第二章

第34話 1月30日①

 昨日、澪さんに告白をして晴れて恋人同士になった俺たちはさっそくデートをする約束をしていた。

 そろそろ澪さんが家に到着することだろう。

 そう思った矢先、呼び鈴が鳴った。

 

「はーい」


 玄関に向かい扉を開けると大人びた赤色のワンピースを着た笑顔の澪さんが立っていた。


「おはよう正彦君!」

「おはようございます澪さん」

「んーいい! この感じいい! 恋人になったって感じがして最高!」


 少し照れくさいけど、澪さんのその気持ちは分かる。

 名前で呼び合うって特別な感じがする。

 だから、ついつい嬉しくてニヤけてしまう。

 本当に澪さんと付き合ってるんだなって実感する。


「正彦君もそう思うよね?」

「ですね。この顔見たら分かりません?」

「嬉しそうにしちゃって、このこの〜!」


 そう言って澪さんは俺の横腹を肘でつついてきた。

 

「嬉しいに決まってるじゃないですか。それと、その服可愛いですね」

「え、あ、ありがとう・・・・・・」


 昨日、澪さんに告白して、俺の中の何かが変わったのは確かだった。

 おそらくそれは自分の気持ちに素直になれるようになったこと。素直な気持ちを言えるようになったことだ。


「もぅ、不意打ちで可愛いなんて言うからビックリしたじゃん!」

「すみません」

「嬉しいからいいんだけどね! さ、行こう!」


 澪さんは少し頬を赤くしつつ、俺の手を握るとピンク色の愛車の元へと向かった。

 今日のデートコースはまずショッピングモールに行き、そのあとはゲームセンターで前回のリベンジをする予定になっていた。

 ということで、澪さんの運転でショッピングモールへと向かった。


「買うものはあらかたリストアップしてきたけど、他にも欲しい物があったら言ってね」

「了解です」

「じゃあ、まずは家電から見に行こう~」

「本当に全部買い替えるんですか? 澪さんが今使ってるのを使ってもいいんですよ?」

「それも考えたけど、やっぱり新生活だし、正彦君と一緒に暮らすことになるわけだし、どうせなら正彦君と一緒に選びたいなって」


 そんな懇願するような瞳で見つめられたら俺は頷くしかなかった。


「まぁ、澪さんがそう言うなら俺はいいんですけど……」


 多少もったいない気はするが、澪さんがお金を出してくれる以上は澪さんの意見に従わないといけないだろう。

 

「じゃあ、まずはソファーから選びにいこっか!」

「了解です」


 というわけで、今日は四月から同棲を始める準備のための買い物だった。

 家具のコーナーに向かってどのソファーがいいかと二人で品定めをする。


「やっぱりさ、寝転べるくらいのがいいよね」

「俺は澪さんが決めたものならなんだって文句はいませんよ」

「もぅ! ちゃんと正彦君も意見を出して一緒に使うんだから!」

「でも、お金を払ってもらうわけですから選ぶ権利は澪さんにある……」

「だ~め! ちゃんと一緒に決めるの!」


 澪さんは頬を膨らませて俺に迫ってきた。

 俺に有無を言わせないといった感じだ。


「わ、分かりました。ちゃんと考えます」

「うんうん! 一緒に考えよ!」


 嬉しそうに微笑んだ澪さんとああでもないこうでもないと意見を言い合いながらソファーを決めた。

 それから、数点の家電を決めた俺たちは今日のところはこの辺でとショッピングモール後にした。


☆☆☆

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