1-21 コミュ障、女性の圧にたじろぐ。










「改めて、リリィよ、よろしくね。」


「イリスと申します。」


「レナと申します。」


「「・・・・」」


非常に簡素な、それでいて冷たい自己紹介を済ませるリリィ、イリス、レナ。

なぜこんなにも仲が悪いのだろうかとケンゴとハクは内心首を傾げていた。


「リリィさんはどこでケンゴ様と出会ったのですか?」


イリスはリリィにケンゴとの出会いを聞く。


「この前の獣害を鎮めに行ったときよ。」


「獣害ですか?」


それに対しレナが疑問を浮かべる。


「ああ、あんまり話が広がってなかったっけ、被害が出る前にほとんどケンゴくんが殲滅しちゃったのよ。」


それを聞いたイリスとレナは驚愕しケンゴを絶賛した。


「す、凄すぎます!やっぱりケンゴ様は最強です!!!!」


「お見事ですケンゴ様。」


ケンゴはかなり恥ずかしそうにする。


「い、いや、全然大したことないは、な、ないですよ、あれくらいなら、」


「誰でもできるとでも言いたいのかしら?少なくとものAランクの今のわたしでは絶対に無理。」


「え?そうなんですか?」


「煽ってる?」


「いやいや!そんなことはないです!すみません!」


リリィの反感を買い、すぐに謝るケンゴ。


「んでもって、ケンゴくんの力量を知りたいから手合わせを申し込んだんだけどね、叩きのめされちゃったわ。」


あっけらかんと自分が負けたことを言い放つリリィ。


「ケンゴ様は強かったですか?」


レナがリリィに問いかける。


「とんでもなく強かったわ、あまりの恐怖に、正気を失っちゃったもの。」


「そ、そこまで」


「凄まじいですね。」


ケンゴの強さを想像して驚愕するイリスとレナ。


「ケンゴくん、あの時はありがとう。」


「え?なんのことですか?」


突然のお礼に困惑するケンゴ。


「私を介抱してくれたことよ、力強く抱きしめてくれたわね、とっても安心したわ。」


「あ、ああ、全然大丈夫ですよ。きにしないでくだ、、、、」


言いかけたところで強烈な殺気を感じるケンゴ。


「抱きしめたのですか?」


「リリィさんを?」


ケンゴを強く睨みながらそう言うイリスとレナ。


「は、はい、その、苦しそうだったので、、、、」


殺気に押されながら答えるケンゴ。


「「私もされたい」」


「え?」


小声を聞き取れず困惑するケンゴ。


「そんなことより、ちょっといい?」


そんな3人に向かってリリィは声をかける。


「あなた達ってパーティ組んでる?」


それに対してイリスが答える。


「はい、組んでますよ、私は魔法使いで、レナは盗賊、ケンゴさんがタンク兼アタッカーです。」


「非常にバランスがいいと思います。」


心なしかレナは上から目線だ。


「なるほどね、でももう1人くらいいた方がいいんじゃない?私なんてどう?」


リリィは2人にそう提案した。


「いえ、ですから、これで、」


「私は魔法剣士よ、前衛でも後衛でもどっちもいけるわよ。」


イリスが何かを言う前に話を始めるリリィ。


「それになにより、私はケンゴくんにお礼をしたいの、私が出来ることはケンゴくんの冒険者活動の手伝いをすること、お願いケンゴくん、お願い2人とも!」


そう言って3人に頭を下げるリリィ。


「「・・・・」」


「え、えっとぉ、そのぉ、、、、」


一言も発さないイリスとレナ。

ケンゴはそんな雰囲気に押されてまともに話すことができない。


「スピー、、スピー、、」


ハクは呑気に居眠りをしていた。


「その僕はいいと思います。」


「!?」


「・・・・」


ケンゴの答えに驚くイリス。

レナはポーカーフェイスのままだ。


「その、冒険者活動の中でとても危ない状況に出くわしたりすることは必ずあると思います、そんな時にリリィさんがいてくれると心強いです。」


「ケンゴくん、、、、」


ケンゴの褒め言葉に感激するリリィ。


「で、でも、ケンゴ様がいれば!」


「私も賛成です。」


否定しようとするイリスよりも先にレナが賛成する。


「お嬢様、いくらケンゴ様といえどピンチにならないとは限りません、信頼できる前衛はもう1人くらい必要です。」


「レナ、、、、」


レナの言い分も一理あるため、イリスは何も言えなくなってしまう。


「それに闘うなら同じ条件で戦いたいですからね。」


「レナ、、、、そ、そうね。」


そう小声で話す2人。


ケンゴはそんな2人を不思議そうに見つめ、リリィは少し笑みを浮かべる。


「リリィさん、わかりました、Aランクの魔法剣士というのはとても心強いので、我々のパーティに参加してください。」


そう言って手を差し出すイリス。


「ありがとう、よろしくね。」


リリィはその手を握る。


((負けないから))


お互い声には出さないが目でそう言っていた。


「じゃあ、早速クエストに行きましょう、何か取ってくるわね。」


「大丈夫です、既に受注しています。」


そう言ってレナはクエストの詳細用紙を見せる。


リリィはそのクエストの詳細を読む。


「ありがとう、なるほど、南の森のゴブリンやコボルトの間引きね。」


「ウォン!」


話がまとまった頃合いで起きるハク。


「あら、起きたのねハクちゃん、リリィよ、これからよろしくね。」


「ウォン!」


 リリィはハクの頭を撫でながら自己紹介をする。


「それじゃあ、リリィさんの親睦会も兼ねていきましょうか、頑張りますよ皆さん!」


「「「はい(ええ)!!!!」」」

「ウォン!!!!」


これよりケンゴのはじめての正式なパーティによる冒険者活動が始まったのだ。










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