【最終話】 そして、未来へ


 ――それは、最早災害であった。


「な、なんだ!? あの怪物は!?」

「王城に封印されていた魔獣らしい‼」


 突如、王城を破壊し出現した怪物に、王都は恐怖に包まれる。


「怯むな! 俺たちは魔王の一体を倒した勇者パーティーだ!」

「初代勇者が倒したんだ! 俺たちだって倒せるはずだ‼」

「せっかく革命を成功させたんだ! このまま終わる訳にはいかない‼」

「住民の避難を最優先に! 戦えるものは、あいつを食い止めるぞ‼」

「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお‼」」」」」


 しかし、流石は革命軍と言うべきか。

 一度は恐怖に慄いたものの、すぐに大勢を立て直すと、全員が魔獣を喰いとめにかかった。


「喰らえ! 硬度10! 豆腐ハンマー‼」「「「三超奥義! “死・兆・宣”‼」」」

「奥義“真・営業脚”ッ‼」「エラ〇呼吸・さばき型・三枚おろし‼」


 次々に攻撃を叩き込む戦士たち。


「いくぞ! ラキ・マヤト‼」

「おう! 合わせろ、アムゥロ‼」

「ゴォォォォォォ‼」

「いけ! イエガー、あの怪物を打倒すんじゃ‼」


 空中から爆撃を仕掛けるロボットたち。


「俺の歌を聞け! “勇者の乳首”ッ‼」

「いいよ~大迫力だよ~」

「お前ら、真面目にやれっ‼」


 皆が皆、最大の攻撃を以て、魔獣を攻撃する。だが――


「■■■■■――――――ッ‼」


 魔獣に傷一つ負わせることができなかった。

 それどころか、口から放った衝撃波により、革命軍の戦士たちは吹き飛ばされる。


『うわあああああああああッ!?』


 さらに、無造作に振り下ろした腕に叩き落され、ロボット軍団も一撃で壊滅状態に。


「くっ……なんて攻撃だ‼」

『操縦不能・破損率85%・これ以上の戦闘は困難です』

「クッ、エネルギー切れだ……‼」


 それでもあきらめず、攻撃を続ける革命軍。

 しかし、彼らの攻撃をものともせず、魔獣は破壊の限りを尽くそうとしていた。




「ダメだ……勝ち目がない……」


 革命軍本部にて、支援国家の一つである国の女王の夫が、絶望する。

 彼の鑑定能力で魔獣を鑑定してみたが全てが【不明】と出た。

 だが、一つだけ分かることは、人類には勝ち目がない。

 それだけの力の差があると本能的に理解できた。


 ――だが、絶望的な状況下でありながら、初代賢者は望みを捨ててなかった。


「大丈夫だ……まだ、神子がいる」


 そう呟くと、背後にてひたすらに祈りを捧げる当代の神子に視線を向けた。


 神子はただ、ひたすらに祈り続けていた。

 己に出来るのは祈ることだけだった。

 思えば、ずっとそうだった。


 子供の頃「貴方は新たなる神子だ」と親から無理やり引き離され、自分は神子となった。

 それからはずっと厳しい修行と神子としての業務の日々。


「お前は国の結界を維持するだけでいい」

「ただ、ダンジョンを鎮めるだけでいい」

「言う通りにしろ。余計なことは何も考えるな」

「お前は、国を守るための道具なのだ」


 心無い貴族の命令に、信者からの重圧。

 それらにただ只管応える日々に、心も体も摩耗していった。

 それでも、逃げ出さなかったのは、神子と言う立場にどれだけの責任があるか、理解していたから、理解させられていたからだ。


 だが、それも王子に言われた一言で、無惨に踏みにじられた。

 自分等、いらないのだ。

 代わりはいくらでもいるのだ。

 そう言われて、心が折れた。


 限界を迎え、なにもかもが嫌になり逃げだした。

 たくさんの人に迷惑をかけることになった。

 無責任だと、神子なのにと知らない誰かに責められる夢を毎晩見た。


 そんな病んだ心を癒すために、教皇の指示で大司教と旅に出た。

 そして、辿り着いたのが魔族と人間の共存する隠れ里であった。


(……教皇陛下は、なぜ、ここに向かうようにいったのだろう?)


