1-7 コミュ障、頑張る

 





「おい、あれ見ろよ」


「テイムしたモンスターか?すげえ懐きっぷりだな、、、、」


「めっちゃ可愛い、、、、」


「撫で撫でしたいわぁ、、、、」



(すごい目立ってる、やばい、やばい、やばい、やばい)


「クゥーン(ペロペロペロペロ)」


 ハクを抱き抱えながら凄まじい視線に恐れを抱くケンゴとそんなケンゴの顔を舐めるハク。

 なぜこんな状況になったかというと、話は朝早い時間に遡る。













「それ!ハク!取ってこい!」


「ウォン!ウォン!」


 まだ日が少しだけ顔を出した頃、ケンゴはウォーミングアップがてらにハクとボール遊びをしていた。


 とんでもないスピードで投げられたボールをこれまたとんでもないスピードと動きで見事にキャッチしケンゴのところまで持ってくるハク。


「ハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!」


「ヨシヨシ、お前は本当にいい子だなぁ、」


「クゥーン(ペロペロペロペロ)」


 ハクがケンゴに甘え、ケンゴがハクを褒めている時、レナが庭に現れた。


「ケンゴ様、朝食のご用意ができました。」


「わかりました、ハク、行こう」


「ウォン!」







「ケンゴ様!ハク様!おはようございます!」


「イリスさん、おはようございます。」


「ウォン!!!!」


 食卓に入り、挨拶を交わすケンゴとイリスとハク。

 吃らないあたりケンゴはイリスとレナにだいぶ心を許したらしい。しかしまだ目は合わせないが。


「ケンゴ様!今日もクエストですか?」


 イリスが元気に問いかける。


「え、えぇ、とりあえず、自分自身を養えるぐらいのお金は稼がなければならないので、」


「そんなこと気にしなくていいのにぃ、、、、」


「いやぁそういうわけにも、、、、」


 悩むケンゴに今度はレナが話しかける。


「ちなみにケンゴ様、狙い目はゴブリンの討伐依頼でございます。群れとなると厄介ですがケンゴ様にとっては蝿などと同程度でしょう。」


「結構辛辣ですね、討伐依頼は初心者には危ないと注意されまして、」


「それこそ気にする必要はございませんケンゴ様の強さは歴史上の英雄やSランク冒険者にも匹敵するかもしれません。」


「い、いやそれは絶対に、、、、」


 楽しげな会話が続き、朝食の時間が終わりを迎えた。








「解体用ナイフ、地図、応急処置用の道具、ケンゴ様は随分と持ち物が少ないですね。」


「わ、わざわざ用意、ありがとうございます。レナさん」


「当然です!ケンゴ様には武器などいらないのです!!!!」


 その後朝の水浴びなどを終え、ケンゴは冒険者ギルドに行こうとしていた。


「では、皆さん行ってきま、、、、」


「ワン!ワン!!!!ワオーーーーン!!!!」


 挨拶もほどほどに出ようとした時、大きな鳴き声とともにハクが全力で走ってきた。


「おい、どうしたハグフ!!!!」


 おかしく思うケンゴの腹にハクが飛び込む。


「ワンワンワンワン!!!!」


「うぅ、ハク、どうしたんだ?」


 何かを必死で訴えかけるハクと何が言いたいのかわからないケンゴ。

 そこにレナが口を出した。


「ケンゴ様、ハク様はおそらく一緒に行きたいのではないですか?」


「え?」


 疑問に思ったケンゴはハクに問いかける。


「ハク、俺と一緒にクエストに行きたいのか?」


「ウォン!!!!」


 そうだと言わんばかりに大きく吠えるハク。


「しかし、お前を連れてくと、確実に目立つんだよなぁ、」


「クゥーン、、、、」


 悩むケンゴに対し、ハクの耳はパタンと倒れ今にも泣きそうな顔をした。


「・・・・」


「ケンゴ様ぁ、連れてってあげてはどうですか?」


 本気で悲しそうな顔をするハクに対し、イリスは同情し、ケンゴは折れてしまった。









 そして現在に至る。





「うぅ、すごい目立ってる、キツい、、、、」


「アオ〜〜〜〜〜〜〜ン、、、、」


 周囲の視線に怯えるケンゴはハクをお姫様抱っこ状態にし胸元をモフモフしていた。


 そんなこんなで冒険者ギルドに着いたケンゴを待っていたのは壮絶な光景だった。


「え?え?え?なにこれ、え?」


 動揺しまくるケンゴ。

 彼の目に映るのはガタイのいい男や屈強そうな女たちがもみくちゃになりながらクエスト用紙を取り合ったり、受付を目指していたのだった。


「昨日や一昨日の時の比じゃないぞ、こんなに朝早いのに、」


「クゥーン、」


 とてつもない人混みに不安になるケンゴ。


「この人混みじゃ、昨日のアレ(完全に気配を消した人混を抜けるわざ)は使えない、待つしかないか、」


「ワオ〜〜〜〜ン、、、、」




 **30分後**



「大分人が減ったな、これだったら行ける。」


「ウォン!!!!」


 大半の冒険者がクエストに出発したため、ケンゴはギルドに足を踏み入れる。


「おい、あれ、モンスターだよな?」


「テイマー?」


「モッフモッフだなぁ、」



(いや、すごい目立ってるうううあああ、帰りたい、帰りたい帰りたい帰りたい、、、、)


