第12話 ゴミ処理場
首都にたどり着き、街を歩くワッシュとカーナ。
まだ朝5時ということもあってか人は少ない。
だが―――
「すいません、そこのお二方。」
「・・・?」
振り向くと、厚手の茶色いコートを着て赤い帽子を被った憲兵が二人居た。
二人とも、長い銃を一丁背中に装備している。
「もしや、旅人の方では・・・?外から来られたのですか?」
「ああ。・・・丁度良かった、すまないがこの街の案内を頼みたいんだが・・・」
「そうでしたかそうでしたか!
この国はですね、旅人の方がいらしたらひとまず王都に来てもらい手続きと、おもてなしを用意しているんです。
私たちについてきてください!」
元気よくそう言うと、片方の男がワッシュとカーナの後ろについた。
「平和な国ではありますが、念のため護衛致します。」
「ああ。気遣い感謝する。」
ワッシュとカーナ、憲兵は王都に向かって歩いていく。
(赤い帽子の憲兵・・・順調だな。)
ワッシュの隣で、カーナが拳を静かに握りしめた。
「すみませんが、こちらでおくつろぎ下さい。つまらない部屋ですが・・・」
「悪いな。どのぐらいかかるか教えてもらえるか?」
「ええとですね・・・大体10分程で用意が整うかと思います。
それでは失礼致します。」
ワッシュとカーナは窓の無い、テーブルとイスだけの部屋に通された。
床は絨毯、壁には絵画が飾ってある。
「さて、10分と言っていたな。
となると・・・恐らく5分以内に私たちを始末しに来るはずだ。」
「・・・ッ」
「大丈夫だ。私が居る、お前は死なせん。
・・・ん?」
ワッシュは横に居るカーナを見た。
恐怖で震える臆病者ではなく、これから来る戦いを覚悟している眼だった。
(やはりこいつは・・・)
2分後だった。
ガコン!そう音がすると―――
「!?」
床が真っ二つに割れ、観音開きになる。
「うわっ・・・!」
開くのは速く、二人とも下へ落ち始める。
ワッシュは咄嗟に下を見た。
下はかなり深く、底へこのまま落ちればカーナの身体は耐えきれず潰れるだろう。
しかし、壁の一部に人が一人分入れる穴を見つける。
ワッシュはカーナの腕を掴み、落ちながらもカーナを穴へ向かって投げ飛ばした。
「カーナ!
お前はその先へ進め!」
「ワッシュさんっ!!」
「お前は大丈夫だ!魔力の制御装置を見つけて破壊しろ!!」
そう言った時にはもうワッシュの姿は地下深くへ落ち、見えなくなっていた。
カーナは穴の中から下を見るが、闇しか広がっていない。
「そんな・・・」
(僕なら大丈夫?本当に?
でも、でも・・・僕がやらなきゃ皆が危ないんだ。
やるんだ・・・やるんだ!)
額から汗が垂れる。
カーナは一瞬目をつぶり、再び開くと穴の先へと向かう。
(ここはきっと通気口のようなものだ。僕の居た城と少し構造が似てる。
きっとどこかに出るはずだ。)
立ち上がれない程低い通気口を、先へ進む。
緊張で心臓の鼓動が速くなる。
傾斜になっている通気口内を3分ほど進み、金網のようなもので塞がれたところへたどり着く。
「こ、これは・・・外・・・?
とにかく、外さなきゃ・・・」
カーナは、金網を掴み動かそうとする。
「固い・・・っ
こんな固いのを外せるのか、僕は・・・っ!」
だが、カーナの予想とは裏腹に、金網がガコンと音を立て外れた。
「!?」
カーナは外れた金網を持つ手を見た。
(な、なんだ今の感覚・・・
物凄く強い力が、一瞬にして出たような・・・)
だがカーナの手に目でわかるような異変は見られない。
(いや!とにかく急ぐんだ。)
カーナは金網がはまっていた所から顔を出し、下を見る。
真下、およそ4m程の距離に地面があり、芝生が生えていた。
「さて・・・どう出ようか。」
ワッシュは3秒程落下し、地面に着地した。
(普通の人間なら落下の衝撃で足が折れている程の高さか・・・
そして出口も塞がれた。)
ワッシュは落ちながら、自分たちが居た部屋の床が閉まるのを見た。
そして、上をよく見るとカーナが通った穴も塞がれていた。
(機械か何かで操作されている。
だが、地下という事は壁を壊せば近道が出来るか?)
ワッシュは目の前を見る。
暗闇だが、20m程先に壁があるのが見える。
壁があるのを確認したところで、ワッシュは音を聞く。
四方八方から、鉄格子がゆっくり開く音がする。
そして、鉄格子の開く音が終わると、今度は足音に変わる。
(なるほど。
誘いこんだ者がここに落ちているはずなのに死骸の欠片さえ無いと思ったが・・・
そういうことか。)
一体は四足歩行で大きな牙を持ち、
また他の一体は二足歩行で顔に無数の眼を持ち・・・
各々が唸り声を上げながらワッシュへ近づいてくる。
そして全員同じように、よだれを垂らしていた。
(複数の肉体を混ぜて造られているな。二度と元には戻れまい。
3・・・4・・・50・・・
奥からも足音が聞こえる。)
(面倒だが、ひとまず全て片付けるとしよう。)
ワッシュが殺意を目の前に向けた瞬間だった。
周りにいる全ての生物が、ワッシュへ向かって走りだした。
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