 滞在して数日、教皇が用意してくれた宿に泊まりながら療養生活を送っていた神子は、ぼんやりとそんなことを考えていた。

 風の噂で、各地で魔物や魔王軍が暴れていると聞いた。

 自分が祈るを止めた所為だ。

 けれど、もう神子の務めにつきたくない。

 だが、それで罪のない人が傷つくのは、すごく嫌な気分になる。


 まるでわがままな子供の屁理屈。堂々巡りな気持ちに折り合いが付けられず、神子は悶々とした日々を過ごしていた。


「少し、隣に座ってもいいかしら?」


 そんなある日、一人の少女が尋ねてきた。

 見覚えはあった。

 たしか、この隠れ里で一番偉い人だったはずだ。

 元々は人間だったらしいが、紆余屈折を得て魔族になったという少女は、現在、この郷のまとめ役として、暮らしているそうだ。


 今日、自分に会いに来たのも、まとめ役の仕事の一環だと言う。


「ここでの暮らしはなれた?」

「え……えぇ……」

「驚いたでしょう? 王都じゃ魔族と戦争しているのに、ここでは普通に手を取り合って暮らしているのだもの」


 彼女に言われた通り、神子はこの村の光景を始めて見た時、面食らってしまった。


 教皇からは「魔族と人間が共存する場所」と予め聞かされてはいたが、現実に目の当たりにすると、驚きの方が多かった。

 いや、ここにいるのは人間と魔族だけではなかった。


 ハイエルフの強引な民族浄化政策により、住処を追われた亜人種たちもいた。

 通常のエルフや混血種であるハーフエルフ、彼らと敵対しているとされるオークやドワーフ。

 奴隷扱いされるビースト族や人間とのなれ合いを嫌うスカイライナー。

 伝説とも呼ばれるドラゴニュートまでもがいる。


「みんな、今の大陸の、種族の在り方に疑問を覚え、ここに移り住んできたのよ」

「在り方、ですか?」

「うん、エルフだからこう。オークだからこう。人間だから、魔族だから……そう言うのに疲れたのね。私もそうだったから……」


 そう言うと、まとめ役の少女も、自らの生い立ちを話し始めた。

 昔、異なる大陸に住んでいた彼女は、そこで聖女と崇められ、魔王を退治する度に出た。

 度重なる困難を乗り越え、なんとか倒したものの、しかし、魔王は最後に自身の器とすべく、彼女に魔族化の呪いをかけた。

 残った聖女の力でなんとか、魔王の魂だけは消滅させられたが、人間ではなくなった以上、もう人間とは暮らせない。


 家族である神父とも、村の人間とも、大好きな少年とも……


「けどね、それは杞憂だったの。彼は――ルカは私を受け入れてくれた」


 魔族でも構わない。

 共に過ごした日々は変わらない。

 抱きしめられた時、そう言われ、少女はうれし涙を流したと言う。


「……そう言うこともあって、私はこの村を作ったの」


 最初は本当に自分たちだけの村だった。

 しかし、徐々に戦争により住処を失った人々や、戦争に嫌気がさした脱走兵に逃亡してきた奴隷たち。

 中には山賊紛いの連中もいたが……


「アンタたちなんておいでじゃないわよ!」

「防衛システム作動」

「パンダは実は雑食パンダー!」


 ……こんな感じで、追い払ってくれる仲間がいたので問題はなかった。


 そうした人々を受け入れるうちに、この村は次第に大きくなり現在に至ると言う訳だ。


「そのうち私の存在を疎んでる連中から『人魔教』なんて勝手に団体名をつけられてね……それなら、いっそのこと、それを利用して、本当に色んな人種が仲良くできたらなって思って、今に至ると言う訳」


 辛いこともある。

 悲しいこともある。

 それでも彼女が人間と魔族の共存を諦めないのは、大切な人々の為だからだ。


 ……しかし、自分はどうだろうか?


