1-25 コミュ障、ざまぁをかます。












「ハク!数が多い!後を頼むよ!」


「ウォン!!!!」


 多数のワイルドベアに囲まれた状況でケンゴがハクに叫んだ。


 言われたハクはすぐさま体を元の大きさに戻した。


「な!?」


「で、でけぇ!!!!」


「なんだありゃあ!?」


 ハクの本来の大きさを見て驚くドルゥ達。



「「「「「ヴゥヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!」」」」


「ガルルルルルルル!!!!」


「・・・・」


 圧倒的な存在感を放つハクと先ほど仲間を一撃で倒したケンゴをワイルドベア達は警戒する。

 そんなワイルドベア達をハクは威嚇し、ケンゴは冷静に様子を見る。


 先に動いたのはワイルドベアの方だった。


「「「「ガァアアアアアアアア!!!!」」」」


 ケンゴとハクにそれぞれ2体ずつ。

 合計4体のワイルドベアが同時に動き出した。


 ケンゴに向かった2体のワイルドベアは右腕の叩きつけを2体同時に繰り出した。


「フン!!!!」


 ケンゴはそれを真正面から完璧に両腕でガードして見せた。


「「「ハァ!?」」」


 あまりにも出鱈目なケンゴの腕力に驚くおっさん3人。


「セェヤァア!!!!」


「「ガァアアアア!?」」


 ケンゴは叩きつけられた腕を振り払い2体のワイルドベアを大きくのけぞらせる。


「フッ!!!!」


 ケンゴは爆発音を伴った踏み込みで一気に跳躍し、2体の間に飛び込む。


「破ァアアアア!!!!」


「「ガァ!!!!」」


 そこで大きく開脚するような蹴りを2体の顎に叩き込む。


 顎をかちあげられた2体のワイルドベアはその勢いのまま仰向けに地面に倒れ、ぴくりとも動かなくなってしまった。



「フゥ、、、、」


「「「・・・・」」」


 あまりにも一方的な戦いに言葉を失うおっさん3人。


 その頃、ハクも自身に向かってきた2体のワイルドベアを圧倒していた。


「ガルゥアアアア!!!!」


「「グゥオオ!?」」


 巨大な風の障壁を発生させ2体を牽制する。


「ガァアアアアアアアア!!!!」


 そのまま動きの止まった2体に目掛けて一気に加速して飛び込むハク。


 強烈な突風と共に2体の間を通り過ぎたハク。


「「グ、グゥオオ、、、、」」


 一瞬の間隔の後、2体のワイルドベアは全身から血を吹き出し、倒れ伏した。


「やるな!ハク!」


「ウォン!!!!」


 ケンゴに褒められたハクは嬉しそうに元気よく吠えた。


「「「「グゥ、、、、」」」


 残るワイルドベアは3体。


 それぞれケンゴとハクの強さを目の当たりにし、たじろいでいる。


「ウォーーーーーーーーン!!!!」


「「「グゥオ!?」」」


 ハクが大きな遠吠えをすると強い旋風が3体のワイルドベアの周りに発生し、その場に縫い付けた。


「ハァアアアア、、、、」


 左構えをし気を練るケンゴ。


「フッ!!!!」


 そこから爆発音と共に踏み込み加速。


 跳躍したケンゴは腰を大きく捻り、手前の1体目に右足による跳び回し蹴りを決める。

 そこからさらに回転し2体目に左足による跳び回し蹴りを決める。

 最後の3体目には腰の捻りを効かせた右足による飛び蹴りを叩き込む。


 瞬きほどの間に繰り出された3連蹴り。


 その技の名は


「神室流奥義、三連加農砲」


 頭部を吹き飛ばされた3体のワイルドベアは音もなくその場に倒れ伏した。






 ーーーーーーーーーーーー






「「「てことがあったんだよ!!!!」


 3人のおっさん冒険者、ドルゥ、ビル、ショーンは興奮気味に受付係ミーゴに報告する。


「いやぁ、ありゃあ中々お目にかかれるもんじゃねえ!」


「惚れ惚れするような体捌きだったな。」


「疑って悪かったな、ケンゴ。」


 3人はそれぞれケンゴを褒め称える。


「フフン、まあ、当然よね。」

 リリィは嬉しそうにしながら自慢気に言う。


「私も見てみたかったです!」

 少し悔しそうにしているイリス。


「くぅ、想像しただけでもかっこいい、、、、」

 ポーカーフェイスながらも興奮を抑えきれないレナ。


「あ、あはは、、、、」


「ワッフン!」


 照れくさそうにするケンゴと胸を張るハク。


 しかし受付係ミーゴは納得できなかった。


「こ、これではまだ判断できません、無効です、、、、」


「「「あぁ?」」」


「「「は?」」」


 この期に及んでそんなことを言ったミーゴに不快そうに聞き返すドルゥ達とイリス達。


「ま、また、不正を働いた可能性がありますから、、、、」


