1-20 コミュ障、パーティを組む
「あの、ケンゴ様、」
「ケンゴ様、これは一体何ですか?」
イリスとレナの前には、大量の金貨が入った小袋が置かれていた。
「その、い、今まで、ご迷惑を、おかけ、し、しました。こ、こちらは、その、迷惑料と、いい、ますか、」
イリスは大きく手を振りながらケンゴに捲し立てた。
「け、ケンゴ様!気にしなくて大丈夫って言ったじゃないですか!」
レナもポーカーフェイスを崩さずにケンゴに言う。
「ケンゴ様、我々はケンゴ様に救われた身です。そんなことを気にする必要はありません。」
「いやぁ、でもぉ、」
ケンゴは2人の意見を聞くも迷いを見せる。
そんなケンゴの様子を見て、2人はある最悪のパターンを考えていた。
(もしもケンゴ様がこのお金を渡したことで恩を返したと思われたら。)イリス。
(ケンゴ様はここを出て行ってしまうかもしれない。)レナ。
((それだけは何としても阻止しなくては!))
「あの、お二人とも、ど、どうされたんですか?」
2人して頷いたり、首を振ったりしている様子を見て戸惑うケンゴ。
「ケンゴ様!!!!」
「は、はい!」
突然大きな声を出したイリスに驚くケンゴ。
「そんなことは気にしないでください!私たちはあなたに命を救われたんですから!そ、それに、、、、」
「それに?」
一旦言葉を切り、考えるイリス。
「け、ケンゴ様は私達の護衛です!!!!」
「は、はい?」
突然の宣言に困惑するケンゴ。
「そ、その、正式には決めてませんでしたが、ケンゴ様の強さは護衛に適任です。そのかわり私達はケンゴ様に衣食住を提供すると言う形で、か、勝手に考えてました!」
「は、はぁ。」
力強く宣言するイリスにケンゴは呆けてしまう。
一方レナは心の中でグッドサインをしていた。
「そして、ケンゴ様、これは提案なのですが。」
「はい」
今度はレナがケンゴに話を始める。
「先日の夕食の折、ケンゴ様はキース様達のパーティから抜ける代わりにお師匠様になられたとか。」
「ま、まあ、そんな感じ、ですかね?」
「つまり、今はパーティを組んでいないと?」
「あ、まあ、はい、、、、」
「それでしたら、、、、」
ーーーーーーーー
「あ、あの〜、お二人とも、大丈夫なんですかね?」
「大丈夫です!」
「問題ありません。」
ケンゴ、イリス、レナは冒険者ギルドを目指して街を歩いていた。
「お二人も一応、冒険者だったんですねぇ。」
「はい!私は魔法使いです!」
「私は盗賊です。」
ここにきて2人の意外な一面を知るケンゴ。
「どうして冒険者をやっていらっしゃるんですか?お金には困ってないように見えますけど。」
ケンゴの疑問に2人は答える。
「私達は一応学園に通っているんです。」
「学園ですか?」
「はい、今は長いお休みですけど、その間に宿題をしなきゃいけなくて、私たちは冒険者として活動するという宿題を選んだんです!」
「なるほど。」
納得するケンゴに今度はレナが話す。
「それに、私たちもいつ路頭に迷うかわかりません、しっかりと備えておかなければ。」
「ま、まあ、理由はわかりました、でも、何で僕と?」
そんなことを言うケンゴにイリスとレナは少し呆れながら答える。
「そんなもの、ケンゴ様がお強いからに決まってるじゃないですかぁ!!!!」
「ケンゴ様ほど優秀な前衛はいません。」
2人の力説に戸惑うケンゴ。
「い、いや僕なんてまだ新米ですし、絶対やめた方が、」
「その強さで何を言ってるんですか!!!!」
「新米は100枚の金貨をもらったりなんかしません。」
そんなケンゴに対してイリスとレナはさらに強くケンゴを励ます。
「ここ最近はライノスの襲撃もありましたので、信頼できる前衛を入れてからクエストを受けようと思っていましたが、ケンゴ様がいれば安心です。」
「ありがとうごさいます。よろしくお願いしますね!」
「・・・・」
2人の勢いに押されてしまうケンゴであった。
そうこうしている内に一向は冒険者ギルドに到着した。
時間帯的には既にクエスト受注ラッシュを過ぎていたため、中にはあまり冒険者はいなかった。
「比較的簡単な常時クエストでもいいでしょう。」
「私達がとってきますので、ケンゴ様は待っててください!」
そう言うとイリスとレナは返事を待たずにクエストボードに向かった。
「行っちゃった。」
「ウォウゥン、」
ギルドの端に1人佇むケンゴとハク。
「どうしよう、迷惑をかけないだろうか、というか女の子しかいないや、うぅ気まずい。」
などとひそひそと独り言を呟くケンゴの元にある人物が現れる。
「ケンゴくんよね?」
自分の名前を呼んだ人物の方に目を向けるケンゴ。
そこにいたのは金髪碧眼のロングヘアーに細身の剣を腰に携えた美少女冒険者。
「あ、リリィさん、お、お疲れ様です。」
「リリィでいいわよ、おつかれ。」
ギルドマスター、ハウエルの娘。
Aランク冒険者、リリィである。
「クエスト受けるの?」
「あ、まあ、はい、そんなところです。」
「そう、、、、」
そんなケンゴの話を聞いたリリィは何かを考えてからこう言った。
「ケンゴくん、あなた今パーティ組んでないわよね?」
リリィの質問にケンゴは言い淀む。
「い、いや、その、」
「よかったら、あたしと、」
そんなケンゴにリリィが何かを言おうとした時だった。
「ケンゴ様、、、、」
その一言でその場の温度が下がった。
2人は声の聞こえた方向に目を向ける。
そこには目からハイライトが消えたイリスとレナが佇んでいた。
「そちらの女性は誰ですか?」
冷たいイリスの声に謎の悪寒を感じるケンゴであった。
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お知らせ。
この度Twitterを作りました!
色々なことを発信していきたいと思います。
@chuunifighter
よろしくお願いします!
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