 今までは、自分の大切な人々のために祈りを捧げてきた。

 親元から引き離された自分の母親代わりになり、親身になって接してくれた大司教。

 普段は軽薄だが、なにかと気を回してくれた教皇。

 立場上、迂闊なことは出来ないながらも、自分を気にかけてくれた一部の信徒たち。

 弱くて情けない自分を、それでも信じてくれる民。


 彼らのために何かをしたかった。

 なのに、いつの間にかその数は増え、心が荒み、逃げ出してしまった。

 そう考えると、途端に自分が情けなってしまう。


「私は……神子、失格なのかもしれません……」

「なんで、そう思うの?」

「私は神子なのに、人々の身よりも自分の心を優先してしまったから……」


 泣きそうな顔で俯く神子。

 だが、まとめ役の少女はそれを否定する。


「それは当然でしょう? 聖女だろうと神子だろうと、心が傷ついて平気なはずないでしょ? 自分をすり減らしても、自分のためにはならないわ」


 自分もそうだったから。

 でも、それは違うと教えてもらったから。


「だから、自分を大切にね?」


 そう言って、彼女との他愛ない会話は終わった。

 けれども神子の心にはしっかりと、彼女の言葉は刻まれた。


 その後、しばらくして、一人のハイエルフが尋ねてきた。

 彼は初代神子の知り合いで、初代勇者と共に初代魔王を退治した賢者と名乗った。

 彼は出会い頭にこういった。


「今、王国は滅びの時を迎えようとしている。まぁ、近いうちにトドメは刺されるが、そのトドメで余計なものまで復活しそうなんだよ」


 なんでも、王国の王城の地下には初代勇者パーティーが命がけで封印した魔獣が眠っており、それが近いうちに破られそうだと言う。


「多分、復活したら大陸一つくらい余裕で滅ぶわ」

「それは……まずいんじゃ……」

「うん、まずい。まぁ、王国が滅んでも別にいいんだけどな」

「えー……」


 ぶっちゃけすぎである。

 だが、初代賢者は「まぁ、文明が滅ぶのは勘弁なんだわ」と我儘染みたことを言いながら「めんどくさいけど、倒すの手伝って」とか抜かしてきた。


「封印で大分弱まって、人類の中には色々規格外が生まれつつあるから、今ならいけそう」

「えー……」


 割と見切り発車である。

 現在、王国では魔王襲来の折の対応の悪さで、国中から顰蹙を買い、革命が勃発しつつあった。

 その中には初代神子の加護により、色々規格外の力を手に入れた者もいるらしい。

 だが、それでも足りないらしい。


「そこで、お前の力を借りたい」


 曰く、神子の力と引き換えに、更なる力を戦士たちに分け与えることができる秘術を生み出したそうだ。

 なので、神子の力ちょーだいって訳だ。


「まぁ、無理にとは言わん。最悪、俺が命がけでなんとかしてやらなくもないが……やっぱり、正直、死にたくない」

「えー……」


 ぶっちゃける初代賢者。呆れる神子。

 こんなんでよく初代魔王を倒せたな。


「正直死にたくない、生きたい。ハイエルフの国の連中が地獄の苦しみを味わった末に、死んでいくのを見るまで死にたくない。面白おかしくいきたい」

「えー……」


 ぶっちゃけまくる初代賢者に、ドン引きする。

 曰く、閉鎖的なハイエルフの国でライトエルフとの混血児として生まれた彼は迫害されて生きてきたらしい。

 その後、奴隷に落とされ、王国で散々な目にあったらしい。


「なので、神子の最後の務めってことで、なんとかしてや」

「えー……」


 軽い。アルゴンよりも軽い。

 私の周り、こんなんばっかりか?

 そう思いつつも、神子は大陸の危機を見過ごせるほど、身勝手ではなかった。

 それに、もし自分の力で誰か救えるなら。

 そう思い、神子は革命軍へと参加した。




 そして、現在。

 神子は残された力を使い、危機的状況を打破しようとしていた。


『――皆様、聞こえますか?』

「ッ!? この声は!?」

「神子様だ! 神子様の声だ‼」


 魔獣と戦う革命軍の脳裏に、神子の声が直接伝わってきた。


『皆さま、私は我が身可愛さに、神子の務めを放棄いたしました。そのことは紛れもない事実です。ですが、最後に一つだけ、お願いがあります。決して諦めないでください……ッ‼』


 神子の切なる想い。逃げ出した分際でどの口が言うか?

