味しかった。流石は桜が選んだお店だな。
そう余韻に浸っているある人物の姿が見える。
「太陽くん! 相変わらず早いね〜」
「正堂さんすみません」
「いいよ、いいよ! 僕も会いたかったからね〜」
中神正堂、開発運営会社MOの広報担当である。彼はアルカディアの人気キャラクター「ルナ」を生み出したすごい人である。
キャラクターのルナはアルカディアでは音声のみしか出てこないが、リアルではバーチャルアイドルとして活躍している。可憐な
顔も悪くない、茶髪イケメンメガネなのに、40歳過ぎた正堂は恋愛のれすら噂が流れない。20代くらいには彼女は居たらしいが。
そして、俺が今いる場所はMO本部であり、そのエントランスゲート前に俺は居た。
東京の街で一番の超高層ビルディング。白銀で天高く聳える会社は誰もが憧れとしている。勇者レインがギルド名を白銀の巨塔と付けたのは、この会社からのオマージュである。
「じゃあ、行こうか!」
俺は正堂に追従していく。俺が
この時代は監視システムが作動しており、殆どの場所が管理AIが見張っている。この部屋には白いテーブルと白い椅子だけがあり。俺達は対面で椅子にかけた。
「どういう要件かな? 君がああ言う言い方をする時は、ちょっと危ない時しかないからね」
と言いながらもニコニコ楽しんでいる正堂。
「単刀直入に言います。レインが俺のキャラクターのサンが消えた事を知っていました。そしてアルカディアではアイツは俺が勇退したって言ってたんです」
冒頭は眉を顰めていた正堂だったが突然、正堂は驚いた顔を見せていた。
「君は――アルカディアに入ったのか?!」
「えっ……? 普通にログインしましたけど」
俺も正堂の動揺につられて息を呑んだ。
「はぁ……またか、あの開発部の連中、僕達をなんだと思ってるんだ、だいたい、空飛ぶ車を作りたいとか、ふざけるな!! 空を見上げて車体の背中を見て気持ちいいか? あぁ!! ファンタジーこそが今この科学が進んだ現代に必要なんだ──────────────────────」
うわぁ――正堂さんが闇堕ちしたよ。
MOの営業と技術開発は昔から見えない障碍があり、正堂は技術開発の事をあまりよく思っていないのだ。俺は内心ため息をつきながら声を掛ける。
「正堂さん! 正堂さん!!」
すると、正堂はハッとして落ち着きを徐々に取り戻す。
「ふぅ〜すまない、すまない」
「その反応だと、俺が新しいアカウントを貰った事は知らないみたいですね」
正堂は俺の言葉を聞き、苦虫を百匹噛み潰したような表情をしていた。右手を爪をくい込ますほど、強く握り締めていた。
「あぁ……知るもなにもアルカディアで二つのアカウントってのは、ありえないからね……。これはだいぶ不可解だな。そしてレインが君がBANされたのを知っているのは多分、それに関与している可能性が高いね」
――レインが……。確かに正堂さんが言う通り、情報を隠蔽していたMOからそれが漏れる事はまず――ありえない。
「まぁ、これは僕に任せてくれ。レインがリアルではどういう人物なのか僕が調べてみせる」
正堂はそう言い放ち――決意に満ちた表情になる。俺はその言葉に肝が冷えた。これが意味する事は――
「正堂さん――それはダメだ、禁忌だ! MOに所属している人間がアルカディアのキャラクターからリアルを探す事は絶対にしてはいけない」
それがバレたらどんな波紋が広がる事だ。それよりも正堂は重い罪に問われる。
「だが……」
「――――絶対ダメだ!!!!!」
俺は裂帛した、その正堂の憮然を目にして――
「しかし……」
「俺はサンが消えた事には後悔は、少しあったが――もう今はそれに付き纏われていない!!」
正堂は目を大きく開け、俺の言葉に強く反応する。
「……どうしてだ? 君はあんなに必死になってトッププレイヤーを目指していた。言い方は悪いがリアルを捨ててまでだ……。ただ、がむしゃらに、僕は
正堂はまるで、自分自身の事のように話していた。その声色から痛いほど俺の心に沁み込んでいく。
「まぁ、正堂さんの言う通り、立ち直れなかったかも知れません。妹の桜が居なければ――後は新しいキャラクターのおかげかもしれません。もう何回も喪失感を味わって俺はバグっていたんです。自分の周りが零れすぎて」
(そうか……桜ちゃんと君の家族の事だね)
「今は楽しいんですよ。過去を振り返りながらゲームを楽しんでいます。そうなんで
「だが……君は」
正堂は言葉が出そうになったが俺の瞳を見て口を閉ざした。その強い瞳に――――
「正堂さん、俺がタダで終わると思いますか。俺はライトでサンよりも見聞を広め、レインのパーティの白銀の巨塔を超えますよ!」
「しかし、そうなるとまた――そうか!」
「はいそうです。レインなら、もしかしたら、いやかなりですね。同じ事をするかもしれません」
「あぁそうか!」
正堂は俺の考えている事に気づき笑いだした。俺も獰猛な笑みを浮かべながら話す。
「その時にとっちめてこう言うんです。ざまぁって」
「ふふふっ君は悪い子だ!」
――――――――ここから俺の反撃が始まる。全ての。
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