1-17 ハウエルのテスト







「ふぅ、、、、」


 ノルンの街、中央門前の森の異変を解決したケンゴは次の日の朝、いつも通りの準備運動をすませる。



「ハッハッハッハッ、、、、」


 そこにハクがボールを持ってきてお座りをする。


「遊びたいのか?よし、取ってこい!」


「ウォン!!!!」


 そこからハクとケンゴのほのぼのとしたボール遊びが始まる。


「ケンゴ様、ハク様、朝食のご用意ができました。」


 それからしばらくしたのち、レナがケンゴとハクに朝食ができたことを知らせてきた。











「ケンゴ様!お手柄でしたね!」


「お疲れ様でした、朝食をどうぞ」


 朝食の時間、リビングに集まったケンゴ、イリス、レナ、ハク。


 イリスとレナは昨日までの出来事におけるケンゴの活躍を讃える。


「いや、僕の力じゃないですよ、ウィルさんや、ハウエルさん、リリィさん達のおかげですよ。」


「そんなことありません!絶対にケンゴ様が大量のモンスターを屠ったに決まってます!」


「私もそう思っております。」


「いやいや、そんなことはしてませんって。」


 実際に獣害を殲滅していながらも謙遜するケンゴ。


 そんな時にこの屋敷のチャイムが鳴った。


「誰でしょうか?」


「対応しますので少々席を外します。失礼します。」


 対応するためレナが席を立った。


 しばらくした後、戻ってきたレナは封筒を持っていた。


「ノルンの冒険者ギルドからケンゴ様へのお手紙だそうです。」


 そう言ってレナはケンゴに封筒を渡す。


「封蝋がしてあるところを見るに中々重要なものらしいですねぇ。」


 封蝋を見たイリスがそう呟く。


 ケンゴは皆がいる前で封筒を開け、手紙の内容を確認する。


「えっと、ハウエルさんから見たいです。」


「え!?」


「ハウエル様!?」


 ハウエルという名前を聞いたイリスとレナはとても驚いた。


「えっと、2人とも、ハウエルさんのことを知ってるんですか?」


「知ってるも何も、ハウエル様はこの街の領主様ですよ!」


「え!?」


 イリスの口から出た情報に今度はケンゴがとても驚く。


「ハ、ハウエルさんってギルドマスターだと思うんですけど。」


「ハウエル様はギルドマスターと領主を兼任していらっしゃるのです。冒険者としての実力もさることながら貴族としての実力も超一流、貴族界隈でもかなりの権力者なのですよ。」


「え、そ、そうなんですか、、、、」


(僕、相当良くしてもらっちゃってる。どうしよう、何も返せるものがないなぁ。)


 ハウエルの正体に焦るケンゴ。


「それよりもケンゴ様、手紙には一体何が書いてあるんですか?」


「あ、えっとそうですね。」


 イリスに言われて、改めて手紙に目を通すケンゴ。


「えー、先の獣害を鎮め、解決した件について、報酬などその他諸々のことについて話し合いたい。時間がある時で構わないのでギルドの私のところまで来ていただきたい。だそうです。」