 身勝手なことを言うな。

 そう言われても仕方ないと、神子は思った。


 それでも、神子は願った。

 革命軍の勝利を。前に向かおうとする人々の明日を。

 だからこそ、神子としての力をすべて解き放とうとしていた。


『今から、私の力のすべてを皆様に託します。最後まで不甲斐ない神子で申し訳ございません。ですが、何卒、何卒、諦めないでください――ッ‼』


 その声が途切れた瞬間、革命軍の戦士たちの体が淡い光に包まれた。


「こ、この光は……‼」

「神子様が力を与えてくれたのか!?」


 神子より託された力。彼女の葛藤と決意を受け取ったすべての革命軍戦士たちは確信した。


 ――これなら勝てるッ!と。


『いくぞ! みんなぁぁぁぁぁぁ‼』

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼』


 復活した革命軍たちは魔獣に向かって、再び攻撃を開始。すると、どうだろうか?

 先ほどまでまったく効果がなかったはずの攻撃に、魔獣が苦しみ始めたのだ。


「神子様の力と覚悟、確かに受け取った‼ いくぞ! 村超! 町超‼」

「「応ッ‼」」


 そう言って、二人の戦友の肩に市超が飛び乗り、そのまま回転。

 ギュォォォォォンと巨大な竜巻を生み出す。


「「「最終奥義“|地意気合併ッ‼」」」


 さらに負けじと、他の革命軍も己の持てる技を組み合わせ、攻撃‼


「いくぞ! 豆腐屋!」

「俺たちの想い、受け取りやがれぇ‼」

「応ッ! 八百屋! 魚屋‼」

「硬度10a! 豆腐ハンマー改‼」


 二人から投げつけられた生姜・ネギ・鰹節。

 それを組み合わせた豆腐を豆腐屋が振り上げ、叩きつける。


「係長! 俺たちも行きましょう!」

「だ、だが、私はもう、足が……」

「ならば、私が補助しよう!」

「「社長‼」」


 足を負傷した営業職を元ひきこもりの新入社員が助け起こし、さらに社長がその輪に加わる。


「私だけではない! 他のみんなも、画面越しに応援してくれているぞ‼」

『そうだぜ! 係長‼』

『俺たちの企画想い受け取ってくれ‼』

『これがリモートワークの力だぁぁぁぁぁ‼』


 すると通信水晶越しに映し出された社員たちから、エネルギーが送られ、三人に直撃。

 エネルギーは光の翼と化して、装着される。


「我が企業は世界に羽ばたく‼」

「輝け‼」

「聖・輝翼シャイン‼」


 凄まじい光の奔流を纏いながら、三人はそのまま魔獣へと突撃した。



「くそぉ! 俺たちのマシンが……ッ‼」

『エネルギー低下、活動不能!』

「諦めるな! まだ手段はあるはず……ッ!?」


 いかに神子の力を得ようと、流石にロボットまでのは回復しない。

 しかし、搭乗者は諦めず、マニュアル捜査に切り替え、懸命に動かそうとする。

 その願いが通じたッ‼


「うぉぉぉぉぉ‼ ニールソン家秘伝の雷魔術を見せつけろぉぉぉぉ‼」

「これが終わったら、お義兄様を迎えに行くんですッ‼」


 革命軍に加わっていた名門魔術師の一家による雷魔術が、ロボットたちを活動可能となるまで充電する。


『エネルギー回復! システムオールグリーン! 起動完了‼』

「よしっ‼」

「ご協力感謝する‼」

「やってやる! やってやるぞ‼」


 完全にエネルギーが回復したロボットたちは再度立ち上がり、それぞれが必殺技を放つ‼


「くそっ! 僕もなんとかしないと!」


 そう言って、メンコを握りしめる少年が自分の無力さを噛みしめていると……


「!? これは!?」


 突如、空から大気圏を突破する勢いで飛行。一枚のメンコが少年の手に納まった。


「これは、兄さんの!?」

「ふっ、あいつめ……粋なことをしやがる」


 今は遠くにいる好敵手の存在を感じ、駄菓子屋は静かにほほ笑んだ。

 少年は兄より託されたメンコを掲げ、魔獣目掛けて叩きつけた。


「はるか地よりいでよ! 因果律を越えし伝説のメンコ獣! レトロニック・レジェンドドラゴン‼」


 新たなる相棒を前口上と共に召喚!