 どこか怒りを滲ませながら言うミーゴにドルゥが詰める。


「おめぇ、何言ってやがんだ?不正がないか見るために俺らをつけたんだろうが?」


 それに対してミーゴは往生際悪く反論する。


「あ、あなた方がグルである可能性もあります!」


「な!」


「テメェ!!!!」


「このやろう!」


 あまりの言い分に怒りを露わにするドルゥ達。


「あんた本当に最悪ね、」


「ゴミのような受付係ですね!」


「と言うかゴミそのものです。」


 これにはリリィ、イリス、レナもどぎつい事を言う。


「う、うるさい!お前らは絶対不正してるんだ!冒険者の資格を剥奪してやる!それだけじゃない!憲兵に突き出してやるからな!!!!」


 冷静さを欠いてとんでもないことを口走るミーゴ。


 そんな殺伐とした現場にある人物が現れた。


「随分と騒がしいねぇ、どうかしたのかな?」


 金髪のオールバックにモノクルをつけた紳士。


「あ、父さん!」


 ギルドマスター、ハウエルである。


「ギ、ギルドマスター!そ、それに父さんって、ま、まさか、」


「ああ、そうだね、紹介するよミーゴくん娘のリリィだ。」


「えぇ!!!!」


「・・・・」


 今まで自分が強気に出ていた人がギルドマスターの娘だと知って驚きと共にしまったと言う顔をするミーゴ。


 そんなミーゴにリリィは勝ち誇ったような顔を向けた。




 そしてリリィ達やドルゥ達がギルドマスターに一連の出来事を説明する。


「なるほど、そういうことが、」


 そこにミーゴが強くギルドマスターに発言する。


「ギルドマスター!こいつらが言っていることは全部嘘です!不正をしているに決まってます。」


 その発言を聞いたハウエルは冷静に問いかける。


「なぜそう言い切れるんだい?」


「そ、それは、、、、」


 冷静ながらも突き刺すような視線を向けられたミーゴは言葉を出せなくなる。


「強い新人というのはそこまで珍しい話ではないよ、それにケンゴくんは私が直々にテストした新人冒険者だ。」


「な!?」


 再び驚きの事実を突きつけられるミーゴ。


「本来なら私のところに確認に来るのが筋じゃないかな?何故自己判断で行動したんだい?君にそんな権限はないはずだが?」


「うぅ、、、、」


 コンコンと詰められ、たじろぐミーゴ。


「まあいい、詳しいことは後で私の事務所で話そうじゃないか、少し休憩していたまえ。」


「は、はい、、、、」


 トドメの言葉を投げられミーゴは小さくなりながら奥に消えていった。


「「「プハハ!!!!」」」


 あまりにも爽快な出来事にドルゥ達は笑いを堪えきれなくなる。


「いい気味。」


「本当ですね!」


「同感です。」


 リリィ、イリス、レナはスッキリした様子だ。


「ハ、ハウエルさん、ありがとうございます。」


「ウォン!」


 ケンゴはハウエルに深く頭を下げる。


「気にしないでくれたまえ!では私はこれで。」


『お疲れ様です!!!!』


 その場を後にするハウエルに全員で挨拶をする。


「じゃあ、俺たちも行くよ!」


「頑張れよ!」


「今度俺たちと一緒に依頼うけようや!」


 ドルゥ、ビル、ショーンも一言掛けた後その場を後にした。


「おかえり、ケンゴくん、ハクくん。」


「おかえりなさい、ケンゴ様!ハク様!」


「おかえりなさいませ。」


 リリィ、イリス、レナは改めてケンゴに労いの言葉をかける。


「た、ただいま戻りました。」


「ウォン!」


 相変わらず伏目がちにいうケンゴと元気よく返事をするハク。


「さあ、ご飯に行きましょう!今日の話、詳しく聞かせてちょうだい!」


「いいですねぇ!」


「賛成です。」


「あ、あはは、」


「ウォン!」


 4人と1匹は食事処を探しにギルドを出る。


 今日も無事に終わるのであった。










 ☆登場モンスター☆


 マッドボア

 ランク:C+

 巨大な猪型のモンスター、痛覚がなく、強力な突進を放ってくる。

 同じC+のホブゴブリンやコボルトよりも強い。


 ワイルドベア

 ランク:B

 長い爪を持った筋肉質かつ巨大なクマ型のモンスター。

 硬い筋肉の鎧は斬撃を無力化し、その腕や爪の一撃はベテランのCランク冒険者でも防ぐことはできない。


 ☆登場した神室流奥義☆


 三連加農砲

 神室の操気術を合わせた3連続の飛び蹴り。

 複数の敵に対して繰り出す。

























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