1-23 コミュ障、難癖をつけられる。









 お喋りを楽しみながらのんびりと街へと戻ってきたケンゴ達は早速ギルドで依頼達成の報告を済ませようとした。


「これお願い。」


「かしこまりました。」


 受付係は差し出された依頼書に目を通す。

 メガネをかけたどことなく陰険そうな雰囲気を纏った男の受付係だ。


「ものすごい早く終わったし、この後ご飯でもどう?」


 リリィが3人と1匹に提案する。


「いいですね!行きたいです!」


「私も賛成です。」


「え、えっと、ぼ、僕もよければ、、、、」


「ウォン!!!!」


 3人と1匹はそれぞれ賛成する。


「内容を把握しました、それでは魔石の提出をお願いします。」


「わ、わかりました。」


 そう言ってケンゴはカウンターに魔石の入った袋を置く。

 かなり重いためケンゴが持っていたのだ。約50体分の魔石の半分近くはケンゴの手柄だ。


「こ、こんなに、、、、」


 そのあまりの量に驚く受付係。


「査定に時間がかかるようなら、完了証明だけつけてちょうだい、明日受け取るから。」


 この後のご飯のことを考えてそう言ったリリィ。

 しかし受付係はとんでもないことを口にした。


「いいえ、申し訳ありませんが完了証明はできません。」


 メガネの位置を直しながら鋭い目でそう言う受付係。


「は?ちょっとどう言うこと?」


 リリィが露骨にイラッとした表情で受付係に聞く。


「これだけの量をたったの30分で集めるのは不可能です、どこかから安く買い叩いて持ってきたのではありませんか?」


 受付係は鬼の首を取ったかのようにそう言う。


「そんなわけありません!」


 イリスが叫ぶように言う。


「どこにそんな安く買えるようなところがあると言うのですか?」


 それに続きレナも受付係に反論する。


「それはこれから調べますので。」


 なおも自分の意見を曲げない受付係。


「それに何より、、、、」


 そう言って受付係はケンゴの方を見る。


「ケンゴさんでしたっけ?あなたまだ登録してから2週間ぐらいしかたってませんよね?」


 受付係に問われたケンゴはビクッとしながら答える。


「え、あ、あの、はい、、、、」


「それなのに周りの方々はAランクやBランク、釣り合っていません、あなたのようなEランクのお荷物を抱えてこれほどの成果を出せるとは思えないんですよ。」


「な!?」


「!!」


 あまりの受付係の物言いに絶句するイリスとレナ。


「あんたねぇ、、、、」


「ガルルルルルル!!!!」


 リリィとハクに至っては怒りを抑えきれていない。


「み、みなさん、だ、ぼ、僕は大丈夫です。」


 そんな3人と1匹をケンゴが宥める。


「え、えっと、どうしたらいいでしょうか?」


「どうすることもできません、依頼達成はしませんし、このことは上に報告させていただきます。」


「そ、そんな、、、、」


 心なしか笑みを浮かべながらそう言う受付係に対し、ケンゴは言葉を失う。


「じゃあ同じの受けるからあんたついてきなさいよ、目の前で倒すところ見せてやるわ。」


 リリィが受付係に提案する。


「私は受付係ですので、」


「何よ、散々指摘しておいてビビってんの?ダッサ、、、、」


「ぐ、、、、」


 リリィがここぞとばかりに煽り、受付係は言葉に詰まる。


「リ、リリィさん、やめてください。」


 そんなリリィをケンゴが宥める。


「う、受付係さん、僕たちは、け、決して、不正なんて、してないんです、どうか、それを証明させてください。」


 ケンゴは懇願するように受付係に言う。


「ではこちらが指定したクエストをこちらがつけた監視の冒険者をつれて達成してください。」


 受付係はそうケンゴ達に宣言する。


「皆さん、大丈夫ですか?」


 ケンゴは不安そうに3人に尋ねる。


「私は全然問題ないわ。」


「やりましょう!ケンゴ様!」


「私達ならどんなクエストでも問題はないかと。」


 3人はそれぞれ自信たっぷりにそう言う。


「受付係さん、僕たちは決して不正をしていません、それを証明するためにあなたの出した条件の元、クエストを受けます。」


 ケンゴは受付係に力強くそう言う。


「では、こちらで監視の冒険者とクエストを用意しておきますので、明日の朝の鐘が鳴る頃にこちらにいらしてください、ああ、こちらの魔石は不正の証拠になるかもしれませんので預かっておきます、ではお疲れ様でした。」


 受付係は露骨にニヤリとしながらそう言った。


「ええ、全然大丈夫だから、よろしく。」


「問題ありません!」


「なるほど貸金庫みたいなものですね、ありがとうございます。」


 リリィ、イリス、レナはそれぞれ自信満々に返す。


「明日の朝の鐘が鳴る頃に来ますので、必ず達成して見せます。」


「ウォン!!!!」


 ケンゴは力強く受付係に宣言し、ハクはそれに続いて吠えた。


 それからギルドを後にし、食事処を探している時、ケンゴは3人に向かって謝罪した。


「みなさん、本当にすみませんでした。」


 深く頭を下げるケンゴ。


「どうして謝るのよ!ケンゴくん何も悪くないでしょ!」


 リリィは叱るようにケンゴに言う。


「あんなの気にしちゃダメです!」


「強く生きましょう、ケンゴ様。」


 イリスとレナもケンゴを励ます。


「それでも、、、、」


「それでもじゃないのよ、大方自分のランクが低いからこうなったとか思ってるんでしょ。」


 リリィがケンゴに指摘する。


「いや、まぁ、」


「しょうがないでしょ、初めて2週間くらいなんだから、大体ものすごい強い新人なんてそこまで珍しい話じゃないし、受付係ならそんな人いっぱい見てるはずなのよ、大方あたし達のこと妬んだんだわ、あいつめちゃくちゃ性格悪そうだし。」


「い、いや、やめましょうよ」


 はっきりと言うリリィを宥めるケンゴ。


「大丈夫ですよ!明日、どんなクエストをふっかけられても、私たちなら達成できます!」


 イリスが宣言する。


「このパーティならどんなクエストも怖くはありません、やりましょう。」


 レナも宣言する。


「皆さん、、、、」


 ケンゴは3人の励ましに嬉しくなる。


「すみませんでした、明日のクエストは絶対達成します、よろしくお願いします!」


「はい!」

「はい」

「ええ!」

「ウォン!」


 3人と1匹は力強く返事をする。

 果たして明日のケンゴ達はどうなるのか。




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