 現れたメンコ獣は魔獣へと襲い掛かった。



「まだまだいくぞ! マッスルビーム‼」

「ゆっくん!」

「ぴぎぃ‼」

「ウホッ‼」

「ワシの髪を喰らええええええ‼」



 数多の猛者の放つ必殺技を叩き込まれ、遂に魔獣は体勢を崩した。



「■■■――ッ!?」



 さらに、追撃を叩き込む者が一人!


「いいよいいよ~! ナイスリアクションだよぉ~‼」


 ――そう、伝記師である。


「だけどもう少しインパクト欲しいなぁ~……よし! 吊ろう‼」


 そう言って、伝記師が指を鳴らした瞬間、魔獣の身体をどこからともかく現れた何本ものワイヤーが縛り付ける‼


「■■■――ッ!?」

「おK! ナイスリアクション‼ そして――ッ‼」


 そして、思い切り地面に叩きつけられた瞬間、魔獣の肉体が爆破される。


「■■■!?」

「ドッキリ大成功☆」


 火薬により、巻き上がる粉塵と炎に視界を塞がれる。

 そして、ようやく晴れたその時には――


「終わりにしよう……‼」

「貴様の狼藉もここまでだ‼」


 ――革命軍を指揮する二人。

 最強の勇者・アレックスと魔王・ホワイトの姿あった。


「「はあああああああああ‼」」


 二人の掲げる剣に収束する光と闇の力。

 それに神子の力が加わり、強大な力の奔流となる。


「これで!」

「終わりだぁぁぁぁぁぁ‼」


 阿吽の呼吸で放たれた強大な斬撃。

 魔獣は迎撃するために熱線を放つも、二人の信念を掲げた一撃に押し負け、一刀の下に切り捨てられる。


「――――――ッ!?」


 敗北を信じられない。

 そう言わんばかりの咆哮を上げるも、やがてそれはか細く消え……



「――――」



 やがて黒い粒子となって消滅した。


「勝った……」


 祈りを終えた神子が、魔獣が消滅したのを見届けると同時に、呟いた。


 もう、誰も敵わない。誰もが、そう思っていたのに、絶望を覆した。


「勝った……俺たち、勝ったんだぁぁぁぁぁぁ‼」


 沸き上がる歓声。

 喜びは連鎖し、王都は遂に危機を脱したのだ。


 圧制から解放された人々の笑顔を見て、神子は――神子と呼ばれた少女も微笑みを浮かべた。




 こうして、ザマーサレル王国は滅びの時を迎えた。

 王国は勇者アレックスを新たな国王に据え、グランアステリア王国へと名を変える。

 腐敗した聖天教団を廃し、人魔教団を国教と変えたこの国は、様々な種族・民族の技術を得て発展。大陸一の大国へと変わっていくのであった。



 その中で力を失った神子は、人魔教団の洗礼を受け、巡礼の旅にでたと言う。

 彼女の旅路に幸あれ。



 ちなみに、ことの発端である王子はと言えば……



「だ、誰か、助けてくれ……」


 生きてた。瓦礫の下敷きになっていたがなんとか生きてた。


「あ、あそこで誰か生き埋めになってる!」

「聖女、回復よろ!」

「はい‼」


 そこへ、けが人の救助を行っていたパーティーに助けられたが……


「この怪我を治すには10億懸かる‼」

「そ、そんなの、国も亡んで城も壊れて払える訳が……」

「なら、無理だな」


 ……聖女の召喚した黒い医者にオペを断られてしまった。

 結果、心身ともに再起不能となった王子に行く末は、誰も知らない。




【CAST】

【盗賊ですが勇者パーティーを追放されました。と思ったら……】

ゆっくん/盗賊

武闘家

れおんはると/姫騎士

魔術師


【追放した魔物使いが戻ってきてくれました。しかし……】

スラ太郎

ゴー太郎


【追放した付与術師が最後にいい仕事してくれた。してくれたんだが……】

付与術師


【追放された鍛冶師ですが――!】

勇者・アムゥロ

魔王・ラキマヤト

鍛冶師


【追放された遊び人は転職して戻ってきました。だがしかしッ!】

賢者ゴリ(元遊び人)


【追放される商人ですが、俺……なんか……やっちゃいました……】

国売りシスター・クロ(聖女)


