1-16 元凶




「ケ、ケンゴ、その耳、、、、」


「しっぽかわいいーーーー!」


「ちょ、ちょっと、や、やめてください、、、、」


 現在のケンゴの姿を見て驚くキースと、しっぽをふさふさするリサ。


「こらこら、その辺にしておきたまえよ」


 そんなケンゴ達に"ギルドマスター"ハウエルはにこやかに声をかける。


「あれ、えっと、ハウエルさんですよね?どうしてここに?」


「その通りだよ、久しぶりだねケンゴくん。」


「お久しぶりです。あの時は、本当にありがとうございました。」


「いやいや、気にしないでくれ、そんなことよりも、、、、」


 ハウエルは今のケンゴの姿をまじまじと見つめる。


「君は、獣人だったのかな?」


「あ、いや、違うんです、この姿は、その、」


 言おうとする前に、ケンゴの体に周りに影響を及ぼさない程度の竜巻が発生し、竜巻が止むとケンゴとハクがいた。


「ウォン!」


「すげえ!」


「ハクちゃん!」


「!?」


「これは、驚いた、君は聖獣と融合できるのか。そんな人には会ったことがない。」


 ケンゴが新しく覚えた技に4人は驚く。


「あ、そんなことより、ウィルさんが大変なんです!」


 ケンゴはウィルの状態をみんなに見せる。


「うぅぅ、、、、」


 苦しそうに呼吸するウィル。


「なるほど魔力切れだね、リリィ、頼むよ!」


 ハウエルは一緒に連れてきた金髪碧眼のロングヘアーの腰に剣を携えた少女に声をかける。


「任せて、マナ・ヒール。」


 そう唱えた彼女はウィルに手をかざす。


 すると、ウィルの体を青い光が包み、具合がよくなったのか、体を起こした。


「ケンゴさん!大丈夫だったんですか!?」


「いや、それはこっちのセリフですよ、、、、」


 こんな時にまでケンゴの心配をするウィル。


「あ、ありがとうございます。えと、り、り、」


「リリィよ、礼はいいわ。」


 目を合わせず、おどおどしながらお礼を言おうとするケンゴにぶっきらぼうに返すリリィ。


「ああ、紹介が遅れたね、彼女はリリィ、僕の娘でAランク冒険者だよ。」


「む、娘さんなんですね、しかもAランク、、、、」


 意外な人物に驚くケンゴ。


「ところでケンゴくん、ここに来るまでに大量のゴブリンやコボルトの死体を見たんだが、それは全て君がやったということで間違いないかな?」


 驚いているケンゴにハウエルは道中で見た光景のことを聞く。


「あ、はい、ウィルさんが危なかったので、襲ってくる奴らを全て倒しました。」


「ケンゴ、お前、」


「しんじらんない、」


「!?」


「凄まじいね。」


 平然と言うケンゴに驚愕する4人


「いや、でも、弱かったですし、全然大したこと、」


「じゃあ、倒れた僕はそれ以上にたいしたことないってことですか?」


「・・・・」


 ウィルの一言になにも言えなくなるケンゴ。


「まあ、それは置いといて、キースくん、リサくん、ウィルくんを守りながら街へ戻ってくれ。」


「え、ハウエルさんとリリィちゃんとケンゴはどうするんですか?」


 ハウエルの発言にキースは驚きながら問いかける。


「これだけのメンツが揃っているんだ、元凶を叩きに行く。」







 ーーーーーーーー







「なるほど、そんな壮絶な修行をしていたんだね、」


「あはは、まあ、今考えると、結構壮絶な修行だったんですかね、、、、」


「結構、、、、」


 キース達を街へと返した後、ケンゴ、ハク、ハウエル、リリィは元凶を探すため、森の奥深くへと足を踏み入れていた。


「でも、その、獣害っていうんですか?一体なにが原因で起こるものなんですか?」


 ケンゴがハウエルに聞く。


「そうだね、例えばある特定のモンスターの異常な繁殖を起こした、もしくは強いモンスターに他のモンスターが追い立てられた、または濃い魔素が周辺のモンスターを軒並み狂わせた。こんなところかな。」


