STORE5 推薦状

 朝ごはんを食べ、剣について教えたあと、俺は皿洗いをしようとした。するとアンソニーは慌てて

「皿洗いくらい僕がやるよ、君は命の恩人なんだから、これくらいはさせてくれないか。」

 と言ってきた。俺的にはお礼をしてもらうために助けた訳では無いのでその要求を1度断ったがなかなか引いてくれないアンソニーに根負けして、俺は一緒にやるという提案をして収まった。

「そういや、なんでお前はこの山に来たの?ここは辺境の地として有名だろ。」

 そう、この山は年がら年中周りに雪が降っているのにも関わらず、いざ街に入ると雪が積もっていないという、ちょっと所ではすまないほど変なところとして有名なのだ。そのせいか、新しくここに住む人すら出てこない。

 すると、アンソニーは答えた。

「う〜んと。朝言ったと思うけど僕は訓練生証明書というのを持っているだよ。」

「言ってたな。俺はそれが何だか全く分からなかったけど。」

 訓練生証明書なんて産まれて初めて聞いた。わかるとしたら名前からして兵士とかそういうのかな〜という予想が建てれるぐらいだ。

「実はそれは星下連合直属のディーケエイトス学園に入れる推薦状なんだよ。」

「は!?まじかよ...」

 ディーケエイトス学校というのは昔の英雄、星王がリーダーとなり入っていた組織である星下連合に入るための学校だ。

 そもそも星下連合とはこの国の平和と発展をするための機関であるため、軍を持ってる。そこの軍はランク付けされていて1番上の一等星隊の強さは弱い惑星の国との戦争ならば一等星隊の1番下の隊ですらその隊ひとつでなんとかなるくらいの強さだ。

 そんなところに将来入るため、戦闘の訓練を主にしながら、最新のブキの製造や政治に至るまで、自分が将来どこに所属されてもいいように高いレベルの学びができる。

 そのため、貴族とかは地位を上げるために入ることが多いため倍率は異常なほど高くなる。その為、一般人が入ることはほぼない。

 だから...

「お前すげーなー!推薦貰えるくらい強いなんて。だってあれだろ、推薦権を持っているのは一等星隊の隊長だけなんだろ、それに認められるくらいだもんな。」

 そう、このバカみたいに高い倍率に一般人が入るにはほぼ推薦しか無理なのだ。多分学園もそれをわかって推薦枠を設けている。でも、条件は一等星隊の隊長に認められるという厳しいものだ。だからこんな田舎だと推薦状の名前もどんなことが書かれた紙なのかも知らないくらいレアなもんだ。だからアンソニーはすごいはずなんだが...

(なーんかこの話した途端浮かない顔になったんだよな。剣の話の時は嬉しそうだったのに。)

 そんな顔しながらもアンソニーは話を続けてくれた。

「僕の場合は少し特殊でね、」

 するとアンソニーは腰につけている剣を優しく撫でながら言った。

「この剣の星の能力が強いから認められただけで僕は強くないんだ。よくよく考えてみてよ、僕がそんなに強かったら山で星獣に会っても逃げないで戦っていたはずだろ。」

 これであんなに重たい剣を持っていたのに逃げていたことと訓練生証明書を見られることが嫌がっていた謎がようやく解けた。でもそれは辛いだろうな。強いと思われてるのは自分ではなく剣の方なのか...

 少し空気が重くなったところでアンソニーは言った。

「それでね、僕はまだ入学できる歳にはあと1年足りないんだよ。だからこの1年で修業しようと思って色々とやっている内にこの山で修業するといいというウワサを聞いたから来たんだよ。まぁ遭難したり、星獣にあったりと色んな目にあったけど...」

 その話聞いて俺は納得した。あの人のことを知っている人がいるとはな。まぁ確かにここで修業すれば強くなるけど。あの人が認めてくれるか分からないな。

 とりあえず事情がわかった俺はアンソニーにその修業のことについて言うことにした。

「どこからその噂が出てきたかが分からないが俺もその人の所で修業みたいなことしてるから案内してあげるよ。」

 するとアンソニーはさっきみたいな暗い顔から一気に明るい顔に変わり

「あ、ありがとうアベル!ほんとうにありがとう!」

 そう言い、頭まで下げられた。さすがにそこまでありがたく思われるとは思わなかったので

「頭下げんなよ、でもその人変わっている人だからな。やってくれるか分からないぞ。」

 と慌てて言った。となると、案内するついでにこの街のことでも紹介しようかな、多分修行は時間かかるから長い間のこと街にいることになるだろうし。

「さて、じゃあアンソニー夜ご飯買いに行くぞ。」

 俺は少しウキウキになってカゴを持ちながら家を出ようとする。

「ちょっと夜ご飯も大切だけどちゃんと案内はしてくれるんだよね。」

 と言い、アンソニーは慌てて付いてきた。


 アベルは久しぶりに誰かと買い物に行けることに喜んでいた。





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