【勇者ですがパーティーを追放されました。その後……】

パン屋

花屋

文具屋

駄菓子屋


【伝記師ですが追放されました。何故だ!? 何故なんだッ!?】

勇者

新・伝記師


【薬剤師ですが、追放されました。どうして……どうしてこうなったんだぁぁぁぁぁ!?】

魔術師・増毛のハエール


【鑑定士ですが追放前に一仕事。】

三馬鹿(勇者・盗賊・武闘家)

鑑定師


【呪術師ですが勇者パーティーを追放されるそうです。でも……】

呪術師パーティー


【村人ですが幼馴染の聖女から追放されました。その後……】

人魔教団のまとめ役/イリス

マカオ

ジーク

クリストファ


【追放されたおっさんはスローライフを送っております。そう”スロー”ライフです。】

おっさん

暗黒将軍


【追放される貴族の三男ですが、家族が……】

ニールソン一家


【聖女を追放するらしいが、本当に悪いのは?】

勇者

聖女

あの医者


【追放されたら、勇者たちが本気だしてきました……】

邪竜殺しの勇者・アレックス

漆黒の魔王・ホワイト

異世界の格闘家・黒木光太郎


【吟遊詩人を追放する! いや、だってさぁ……】

吟遊詩人

勇者


【神子が追放され、国が滅ぶまで】


・当代神子 83/55/84

 ブラックな労働環境で健気に頑張っていた少女。

 本来なら村娘として一生を送るはずだったが、何の因果か、神子に選ばれてしまい、親元から引き離されてしまった。

 その後、厳しい修行と過酷な任務、貴族からの嫌がらせに権力争いに巻き込まれ、心身ともに疲労。今回の追放騒ぎでトドメをさされた。

 しかし、教皇の計らいで訪れた人魔教団の隠れ里で、イリスのカウンセリングを受けたことで、自身を見つめ直し、最終決戦に同行。見事、最後の神子としての務めを果たした。

 革命後、人魔教団の教えを広めるために洗礼を受け、巡礼の旅に出た。彼女の人生に幸あれ。


・大司教 94/57/95

 聖天教団の大司教で、神子の教育係。

 夫と娘を流行り病で亡くして以降、祈りを捧げる日々を送るも、元々有能なためとんとん拍子に出世した過去を持つ。

 亡き娘とうり二つの神子の母親代わりとして、親身になっていた為、今回の追放には当然、ブチギレた。

 革命後、神子の旅路に同行する模様。


・教皇

 若くして教皇の座に登り詰めた凄腕の聖職者。

 普段はチャラいが、やる時はやる男。

 元々は信仰に厚い真面目な人物だったが、当時恋仲だった神子が、激務で倒れこの世を去って以降、今のような性格になった。

 最早、腐敗が進んだ聖天教団には見切りをつけていた為、神子を追放するついでに、潰すために暗躍した。

 革命後は人魔教団の洗礼を受け、一聖職者として信仰に生きている。一応。


・第二王子

 ザマーサレル王国の第二王子。

 元々聡明だったものの、側室の子であったため、発言権・継承権はなかった。

 しかし、日々、堕落の一途を辿る国を憂い、革命軍に協力する。

 革命後、復興に尽力するも、王家の暴虐の責任を取るため、自ら断頭台に上り、この世を去った。

 最後まで堂々とした最後に、死を惜しむ人間は多かったと言う。


・初代賢者

 初代魔王を倒した勇者パーティーのメンバー。

 ハイエルフとライトエルフのハーフで、ハイエルフの国では奴隷として生きてきた。

 故にハイエルフの国に嫌気がさし、脱走した過去を持つ。

 初代勇者が命がけで封印した魔獣が目覚める兆候があった為、神子に協力を求め、今度こそ滅ぼすために行動を開始。

 革命後、とある魔術学園の教員として働くと言うが……?


・その他の革命軍の皆様

 基本的にやりたい放題である。ノリと勢いで生きてる。


・メンコを継承せし少年

 駄菓子屋に助けられた少年。かつて悪の組織【デスメンコ団】を壊滅に追いやった末、宇宙からのメンコ決闘者たちと終わらない戦いを繰り広げる道を選んだ兄を持つ。

 革命後、兄の手がかりを探すべく、新たなるメンコ決闘者として、修行の旅に出る。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神子が追放され、国が滅ぶまで @Jbomadao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