1-29 水神来たりて敵を呑む。
ナギと一体化したケンゴは湖の中を全速力で泳いでいた。
(すごい、こんなに早く泳げるなんて!)
元々ケンゴは泳ぐ速さも凄まじかったが、ナギと一体化したことにより操れるようになった水魔法の力で常軌を逸した速さで泳げるようになっていた。
(なによりも、水の中なのに、呼吸ができる。)
最大の恩恵として、水中でも陸地と変わらず呼吸ができることである。
(これなら息が続くかなんて気にしなくてもいい、水中でも全力で戦える。)
今の彼にとって水中は力を制限される場所ではない、れっきとした主戦場であった。
水中においてナギと一体化し万全の体制を整えたケンゴの前に先ほどと同じくスケイルダイルが2体現れた。
「「!!!!」」
2体のスケイルダイルは再びケンゴを水中に磔にし、呼吸困難で殺そうと水魔法で水流を起こす。
(残念だったな、もうそれはきかんよ。)
今のケンゴは水中でも呼吸ができるうえ、ナギと融合したことにより水魔法に耐性ができた。
(さて、これはさっきのお返しだ、破ァアアアア!!!!)
気合を入れたケンゴはその場で正拳突きを放った。
すると巨大な衝撃波が発生し、スケイルダイルに命中した。
「「!!!!!!!!」」
あまりの衝撃の強さに2体は一瞬意識を飛ばされ流されてしまう。
(すごい!水中でも陸地と同じように戦える!)
ナギと融合した恩恵は、ただ早く泳げたり呼吸ができたり水魔法が聞かなくなることだけではなかった、水中でも陸地と同じように踏ん張って戦うことができるのだ。
(フッ!)
ケンゴはいまだ衝撃で動けないでいる2体に水を蹴って一気に距離を詰める。
(そらっ、よっと!!!!)
「!!!!!!!!」
「!?!?!?!?」
そして片割れの尻尾を掴み、大きく振り回し、もう片方を思いっきりぶん殴った。
「「!!!!」」
スケイルダイル達はかなりのダメージを受けたものの、なんとか体制を立て直し、目を赤く光らせ、水流を操り2本の渦を発生させる。
(さっきまでなら僕もこれでかなり追い込まれていただろうなぁ。)
その絡み合う2本の渦の中心でケンゴは悠々と立っていた。
(さて、ちょうどいい、ぼくも水魔法を使ってみようか。)
ケンゴは両手を目の前で合わせて魔力を練り合わせる。
そして頭の中でイメージした魔法を発動した。
(我流奥義、"水神呑撃"《すいじんてんげき》)
「「!?!?!?!?」」
2体のスケイルダイルを球体上の水流が完全に飲み込んでしまい、捉えられたスケイルダイル達は身動きが完全に取れなくなってしまった。
(さて、終わりにしよう、神室流奥義、、、、)
ケンゴはしっかりとその場で踏ん張り、両手の拳を腰に据えた構えをとる。
そして極限まで溜めた力を解放する。
放たれた二つの拳はそれぞれ逆の回転をかけられ、それは水中に巨大な二つの渦巻きを水平上に発生させた。
("真 螺旋水神大砲"!)
「「!!!!!!!!!!!!」」
絡み合う2つの渦巻きは、水魔法の力により強化され、飲み込まれた2体のスケイルダイルは、なすすべもなく2本の渦巻きの中心で体を引き裂かれていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ケ、ケンゴ様!?ケンゴ様!?」
「イリス!ケンゴは大丈夫なの!?」
「お嬢様!落ち着いてください!リリィ様も、お嬢様を焦らせないで!」
「クゥーン、、、、」
湖のそばで待機しているイリス、リリィはかなり取り乱していた。
そんな2人をレナは必死に落ち着かせようとしており、ハクは全く帰ってこないケンゴを心配し、悲しそうにしていた。
「お嬢様、コネクティブの魔法ではケンゴ様はどうなっているのですか?」
「え、えっと、ケンゴ様は大丈夫なはずです、この糸からケンゴ様の生命活動がわかりますから、でも、こんなに長く潜っていられるわけないんです!何か別の事に巻き込まれたのかもしれません!」
「あり得るわね、ケンゴが眠らされたとかなら命に危険はないわけだしね、、、、」
「ウォゥゥゥン、、、、」
全く戻ってくる気配のないケンゴの身を案じる3人と1匹。
変化が訪れたのはその時だった。
「2人とも見て!あれ!」
「「はい?」」
リリィが指をさした方では湖がそこだけ不自然に荒れていた。
「何が起こってるんですか?」
「わからない、でも多分だけどあれ、ケンゴの仕業だと思うの。」
突如として起こった変化に動揺しつつも期待するイリスとリリィ。
「お嬢様、コネクティブに変化はありますか?」
「えっと、待ってください、、、、こ、これは!?」
「どうしたの!?」
イリスは驚きながらも嬉しそうな様子で叫ぶ。
「戻ってきてます!ケンゴ様が戻ってきてます!!!!」
「ほんとに!?」
「本当ですか!?」
その情報にリリィとレナは歓喜する。
「どんどん近づいてきます!すごい速さです!」
「ウォン!ウォン!ウォン?」
ハクも近づいてくるケンゴの気配を感じ取ったようだ。
しかし心なしか気配に違和感を感じたようだ。
「もうすぐですよみなさん!」
「ケンゴ君!」
「ケンゴ様!」
全員が固唾を飲んで湖面を見守る。
そんな全員の期待に応えるように、水蛇モードのケンゴが飛び出し、全員の前に着地した。
「「「ケンゴ君(様)!!!!」」」
3人は飛びつく勢いでケンゴに迫る。
「大丈夫!?怪我はない!?その姿はどうしたの!?」
「何もないですよね!?何かあるなら言ってください!?」
「大丈夫ですか?何かしてほしいことはありますか?」
捲し立てるように言う3人に若干押されながらケンゴは答える。
「え、えと、だ、大丈夫です、お、落ち着いてください、、、、」
「わうぅぅぅぅ????」
ハクだけはケンゴの姿と気配に疑いの目を向けていた。
☆登場した聖獣☆
水聖獣ティアマット(ナギ)
モンスター、ティアマットが己の魔力と完全に融合し、進化した姿。
元はテイムされたモンスターだったが主人の死と共に湖に移り住み、豊富な魔力で聖獣に至った。
魔力の枯渇により、絶命寸前だったがケンゴと融合したことにより復活した。
☆作者から☆
月曜日に有給休暇をとったため、日曜と月曜を勘違いしていました、すみませんでした。
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