「なるほど。」


 理解したケンゴにリリィが続くように話す。


「おそらく、今回のは魔素の異常だと思うわ。さっきから出てくるモンスター達の目がおかしい。」


「そうだね、それに空気もね、」


「わかります、なんというか、風が、ねっとり

 してるというか、」


「グルゥゥゥ、、、、」


 森の奥に進むごとにモンスターの様子や空気がおかしくなっている。


 風の聖獣であるハクはひどく気分が悪そうだ。


「ケンゴくんは魔素を感じ取ることができるのかい?」


「いえ、ただ、かなり気持ち悪い空気だなと、思ったくらいです。」


「ふむ、ハクくんと融合した影響かな?」


「そ、そうですかね?」


「クゥン?」


 ハクは唐突に自分の名前が出たことに首を傾げた。


 それからさらに進んだ時、ケンゴはある異変に気づいた。


「皆さん、この先から、ものすごいいやな風がふいてきています。」


「嫌な風?」


「はい、ものすごく気持ちの悪い風が、」


 顔を険しくするケンゴ。


 ハウエルは索敵魔法を展開する。


「確かに、この先に何か巨大な魔力反応がある。」


「魔力反応?」


「ああ、これは生物じゃない、何か別のものだ。」


 疑問に思ったリリィにハウエルは答える。


「多分他にもモンスターがいると思います。そんな匂いがする。」


「グルゥ、、、、」


 他のモンスターの匂いを感じたり警戒を促すケンゴとハク。


「慎重に進もう。」


「ええ。」


「はい。」


 3人と1匹は警戒しながら足を運ぶ。


 そしてついに目的の場所へと辿り着く。


「これは、、、、」


「なんなの?」


「黒い、宝石?」


「ガルルルルルルルル!!!!」


「ハク?、、、、まさか!?」


 そこにあったのは禍々しい、黒いオーラを放つ岩のように巨大な宝石だった。

 闇を濃縮し、一気に固めたのではないかと言わんばかりの宝石は、尋常ではないほどの邪気を放っていた。

尋常ではないほどに宝石に向かって威嚇するハクの様子に、ケンゴはあることに気がついた。


「ハウエルさん!あの宝石から出ている邪気、ハクに取り憑いていたのと同じです!!!!」


「取り憑いていた?」


ケンゴの言葉に疑問を浮かべるハウエル。


「ハクは、僕と会った時、暴走していたんです、体に黒い模様見たいのが所々に出てて、目が赤く光っていました。多分ハクはこの宝石の邪気に当てられていたんです。」


 「ケンゴくん、これはモンスターを狂わせる邪悪な魔力の塊よ、ハクちゃんもこれでおかしくなっていたのだとしたら、数日前に現れたあの異常なゴブリンも、、、、」


 リリィの、考えにケンゴとハウエルはこの森で何が起きているかに気づく。


「どうやらあれが、周りに邪悪な魔素を振り撒いているらしいね。」


「おそらく、あれは、、、、」


 事実確認をするハウエルと何かに気づくリリィ。




 そこに、この元凶を守る番人が現れた。


「「「「ウガァアアアアアアアア!!!!」」」」


 突如として現れたのは頭に2本の角を生やした、でかい赤鬼のようなモンスター。


「オーガか厄介だね。」


「多分こいつら魔素で強化されてる。」


 オーガと呼ばれたモンスターは全部で4体、そのうち真ん中の一体は他のものよりもひと回りでかく、赤黒い肌をしていた。


「真ん中のやつはオーガキングだろう。」


「最悪、、、、」


「・・・・」


「ガルルルルルルルルルルル!!!!」


 ハウエルとリリィはそれぞれ杖と剣を構え。


 ケンゴは左構えを、ハクは牙を剥いた。


「ケンゴくん、真ん中のやつはいけそうかい。」


 杖を構えながらハウエルはケンゴに聞く。


「はい、任せてください。」


「嘘、素手?」


 構えをとりながら答えたケンゴに困惑するリリィ。


「ありがとう、目標はあの魔石の破壊だ。そのためにもまずは4体のオーガを倒す。準備はいいかい!?」


「はい!」

「ええ、」

「ウォン!」


 力強く返事をする一同にハウエルは嬉しくなる。


「「「「ウガァアアアアアアアア!!!!」」」」


 4体のオーガ達は構えたケンゴ達に突っ込んでいく。


「アースバインド!!!!」


 ハウエルが杖を構えて唱えると地面から土の鎖が出現し、4体のオーガを拘束する。


「エアリアルスラッシュ!!!!」


「ガッ、、、、」


 そのうちの一体の首をリリィが風を纏った剣で斬り飛ばす。


「ガルゥアアアア!!!!」


「ウギャアアアア!!!!」


 もう一体のオーガはハクの爪で切り裂かれ、絶命する。


「アースブラスト!!!!」


 さらに残りのオーガとオーガキングにはハウエルが回転する岩を魔法で生み出して飛ばす。


「ウガァア!!!!」


「グアアアア!!!!」


 そのうち、普通のオーガは胸を穿たれて絶命するもの、オーガキングは全く問題とせず、拘束を解いて特攻を仕掛けてきた。


「破ァアアアア!!!!」


「ウガァアアアア!!!!」


 そんなオーガキングを真正面から体当たりで吹っ飛ばすケンゴ。


「おお!!!!」


「すごい、、、、」


 ケンゴがいましがた見せた技に感嘆する2人。


 そこからケンゴは神室流の左構えをとり気合を入れる。


「ウガァ、、、、」


 体当たりの衝撃が未だ残るオーガキング。


「神室流奥義」


 そう唱えたケンゴは爆発的な踏み込みで加速して跳躍する。


 放つのは跳び回し蹴り。


 神室の操気術に遠心力と鍛え抜かれた硬い脛を合わせたその技は。


「金砕棒!!!!」


 ケンゴの技により頭が弾け飛んだオーガキングは言葉を発することもできず、他に伏せた。


「神室流奥義!大砲!!!!」


 そのままケンゴは黒い巨大な魔石に正拳突きの大砲を打ち込んで砕いた。


「ふぅ、お、終わりまし、あれ?」


「「・・・・」」


 ケンゴのあまりの物凄さに言葉を失うハウエルとリリィ。


 かくして、一連の事件はようやく解決した。






 ☆登場モンスター☆


 オーガ

 ランク:A

 2本の角を持った鬼のようなモンスター。

 高い魔法耐性をもち、恐ろしく頑強な肉体を有する。


 オーガキング

 ランク:A +

 オーガの強化個体。




 ☆登場した神室流奥義☆


 "金砕棒"

 鍛え抜かれた脛を金砕棒に見立てて振るう技。ケンゴが使うとその威力は実際の金砕棒をはるかに超えるものとなる。






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