1-22 コミュ障、親睦会クエスト






「ファイアーウォール!」


「3時の方向に弓持ち2体!」


「任せて!エアリアルブレード!」


 中央の門を出て南に進んだ先にある森にて、ケンゴ、ハク、イリス、レナ、リリィのパーティはコボルトやゴブリンの間引きの依頼を進めていた。


「風神爪葬!!!!」


 白狼モードのケンゴが繰り出す風の斬撃で数十対のコボルトが切り裂かれる。


「風神迫撃砲!!!!」


 白狼モードのケンゴの風を纏った拳の叩きつけにより数十体のゴブリンが吹き飛ばされる。


 通常、南の森はゴブリンやコボルトの数が中央門前、東の森よりも多く、オーガやワーウルフなどの高ランクのモンスターないしは魔獣が出現するため非常に危険なのだが、ケンゴ達には問題なかった。


 何よりケンゴは100人切りでも達成しようかと言うほどの勢いである。


「何度見ても信じらんない。」


「はわぁ、ケンゴ様、カッコいい、、、、」


「・・・・」


 リリィは改めてケンゴの強さを目の当たりにし、息を呑む。

 イリスはケンゴの無双する姿に見惚れ、レナは食い入るように見つめていた。


「ふぅ、え、えっと、ど、どうしたんですか皆さん?」


 周りの敵を一掃し、一息ついたケンゴは全員の様子を見て首を傾げる。


「いや、強すぎと思ったのよ。」


「ケンゴ様!カッコいいです!最強です!」


「ケンゴ様、さすがですね、お疲れ様でございます。」


 3人はそれぞれの言葉でケンゴを褒め称える。


「い、いや、あの、恐縮です、、、、」


 頬をかきながら目線を下げて言うケンゴ。


「依頼の達成条件は満たしましたね。」


「まだ15分くらいしか経ってないけどね、早すぎるわよ。」


 あまりの依頼達成の早さにレナは嘆息した。


「まだ前の獣害の件もあります。あまり欲をかくと足元を掬われる可能性もありますので、本日はこれで終了にしようと思いますが皆さんはどうでしょうか?」


 レナが全員に問う。


「そうね、そうしましょうか。」


「賛成です、冒険者業は慎重に行きましょう。」


「大丈夫ですよ、後悔してからでは遅いですからね。」


 全員がレナの意見に賛成したため、一向は帰還するために歩きはじめた。


「せっかくなんで皆さんでお話ししませんか!私リリィさんやケンゴさんの話が聞きたいです!」


 今度はイリスが提案する。


「いいわよ、あたしもイリスやレナやケンゴの話が聞きたいわね。」


「あ、あんまり面白い話はないですよ、、、、」


 リリィは快く賛成し、ケンゴはおどおどしながら賛成した。


「じゃあそうですね、リリィさんはどうして冒険者になろうと思ったんですか?」


 まずはイリスがリリィに質問した。


「そうね、お父様に少しでも近づきたかったからかしら、娘だから色々ダメなところも知ってるんだけど、いいお父様なのよ。」


 暖かさを感じる目でそう語るリリィ。


「それに、貴族の暮らしって結構めんどくさいのよね、だから冒険者の仕事に逃げたかったのよ、お父様もほとんどギルドマスターとしての仕事しかしてないしね。」


「なるほど、貴族の暮らしが面倒なのは私もわかりますね。」


 リリィの話に対してイリスが反応した。


「あら、やっぱりイリスも貴族だったのね。」


 リリィは予想通りというふうに答えた。


「はい、私はしがない貴族の娘ですが、それでも結構面倒な話が多くって、それが嫌で学園に通うついでにレナと一緒に2人暮らしを始めたんですよ。」


「なるほどね、私とほとんど同じね。」


「ふふ、そうですね。」


 にこりと笑い合うイリスとリリィ。


「次はケンゴに聞きたいわね、前も少し話してくれたけど、ケンゴの身の上をもう少し詳しく聞きたいわね、もちろん話せる範囲で構わないわ。」


 問いかけられたケンゴは答える。


「あ、あまり面白い話ではないと思うんですが、話しますね。」


 一呼吸置いたのちケンゴは話し始める。


「僕が元々住んでいたのは東のとあるところにある山です、両親が不慮の事故で死んでしまい、母方の祖父に引き取られました。」


「ケンゴ様、、、、」


「ケンゴくん、、、、」


「・・・・」


 いきなりの辛い経験談に悲しい雰囲気になる3人。


「あ、だ、大丈夫ですよ!もう気にしてませんから。」


 慌てて場を和やかにしようとするケンゴ。


「続けますね、祖父はそれなりのお金を持っていたので何不自由ない生活をさせてくれました、頭を鍛えることも体を鍛えることも、もちろん娯楽も不自由しませんでした、そこで僕は祖父に武術を老後の暇潰しに叩き込まれたんです。」


 ケンゴの話にリリィが質問する。


「お爺さんがケンゴにその武術を教えてくれたの?」


「はい、神室流古式格闘術、古くから神室家に伝わる己の身体を武器にする武術です。」


「なるほどね、かなり強かったの?」


「何度も打ち負かされましたね、最後の最後に一回勝てたくらいです。」


「そりゃあ強いわね。」


 ケンゴの答えに納得するリリィ。


「もう3年くらい前に祖父は亡くなったので、これを機に世界を見てみようと思い旅に出ました。」


 自分が異世界人だということがバレないよう適当な嘘をつくケンゴ。


「ケンゴくん、頑張ってるのね。」


「ケンゴ様、甘えたくなったらいつでも来てくださいね。」


「この胸、いつでもお貸しします。」


 3人はケンゴに暖かい表情を見せる。


「あ、あはは、ありがとうございます。」


 おどおどしながらお礼をするケンゴ。


「ところでケンゴくん、今どこに住んでるの?」


「え?」


 リリィの急な質問に疑問を浮かべるケンゴ。


「どこかの宿とかなら私の家に、」


「ケンゴ様は今私たちの家に護衛として暮らしていますので!」


 リリィを遮るように言うイリス。


「間に合っておりますので、心配しないでください。」


 ケンゴの代わりに言うレナ。


(チッ、、、、)


 内心舌打ちをするリリィ。  


「ケンゴくん、来たくなったらいつでも来なさい。」


「え、あ、あの、」


「いつまでもうちにいていいですよ!ケンゴ様!ね、レナ!」


「もちろんでございます。」


「は、はぁ、」


 イリスとレナがリリィに対抗する理由が分からず困惑するケンゴ。


 こうして一向は街へ帰還するまでの道のりを楽しく過ごしたのであった。








 

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