第15話 何処かで見覚えが?(4)

 そう、先程から赤い何かを? 片手に持ち振り回している。巨大な『その者』の口からも落雷、雷のような怒声が放たれている。いるのだよ。


 僕が、己の無い肩を竦むぐらい大きな音、声音の怒声が放たれ続けたのだ。


「くそ~。お前等~。蠅の分際で~。あっち、あっちに行けよ~。今直ぐに~」と。


 するとさ? 僕達蜜キンカンが盛られている大きな竹細工の篭から。付近から。蠅王ベルゼブブの容姿、姿。『ブ、ブブブ~。ブゥ~ン。ブゥ~ン』の音。羽の音がしなくなった。


 だから僕は、『ホッ』と安堵。己の胸を撫で下ろすのだよ。


「よかった。よかったよ」と、己の口から声も漏らしながら。



〈ブゥ~。ブゥ~ン。ブ、ブゥ~ン〉



 ……ん? 何? この音? この音は……と、いうか? 翼、羽を羽ばたかせ、動かす音──。


 それも? 己の身体を静止させる羽の音だと。僕は何故か思ってしまったのだ。……だけならば、いいのだが。


 僕は、その翼、羽の音がなる方へと視線を変えてしまう。しまったのだ。


 すると、羽の音を力強く出す物、主と目が合う。合ったのだ。と、同時に僕は、己の生唾を『ゴクン』と、喉を鳴らしながら二見込み、緊張……だけでなく。その物、羽の音を出す物の容姿を僕は凝視して畏怖。震え慄くのだった。



 ◇◇◇◇◇



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