第5話

「書庫、ですか?」


「うん」


「えっと…アレク様ご自身が本を読まれるんですよね…?」


「そうだよ、母上には許可もらってるからね」


「まぁそれなら……わかりました!私もお手伝いさせていただきます!」


「うん。よろしく頼むね」



母上から許可をもらった後、すぐにサリーを連れて書庫へ向かった。さすが侯爵家の書庫とあって小規模の図書館ほどの広さがある。



「私もある程度ですが場所は把握しているので、ご入用のものがあればお持ちしますよ?」


サリーからの提案だが、これは正直嬉しかった。


こんな広い書庫を隅から隅まで見ていくのは流石に骨が折れる。


「じゃあ、どこに置いてあるかだけ教えてもらってもいい?たぶん種類別に並べてあると思うし…俺も自分で本を選びたいからさ」


「そういうことなら、お任せください!」


「じゃあまずは……」





♢♢♢♢♢♢♢♢





こうして何冊か選別した後、書庫に設置してあるテーブルに積んで、付属している椅子に座って本を読んでいるとサリーから声をかけられる。


「えっと…こっちに置いてある本は読み終わったんですか?」


「え?うん。そうだよ」


「これ、全部ですか!?…一応部屋にも持ち出せるので、ゆっくり読んでもらっても大丈夫ですけど…」


「内容は把握しながら読んでるから大丈夫だよ」


「そ、そうですか…」


──まだ半日も経ってないのに……。



そこに置いてある本はざっと10冊以上はある。


それを、そもそも字をほとんど覚えていないはずの3歳の子供が、この短時間で読んだと言われれば、驚きと疑問を持つのは当然のことだ。


だが、そこは『神眼ゴットアイズ』のおかげである。言語の理解以外にも、速読そくどくし内容も理解することができるのだから。





♢♢♢♢♢♢♢





あれから2週間程、書庫にこもりっぱなしだったが、その甲斐あってか様々な知識を得ることができた。


この世界における大陸、国について、言葉、文化、歴史…などなど。


──細かいことはおいおい話していくことにしよう。




「サリー。やっと一区切りついたよ。今まで付き合ってくれてありがとね」


「いえいえ、私はアレク様の専属ですので、こうしてお付き合いするのは当然です!」


「あはは…それでもありがと」


こんなに速く情報を整理できたのも、スキルのおかげもあるが、サリーが最後まで手伝ってくれたことも大きいだろう。

 


「ところでさ、前から気になってたんだけど、あの奥にある部屋って何があるの?」


「ああ…あの部屋でしたら魔法に関する書物が保管されていますよ。高価な本が多いので鍵がかかっているんです」


そういうことか。書庫の奥に仰々しい鍵がかかった扉あるのだ。


それにしても、魔法書か…見てみたいな…。



「やっぱり俺が入るのは難しいかな?」


「今は難しいと思いますけど…」


「けど?」


「……ご当主様とルティア様の許可を貰えれば大丈夫だと思います」


んー…、相談して見るしかないか。


でもそう簡単にはいかないだろうな。






♢♢♢♢♢♢♢♢






「いいわよ?」


え?


「ですが…自分で言うのも何ですが、魔法書ですよね?危ないと思うんですけど」


「まぁ、あなたはまだ幼いけど、引き際はわかっていそうだし……ね、あなた?」


「いや、俺はどっちかというとアレクの意見に賛成なんだが…」


「あらら…でも心配なのはわかるけど、どっちにしろがないと魔法は扱えないし、適正があるなら早めに修練を積んでいた方がアレクのためになるわ」


「まあ、確かにな…」


適正、というのは初耳だ。書庫には魔法に関する本がほとんどなかったし、普段の生活で魔法に関する話をすることも今までなかったからだ。


……適性がなければ、俺はそもそも魔法が使えないかもしれないのか。


「その適正というのは、どうやってわかるのでしょうか」


「それは簡単だけど、…誰かを持ってきてくれるかしら」


「承知しました」





母上は、メイドからリーンの種を受け取って説明を続けた。


「この種をすこし芽が出るまで握って、芽が出たら中庭の花壇に植えてくれる?」


「えっと…わかりました」


「明日の朝には花が咲いてると思うから。その色と数によってあなたの適正がわかるのよ」






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神様の不手際で異世界転生!? ~チートなスキルでテンプレ王道歩みます~ @kamuuuuuui

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