1-26 コミュ障、調査開始









「というわけで、みんな、頼む。」


「「「「・・・・」」」」


 目の前には机におでこをつけるレベルで頭を下げるハウエル。


 少し前から起こっている南の森の奥、ティアマト湖の魔素の以上の調査をケンゴ達に依頼していたのだ。


「もう、厄介ごと押し付けないでくれる?」


「いいじゃないですか!みんなで冒険、楽しいです!」


「お嬢様、あまり安全ではないことをお忘れなく。」


 イリス以外はあまり乗り気ではなさそうだ。


「で、でも、怖いですね、次から次へとどうしてこんなに異常が。」


「ウォウン、、、、」


 ケンゴは一連の騒動に不安を感じていた。

 一体この街の周りで何が起きているのか。


「それを調べるためにも君たちにお願いしたい、報酬は弾むよ。」


「まあ、しょうがないわね、どうせ私たちしかいないだろうし。」


「楽しみましょう!」


「お嬢様、もう少し緊張感を持ってください。」


「あはは、、、、」


「ウォン!!!!」


 かくして、ティアマト湖の再調査が始まった。




 ーーーーーーーーーーーー





「エアリアルスラッシュ!!!!」


「シッ!!!!」


「ファイアブラスト!!!!」


「大砲!!!!」


「ガルゥアアアア!!!!」


 ティアマト湖に到着したケンゴ達は早速襲いかかってきた、マッドボアやワイルドベアの群れ相手に大立ち回りを演じていた。


「ふう、片付いたわね。」


「楽勝ですね!」


「お嬢様、油断しないでください。」


 リリィ、イリスは少しお気楽モードだ、レナは斥候であるためか、しっかりと警戒を怠っていない。


「うーん、やっぱり空気が悪いな。」


「スンスン、スンスン、」


 ケンゴは湖を見渡しながらその空気の悪さに疑問を抱いていた。


(前と同じくあの黒い石がどこかにあるんじゃなかろうか、、、、)


「ウォン!」


 原因を考えるケンゴにハクが吠えた。


「ハク、どうしたんだい?」


「ウォン!!!!」


 問いかけるケンゴにハクは前足で湖を指した。


「湖?」


「どうかしたんですか?」


 ケンゴとハクのやり取りに気づいたイリスが駆け寄ってくる。


「ハクが、この湖を前足で指しているんですよ、」


「ウォン!ウォン!」


 なおも湖を指すハク。


「まさか、」


 そう言ってケンゴは湖に鼻を近づける。


「ものすごく濃い魔素の匂いがする。」


「ウォン!!!!」


 そうだと言わんばかりに大きく吠えるハク。


 ハクとケンゴは獣害の件でも魔素の匂いを感じ取っていた。


「ケンゴ様もハクちゃんすごいです!魔素の匂いがわかるんですね!」


「あ、あはは、」


「ウォン」


 イリスに褒められて照れるケンゴと嬉しくなるハク。


「どうかしたの?」


 そこにリリィとレナも合流する。


「あ、ど、どうやらこの湖から濃い魔素の匂いがしまして。」


「なるほど、つまりこの湖の中に原因があるかもしれないということですね。」


 ケンゴのもたらした情報から冷静に分析するレナ。


「なるほどね、でも参ったわね。」


「確かに、、、、」


「本当ですね。」


 困った様子のリリィ、イリス、レナ。


「え、えと、みなさん、どうしたんですか?」


 ケンゴが3人に問いかける。


「いや、だって、水中なんて想定してないもの。」


「この湖、とっても深いんですよ。」


「もし1番深いところにあったら流石に対処できません。」


 3人の答えに対してケンゴは提案した。

  

「ぼ、僕が行きます。」


「「「え?」」」


 困惑する3人。


「いや、ちょっとケンゴ君、やめた方がいいわよ。」


「いえ、だ、大丈夫です。」


 心配するリリィにケンゴはさらりと返す。


「ケンゴ様!いくらケンゴ様でも水中は危ないですよ!」


「ほ、本当に大丈夫です、結構息止めてられますから。」


「ケンゴ様、一体どれくらい止めてられるのですか?」


 割と平気そうなケンゴに対して、レナが聞いた。


「えっと、まあ、11分くらいですかね。」


「「「は?」」」


 ケンゴの答えに3人はまたもや困惑した。


「い、いや、え?人間てそんなに息止められる?」


「ケ、ケンゴ様、すごいです。」


「信じられない、、、、」


 流石にこれに関しては3人は若干引いていた。


「え、えっとじゃあ、とりあえず行ってきま、、、、」


「ちょ、ちょっと、待ってください!」


 いきなり行こうとするケンゴをイリスが強く引き留めた。


「ど、どうしたんですか?」


「コネクティブ!!!!」


 イリスは魔法を唱える。


 するとケンゴに光る糸のようなものが繋がれた。


「これは魔力の糸です、糸を通してケンゴ様の状態を知ることができますので、危なくなったらみんなでひっぱりあげます!」


「イリスちゃん、すごいじゃない。」


「さすがですお嬢様。」


 イリスの見事な魔法を賞賛するリリィとレナ。


「イリスさん、ありがとうございます。」


 ケンゴはイリスに頭を下げる。


「気にしないでください!むしろいきなり行こうとしないでください!」


「す、すみません。」


 イリスはケンゴの行動を咎めた。


「では、改めて、行ってきます。」


「気をつけてください!」


「くれぐれも無理しないでね。」


「お気をつけください、ケンゴ様。」


 3人はそれぞれ無事を祈る。


 果たしてこの先に待ち受けているものとは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る