STORE4 剣に好かれてるアンソニー君

 アンソニーのご飯は昨日の残りのシチューにした。昨日食べてない分沢山食べたいだろうからな。山の山菜や柔らかいお肉が入った自慢の出来だから満足してくれるはずだ。

 アンソニーはスプーン1口分食べると止まらなくなり、あっという間に半分程は食べてしまった。よっぽどお腹空いてたんだろうな。アンソニーを見ていると申し訳なさそうな顔をしてこっちを向いて言った。

「ご、ごめん。もっと味わいながら食べた方がよかったよね。」

「べつにいいよ、美味しそうに食べてくれてるだけでかなり嬉しいからな。」

「いや、本当に美味しいよこれ。」

 どうやら舌にあっていたようでよかった。少し田舎っぽい味だろうから、少し心配だったんだよな。


 俺らはシチューを食べ終わり、お茶を飲んでいた。アンソ二ー曰く、これに使われている葉はこの周りしか取れないものらしく、初めて飲んだらしい。好きで飲んでたこれは激レアものだったのか、と勝手に感動しているとアニソ二ーから質問された。

「忘れてたけどさっきアベルが言ってた剣に好かれてるってどういうこと?」

「そういえば、それを言うためにまずご飯にしてたんだったな。すっかり忘れてたわ。」

 いや〜まじで忘れてた。あぶね、あぶね。

 しかしこの話は長くなるからしっかり考えてから話さないと。間違ったことを教えちゃったら大変だしな。少しだけ時間を置き、俺はアンソニーに話した。

「悪いが少し話が長くなるぞ。」

「別に大丈夫だよ。自分の剣のことは知っておかないとだしね。」

「それもそうだな。まずこの世界の剣ってなんで能力を持ち、それを使えるかと言うと大雑把に言えば俺っちと同じだ。だから誰でも使える訳では無い。」

 アンソニーは少し考えたあと、言った。

「ってことは、産まれた時に何らかの星の核と星王様の導きによって繋がって能力を受け取り、人間は星の核の力の源である星素を心臓の逆、右で作っているように剣も星素をどっかで作ってもいる、ということ?」

「お、おう。そういうことだ。」

 こいつ推察する力ありすぎだろ。説明しようとしたこと言われたぞ。俺がアンソニーのことすげーと思っていると、アンソニーから質問された。

「なら、同じ星素から能力を使うんだから誰でも使えるんじゃないの。」

「それがそう上手くはいかない。同じ系統だったらいいんだが違うもの同士だと、どっちに星素を変化させるかを喧嘩をしてしまうんだよ。そもそも星素っていうのはなんにでもなれる素なんだよ。だから...」

 俺は家の壁に置いてある自分の剣を指して言った。

「あの剣は風系統のものなんだけど、例えば俺が炎系統とする。すると炎と風、どっちに星素を使うのかを剣との間で喧嘩をしてしまうんだよ。俺たちの体は武器を装備すると血管が繋がるようなイメージで星素を共有することになる。だから一方的に星素を使われたり、そもそも使わしてくれないってこともあるんだよ。」

 納得したようにアンソニーは言った。

「なるほどね、だから仲の良い俺とだとあの剣は俺が剣の能力を使うことを許してくれるから軽く感じるけど、仲良くないアベルが使うと能力を使うのを許されてないから重くなるのか。」

「そういう事だ、ちなみに剣の星素は柄の部分で作られているって言われてる。他の武器だと違うらしいけどな。」

「なるほどね、勉強しになったよ。つまりこの剣の能力が《朧》だから俺は軽く感じるわけか。」

「なるほどな朧か。俺が重いと思った理由もわかったな。」

 アンソニーはまたよく分からないという顔に変わり、また質問した。

「うん?どういうこと?」

「剣の重さはその能力の光度に比例する。確か朧は1等星とかのかなり上の分類だ。だから重いんだよ。」

「へーそうなんだ!」

 また納得したような顔になったアンソニーに俺は朝の好かれているんだなという言葉の意味の答えをお茶の入ったコップを持ちながら言った。

「オマケに光度が高いほどその剣の性格はどんどん気難しくなる。だから能力を使えてるアンソニーはかなり好かれてるんだよ、その剣に。かなり練習したんだな扱えるようになるまで。」

 するとさっきまで説明を理解していたアンソニーがよく分からないという顔になって言った。

「いや、俺は最初からこいつが軽いと感じてるよ。」

「は?!まじかよ...」

 冗談じゃない。1等星級の武器はどんなにうまい人でも人との付き合いみたいに全く反りが合わなくて、能力すら使えないことだってあるのに、こいつは最初から能力が使えてたんかよ。ていうか、驚きすぎてコップ落とすところだった。あっぶな。

 落ち着いてコップを置き、呆れながら俺は言った。


「前言撤回だ、アンソニー。お前、その剣に好かれすぎてるわ!」


 アンソニーはその言葉を聞き、嬉しがるべきなのか、自分でも呆れるべきなのかという感情に板挟みにあいながら、苦笑いしていた。

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