第27話 オークション会場 その2
「それでは皆様お待たせいたしました!
まず最初の商品はこちら!!」
大きなホールに司会者の声が響く。
タノスは座りながら、軽く靴底で床をトントンと叩く。
ワッシュがそれに気付く。
「・・・?」
タノスが小さな声で話す。
「予備弾のチェックだ。
いざとなったら俺は5発撃てる。」
「靴底に隠しているのか。」
「ペンダントにもだ。」
タノスは靴底の中と、首からぶらさげ普段は見えないようになっているペンダントの中に銃弾を隠し持っている。
その情報をワッシュだけが聞いた。
「何故私にそれを?」
「頭数に入れておけと言っただろう。
俺が戦える前提で動いた方が連携しやすい。」
「・・・そうか。」
ワッシュは納得するが、自分の中に違和感が残る。
(私なら自分の切り札を易々と教えはしないだろう。
こいつは一見疑い深いように見えるが・・・)
「200ラトー!さぁ他には!?
純度100%のゴーベ石です!」
「350だ!」
「350ラトー!」
司会者の甲高い声、落札金額を叫ぶ参加者。
ワッシュは不自然にならないように周りを見渡す。
(ファルスの特徴は大きな一つ目・・・
だがそんなのは山ほどいる。参加者の数だけ種族があるようなものだここは。)
見回すワッシュに、タノスが声をかける。
「ゆっくり待てばいい。
どうせそのファルスって奴は奴隷が商品として並んだ時に姿を現す。」
「・・・ああ。」
商品のラインナップは、珍しい鉱石や宝石・・・
次第に生き物の一部や角、牙、ミイラ・・・
誰かの皮膚や毛髪、生々しいものが出て来る度に参加者達は目を輝かせた。
「次の商品はこちら!
魔獣カンレルの心臓!!
ハンターがつい二日前にカンレルを狩り手に入れた鮮度抜群の品です!!」
ワッシュの表情がほんの少し険しくなった。
カーナは先程から拳を握りしめ、その拳には力が入っている。
額には冷や汗をかいていた。
そんなカーナに、ワッシュが声をかける。
「カーナ、大丈夫か?」
「は、はい。
・・・気分の良いものではないですね、やっぱり。」
「・・・」
そう言ったカーナは、苦しそうにしながらも目の前の光景から目を外さない。
タノスが一瞬カーナの方を見やり、またすぐに前を向いた。
「さて・・・最後の商品となります。」
司会者の言葉に、参加者たちがざわめく。
「もう既に噂を聞いてここへ駆けつけた方も多いのでは?
久しぶりに上質な商品が入ってまいりました・・・それではどうぞ!!」
司会者がステージの横を向き、スタッフを呼ぶ。
スタッフ二人が連れてきたのは、黒と紫の色が混じった耳を覆う量の髪・・・小さなヒューマンの子供だった。
汚れの無い薄茶色のズボン、白い半袖のシャツを着ている。
首輪をし、そして手枷が両手の自由を奪っていた。
少年はうつむき、かすかに見える表情から希望などというものが無いことが伝わってくる。
「うっ・・・」
カーナが思わず目を細める。
(きたな・・・)
「13歳、男!
戦争孤児です!しかしほとんどが傷物になっている中無傷で発見されここまでたどり着いてくれました!!なんという幸運でしょうか!!」
参加者達の眼がギラギラ光り、よだれを垂らす者も居た。
「早く落札させろ!!!」
「もう説明はいい!!早く始めろ!!」
「おっとわかりましたわかりました!!
もう少し説明を、と思いましたが早速始めていきましょう!!
最低落札価格は40万ラトーです!!大きな声で金額を・・・」
「900万ラトーだ。」
低く太い、しかしハッキリとした声が会場内に響いた。
さっきまで興奮で埋め尽くされていた会場は一瞬にして静かになり、参加者達は声の方向へ顔を向ける。
大きな一つ目、黒いハットを被った大きな男が居た。
その大きな身体は椅子を二人分占領しており、席の一番後ろから威圧感を放つ。
「きゅ・・・」
「900万だ。司会者、聞こえてなかったのか?」
「え いえ!た、確かに聞こえておりました!
900万ラトー!900万ラトーです!!さ、さぁ他には・・・」
誰もそれより上回る落札金額を言おうとしない。
恐らく今まで出てきた商品全てを落札する金額を上回る値段に、参加者のほとんどは絶句していた。
そして、ひそひそと声が聞こえる。
「ファルス・・・やっぱり来やがった。」
「ありえねぇ値段提示しやがって・・・チクショウが。」
「なんでいつも奴隷だけ買っていくんだよあいつは・・・」
(あいつか―――)
ワッシュとタノス、カーナも大男を見た。
ファルスが大きな声で喋る。
「他に居ないようだ。司会者、さっさと終了させてくれ。」
「は!はいっ
そ、それではこちらの少年は900万ラトーで落札確定となります!!」
司会者が甲高い声で告げた。
ファルスの大きな口がニヤリと笑い、不気味に上がった口角に参加者はゾッとする。
「フフフ・・・フフフフ!!!」
気味の悪い笑い声が、会場に響き渡った。
「ワッシュ。どうする?」
「オークションが完全に終わるまで待つ。
・・・その後奴を追うぞ。」
タノスがコクリと頷いた。
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