第31話 1月25日 幕間【ある計画のために】
1月25日
「どう? 決まった?」
「まだ悩み中です」
俺は今「ムーンライト」にやってきていた。
あの日以来、すっかりとここの常連となった俺は現在カウンター席に座って頭を悩ませているところだった。
悩んでいるのはもちろん白星さんのこと。
「何あげたら喜んでくれるんでしょうか」
「そんなに悩まなくても川崎君が澪にあげたいものをあげればいいと思うわよ」
「でも・・・・・・やっぱり、あげるからには喜んでもらいたいじゃないですか」
「その気持ちは分かるわよ。でも、あの子なら川崎君があげたものならのんでも喜ぶと思うわよ。ね、美夜妃ちゃん」
「そうですね。澪先輩なら、なんでも喜びそうですね。それにしても、川崎から恋愛相談を受ける日が来るとは思ってなかったわ」
隣の席でコーヒーを優雅に啜った月城先輩はそう言うと優しく微笑んだ。
「しかもその相手が澪先輩だなんて、予想外すぎ」
「俺だってこんな日が来るなんて思ってもいませんでしたよ」
誰かを好きになって、告白するなんて想像もしていなかった。
それこそ、誰かを好きになったり、自分から告白したらするような性格ではなかった。
むしろ、悟と同じタイプで教室の隅で1人でいることを好むようなタイプだった。
そんな俺を変えてくれてたのは、鋼であり、龍一先輩であり、月城先輩であり、ボランティア部の先輩たちであり、これまでに関わってくれた人たちだ。
そういった俺の人生に関わってくれた人たちのおかげで今の俺がいる。
「初めて会った時は私の目を見て話すことすらできてなかったものね」
「月城先輩のその月のように綺麗な瞳を長時間見つめられるのなんて世の中の男の中で龍一先輩くらいなものだと思いますけど?」
月城先輩の顔を見慣れている俺ですら3秒以上見つめるのは無理だ。
だから、月城先輩と話すときはいつもその瞳から少し視線を外して話をしている。
「あら、口まで達者になったじゃない」
「事実を言っただけですよ」
「ありがと。とにかくたくさん頭を悩ませて、考えなさい。そうやって考えた時間もいつかは川崎の財産になるから。ま、ちゃんと澪先輩と結ばれたらだけどね」
月城先輩はニッと小悪魔な笑みを浮かべると残っていたコーヒーを一気に飲み干し、立ち上がってコートを羽織った。
「じゃあ、私は仕事があるのでこれで。当日は私も行くから。しっかりと見届けてあげるわ。川崎が澪先輩と結ばれるところをね」
そう言った月城先輩は、今度は、まるで俺と白星さんが結ばれるのは確定事項、とでもいうような天使の微笑みを俺に向けると、会計を済ませスタスタと歩いてお店から出て行った。
「相変わらずマイペースね。美夜妃は」
「ですね」
「それにしても、澪の心を射止める人が現れるとはね」
月森さんはしみじみとそう言うと俺のことを見た。
「な、なんですか・・・・・・?」
「澪のこと泣かせたら許さないからね?」
「・・・・・・もちろん分かってますよ」
「ならいいわ。澪のことは川崎君に任せる。あの子じゃじゃ馬だからしっかりと手綱を握っててあげてね」
ふっ、と微笑んでそう言い残した月森さんは厨房に行った。
1人になった俺はそれからコーヒが冷めるまで白星さんに渡すプレゼントについて考え続けた。
☆☆☆
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