「す、すごいですケンゴ様!」


「ハウエル様からの直々の招待など、滅多にありませぬ。」


 ケンゴが伝えた手紙の内容に興奮する2人。


「これ、時間はいつでもいいんですかね?今日は特に何も予定を入れてないので行ってこようと思うんですけど。」


 ハウエルの身分を知ったケンゴはアポ無しで行ってもいいのかどうか不安になっていた。


「時間がある時で構わないとおっしゃっているので大丈夫かと。」


「そうですよね、早速行ってきます。」


「帰ってきたら、お話を聞かせてくださいね!ケンゴ様!」


「いってらっしゃいませ。ケンゴ様。」


 2人に励まされながらケンゴはギルドへ行く準備を進めた。





 ーーーーーーーー






 時間は日本で言うところの八時半ごろ。


 まだ人がまばらなギルドの受付にケンゴはいた。


「ケンゴ様、おはようございます。」


「あ。セレスさん、お、おはようございます。」


 受付にいたのはセレスだった。


「えっと、あの、ハウエルさんに呼び出されまして、、、、」


「ああ、あの件ですね。こちらへどうぞ。」


 既に話は通っていたらしく。セレスはケンゴをギルドの奥に案内した。


 ギルドの廊下を進み、ある頑丈な扉を開いた先、そこはまるで闘技場のようになっていた。


「ケンゴじゃねえか!」


「ケンゴ君!おはよう!」


「おはようございます。ケンゴさん。」


 その中心にはなぜかキース、リサ、ウィルのパーティと。


「やあ、ケンゴ君、昨日ぶりだね。」


「おはよう。」


 杖を持ったハウエルと剣を携えたリリィがいた。

 まるでケンゴがこの時間に来ることをわかっていたかのように。


「皆さん、お、おはようございます。えっと、なんでこんなところに?まるで僕が来るとわかっているみたいに、、、、」


 「ははは、なぁに、君のことだからすぐ来ると思ってね。」


 カラカラと笑いながらハウエルが答える。


 「それでなぜこんなところにいるかについて。」


 一呼吸置いた後ハウエルが話し始める。



「まずは、昨日の獣害を鎮める手伝いをしてくれたケンゴくんとハク君、並びに情報を私たちに伝えてくれたキース君たちへのお礼をしたいと思ってね、君たちにはかなりの報酬を出しておいたよ。それからキース君達にはBランク昇格試験への挑戦権もね。」


「!?」


「マジかよ!」


「嘘!!!!」


 ハウエルの言葉に驚くキース達。


「はぁ、あ、ありがとうございます。」


 お礼を伝えるものの、なぜこのような場所なのかまだわからないケンゴ。


「なぜこんな場所を選んだか、それはね、ケンゴくん、私達は君と手合わせをしたいんだ。」


「・・・・」


「え????」


 唐突なハウエルの発言に動揺するケンゴ。


「ど、どうして僕なんかと、、、、」


「なぁに、私の興味というやつだね。君のような力を使う冒険者は一度も見たことがないからね。」


 飄々とした態度で答えるハウエル。


「どうだい?受けてくれるかい?ちなみにこれは依頼として出すからしっかりと報酬も出るよ。」


「そ、そうですねぇ、、、、」


 なぜこんなことになったのか全く理解できないながらも悩むケンゴ。


「いいんじゃねえかケンゴ?」


「なんか面白そう!私見てみたい!」


「僕もです。」


 キースたちはなんだか楽しそうだ。


「ハク、どう思う?」


 ケンゴはハクに問いかける。


「ウォン!!!!」


 ハクは元気いっぱいに吠えた。


「ハウエルさん。その依頼を受けます。」


 ケンゴは覚悟を決めた顔で答える。


「ありがとう、ケンゴくん、さあ!キース君達は観覧席へ移動してくれ!リリィ!準備して!」


「もうできてるわ。」


 キースたちを観覧席へ移動させて、手合わせの準備を始めるハウエル。


 リリィは既にできているみたいだ。


「2、2対1ですか?」


「まあ、前衛と後衛にどうやって対処するかがみたくてね。心配しなくても私たちは本気ではいかないよ。」


「わ、わかりました。」


 まさか2対1だとは思わず焦るケンゴ。


 しかし、依頼を受けた以上、できないとは言えない。


「しょうがないか、ハク!おいで!」


「ウォーーーーーーーーーーン!!!!」


 吠えながらハクはケンゴに飛び込む。


 するとケンゴとハクを竜巻が包み、止まった頃には白狼モードのケンゴがいた。


「準備ができたみたいだね、セレス君、審判は頼んだよ。」


 ケンゴの様子を見たハウエルはセレスに声をかけた。


「それでは只今よりギルドマスター、ハウエルサマとAランク冒険者リリィ様対ケンゴ様の練習試合を行います。双方構えて。」


 ハウエルは杖を構えリリィは剣を抜く。


 ケンゴは左構えをとる。


「初め!!!!」


 ケンゴとリリィは同時に動き出した。



















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