1-9 コミュ障、挽回する。








(危ないところだった。)


 あと少しでも反応が遅れていたら、キースの頭が吹き飛んでいた。


 ケンゴはそう考え、安堵していた。


(しかし、なんだあいつらは?明らかに他のゴブリンとは違う、どことなく似ているが上位種か何かか?)



「ギ?」


「ゲヒヒ、」


「グムゥ」


 ケンゴの唐突な復活にそれぞれ反応する3体の上位ゴブリン達。


「ケ、ケ、ケンゴ?大丈夫なのか?」


 恐怖で震えながらもキースがケンゴに問う。


「キースさん、僕は大丈夫です。先程は突き飛ばしてしまい、すみませんでした。」


「「「・・・・」」」


 未だに震えている3人は驚いていた。


(ケンゴは駆け出しの駆け出しだったはず、なのにこの落ち着きっぷりと頼りがいはなんだ?なんで俺は少し安心しているんだ。)


(すごい、自身のなさそうだった背中が大きく見える、)


(ケンゴさん、貴方はいったい。)


 上位ゴブリンから一切意識をそらさずに、ケンゴは3人に言う。


「皆さん、本当にすみませんでした。」


「「「え?」」」


「僕がもっと早くこの事実を伝えていれば、こんな状況に陥っていなかった。」


「ど、どう言うことだよ?」


「気づいていたんです。最後のゴブリンを追いかけている時に、僕たちは奴らに誘き出されていたんです。」


「う、嘘、そんな、」


「気付けませんでした、、、、」


「伝えればよかったんです、でも僕は人と話すのがすごく苦手です。それに駆け出しの僕が意見していいものかとも思ってしまいました、結果がこれです。」


 ケンゴはゆっくりと構えをとる。開いた左手を首の高さに、握った右手を胸に。


「「「「「「ギャー!ギャー!ギャー!」」」」」」


 周りにいるゴブリン達がケンゴに威嚇する。


「数が多いな、」


 それを見て渋い顔をするケンゴ、3人を完璧に守りながら奴らの相手をするのは至難の業だ。


「ウォン!!!!」


 そんなケンゴに対しハクが吠えた。


「ハク、どうした?」


「ウォン!ウォン!」


 軽くジャンプしながら何かを訴えるハク。


「そうか、じゃあ任せてもいいかな?」


「ウォン!!!!」


「わかったよ!ハク!キースさん達を守ってあげて!」


「ウォン!!!!」


 返事を返したハクはキース達を守るように前に立つ。


「ウォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!」


 大きな遠吠えをしたハクの体は竜巻に包まれる。


「ぐぅっ!!!!」


「うわ!!!!」


「うっ!!!!」


 強い風に当てられ、顔を背けるキース、リサ、ウィル。


 そして風がやみ、キース達の目に写ったのは見上げるほどの巨体になったハクだった。


「え?」


「ハクちゃん?」


「こ、これは」


「ガルルルルルルル!」


 ハクはこちらを威嚇し続けるゴブリン達に対し威嚇で返す。


「グギャーーーー!!!!」


 白の変貌に驚くも戦闘態勢に入るゴブリン達。


「改めて、本当にすみませんでした、ですが大丈夫です!必ずみんなで、無事に戻りましょう。」


 そう告げたケンゴに対し、不敵に3体の上位ゴブリン達は笑った。


「「「ギヒヒヒヒ、、、、」」」


 3体はそれぞれの武器を構える。


 ケンゴは己を鼓舞するために叫んだ。


「神室流伝承者、神室 拳吾 いざ尋常に、参る!!!!」


 戦いの火蓋は切って落とされた。





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