「クゥーン(ペロペロペロペロ)」


 ストレスがピークに達しそうになり汗を流しまくるケンゴとその汗を舐めるハク。


 ケンゴはクエストボードから前回と同じ薬草採取クエストを取った。


 ちなみに簡単で報酬も少ないこのクエストはどう考えてもケンゴには合っていない、Eランクでも割りのいい討伐依頼もあるにはあるのだが、あの人混みに入りたくないケンゴにはこれしか受けることができないのである。


「いらっしゃいませ、あのすごい汗ですが大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫です。」


「ウォン!」


 男の受付はケンゴの様子を心配に思いながらもクエスト用紙を受理した。


「それでは、お気をつけて。」


「はい、ありがとうございます。」


 ケンゴは、ギルドから出て中央門に向かって歩き始める。


「はぁ、なんでこんなめんどくさい性格してるのかなぁ僕って、」


「クゥーン(ペロペロペロペロペロペロ)」


「慰めてくれるのかい?ありがとうハク。」


「ウォン!」


 不甲斐ない自分に落ち込むケンゴにある人物が現れる。



「お、おめぇ確かおとといあったよな!」






 **************



「いやぁ、おめぇとんでもねえ人見知りだなぁ、そんなんじゃやってけねぇぞ!」


「ちょっと!あんた失礼すぎよ!全く、」


「その通りですよキース、人にはそれぞれ苦手なものがあるのです。」


「あはは、いや大丈夫ですから、」


 今現在、ケンゴは3人のパーティーに混ざって森を目指していた。


 1人はおとといギルドで受付の説明をしてくれたキース。

 もう一人は黒い髪をツインテールにし、弓を背中に携えた女性。

 そしてもう一人は短い金髪に法衣のような服と長い杖を携えた男。


「一応紹介しておくぜ!こっちのうるせえのが俺のパーティの弓術士のリサ、そしてこっちの金髪が魔法使い兼僧侶のウィルだ!」


「あんた、本当に、殴るわよ?まあいいわ、弓術士のリサよ!よろしくね!」


「ウィルです。お見知り置きを。」


「あ、ありがとうございます。ケ、ケンゴです。役職は、まだ決まってません。そしてこの子がハクです。」


「ウォン!!!!」


「かーわいいいい!!!!よろしくねハクちゃん!!!!」(ナデナデ)


「ウォン!!!!」



 コミュ力高めな3人に押されながらケンゴとハクとキース一行は森に足を踏み入れた。







 **********


「ウォンウォン!」


「ありがとうハク!これで薬草が集まったよ!」


 鼻のきくハクの活躍でケンゴは予定されていた薬草を短時間で集めることに成功した。


(前に中々見つからなかったのはおそらく深く入りすぎたのかもしれない、気をつけないと。)


「お、集め終わったみてえだな、他にも色んな薬草があったりするから集めたらどうだ?別途報酬が入るぜ、よかったら教えてやるけど時間あるか?」


 一人反省をするケンゴにキースが問う。


「い、いいんですか?迷惑ではないでしょうか?」


「馬鹿やろう!俺たちとお前の中じゃねえか!」


 大声でそう言いながらキースは満面の笑みでケンゴの背中を叩く。


「ちょっとキース乱暴すぎ、でもケンゴくん、あたしたちは全然オッケーだよ!ね!ウィル!」


「もちろんです!」


「ほ、本当にありがとうございます。」


「ウォン!」


 ケンゴはキース達に深々と頭を下げた。


 そしてキースたちはケンゴと共に薬草を探し始める。


「お、早速見つけたぜ。」


 そういうとキースは紫色の葉っぱに緑色の蓋がある独特な色の葉っぱを取った。


「これはドクケシ草って言って煎じて飲むと毒を消す効果があるんだ、そのままでもいいが薬師が薬草と共に煎じると解毒ポーションになる。結構いい値段で売れるぜ。」


「あ、あたしも見つけたわよ!」


 リサは黄緑色の草を手に取る。


「これはレブル草、回復効果とかはないんだけど、スタミナと魔力を回復させてくれるの、割と見つかりづらいから中々の値段で売れるわよ。」


「おや、わたくしも見つけました。」


 ウィルは水色の独特な色をした草を取る


「これはファブリ草と言って厳密には薬草ではありませんが消臭効果のある草です。臭い消しにも使えますし食べられるので口臭も取れます、さらに特定の植物油と調合すると石鹸にもなります。これはとても便利なのでみんな欲しがりますよ。」


「へぇーーーー、すごい、こんなにも色々な薬草があるんですねぇ。」


「ワオゥン、」


 ケンゴは純粋に感心する。


 そこでふと思う。


「そういえば聞いていませんでしたが、皆さんのクエストはなんですか?僕のクエストに付き合っていただいて本当にありがたいんですが、大丈夫かなぁ、と思いまして。」


「ん、ああ、俺たちのクエストは、、、、」



 ケンゴの質問に答えようとしたキースが急に視線を固定し黙り込む、そしてみんなに低く屈むようにジェスチャーをする。


 何かを察したケンゴは低く屈み、ハクもその場に伏せる。


「ど、どうしたんですか?」


 ケンゴはできる限りの小声で話しかける。


「あれを見ろ、今回の俺たちのクエストの獲物だ。」


 言われた通りにキースに示された方向を見た、そこにいたのはケンゴがこの数日間の間に大量に倒していた、緑色の小鬼だった。





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