第35話 1月30日②

 

 ショッピングモールを後にした俺たちはお昼ご飯を食べるためにラーメン屋に訪れていた。


「正彦君は何ラーメンにする?」

「味噌一択ですね」

「正彦君は味噌ラーメンが好きなんだ!」

「ですね。澪さんは?」

「私は、そうだな~。辛いのは苦手かな。あとはどれも同じくらい好きかも!」

「澪さん甘党ですもんね」

「そうそう! 甘いのは得意なんだけどね。辛いのは苦手~」


 そんな澪さんは醤油ラーメンを俺は味噌ラーメンを注文した。

 

「この後はゲームセンターに行くんですよね」

「だね。前回のリベンジをしたい!」

「あれから行ったんですか?」

「全然行ってないんだよね~」

「澪さん多忙ですもんね」

「そうなんだよね~。週末は正彦君と一緒にいることに時間使いたいし!」

「嬉しいこと言ってくれますね」

「まぁ、四月からは平日も一緒に入れるようになるけどね!」

「そうですね。楽しみですね」

「ね! 楽しみだよね!」


 俺が卒業したら同棲をしようと決まったのは昨日のことだった。

 お互いにテンションが上がっていて、付き合った流れで決まった。

 なんなら、その日のうちに澪さんは家まで決めてしまっていた。 

 そして、今日に至るという感じだ。

 とんとん拍子に決まってしまっていたが俺は澪さんとの同棲生活が純粋に楽しみだった。


「今更だけど、勢いで決めちゃって大丈夫だった?」

「ほんと今更ですね。もちろん大丈夫ですよ。家も大学に近いところを選んでもらいましたし、それに遅かれ早かれいつかは同棲することになるんでしょうから。澪さんならそうするでしょ?」

「へぇ~。正彦君も私のことが分かってきたね~」

 

 澪さんは嬉しそうに頬を綻ばせた。

 俺が「少しだけですけどね」と言ったところでテーブルにラーメンが運ばれてきた。 

 澪さんは髪の毛がラーメンにつかないように後ろで一つにまとめた。

 割り箸を綺麗に割った澪さんは「少しずつでいいんだよ。そうやって分かり合ていくんだから」と言ってラーメンを一口啜った。

 その姿が色っぽく思わず見惚れてしまった。


「うん! 美味しい! ほら、正彦君も私に見惚れてないで食べな!」

 

 どうやら見惚れていたのはバレていたらしい。

 俺は少し恥ずかしくなって、急いで割り箸を割ってラーメンを啜った。

 急いで割ったので俺の割り箸はガタガタだった。


「こっちの味噌ラーメンも美味しいです」

「一口ちょうだい~」


 そう言って澪さんはあ~んと口を開けた。

 もちろんそれに慣れていない俺は少し戸惑っていた。


「これくらいで戸惑ってたら先が思いやられるんだけど~。これからあ~ん、なんて何万回もするんだよ?」

「そ、そうですよね……」


 てか、ラーメンのあ~んってむずくね?

 

「澪さん」

「何?」

「ラーメンのあ~んって難しくないですか?」

「確かに言われてみればそうかも」

「レンゲ使ってもいいですか?」

「もちろん。いいに決まってるじゃん」

「じゃあ……」


 俺はレンゲを使って澪さんにあ~んをした。

 

「味噌も美味しいね~! はい、醤油食べる?」

「いただきます」


 澪さんが俺と同じようにあ~んをしてくれていた醤油ラーメンを食べた。

 慣れるまで時間がかかりそうだな、と思いながら「醤油も美味しいですね」と澪さんに感想を告げた。

 その後もラーメンを楽しく食べた俺たちはラーメン屋を後にして次なる目的地のゲームセンターへと向かった。


☆☆☆

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