第24話 1月19日 幕間【怪盗が現われた】

1月19日


 その日の新聞一面を飾ったのはある怪盗だった。


「最近そいつよく新聞に出てるよな~」

「だな。怪盗KK。その正体は未だに不明。100以上の声と顔を操る変装の名人。今回はブルーダイヤモンドを盗むか」

「これで何回目だ?」

「この新聞によると10回目らしいな」


 怪盗KKが宝石を盗んだのはこれで10回目。

 うち5回が月城財閥から。

 この怪盗KKと月城財閥はなぜかいつの間にかライバル関係のようになっていた。

 

「何が目的なんだろうな?」

「さぁな、ただ盗みを楽しんでいるのだけなのだか、それとも何か目的があって盗みを働いているのか」

「どっちなんだろうな。てか、この怪盗、案外高校生だったりしてな」

「正彦。それは某有名探偵の漫画に出てくる怪盗だろ」

「あのキャラかっこいいよな~」

「俺はトリプルフェイス推しだな」

「あの人も最高にかっこいいな」

「正彦はあの漫画に出てくるキャラどれも好きだろ」

「まぁな!」


 あの漫画は俺の1番好きな漫画だ。

 もちろん家に全巻揃っているし、何度も読み返している。

 そのくらい好きな漫画だ。


「そういえば、試験はどうだったんだ?」

「それを俺に聞くのか?」


 鋼は自信たっぷりな笑みを俺に向けてきた。

 どうやら愚問だったらしい。


「もちろんバッチリだったさ、自己採点ではな」

「そうか。お疲れ」

「サンキュ!っても、まだ本試が残ってるけどな」

「鋼なら大丈夫だろ」

「まぁ、いつも通り頑張るわ」


 鋼が気の抜けた感じでそう言うと「先輩たち〜」と桃空の元気な声が聞こえてきた。


「お待たせしました〜。最後の1人連れてきましたよ〜」

「おっ!マジか!」


 桃空の後ろにいる生徒を俺たちは見た。

 そして、驚いた。

 2年生にいるのは知っていたが、まさかな・・・・・・。


「桃空、入部希望者って彼女?」

「です!あれ?もしかして、美夜子ちゃんのこと知ってる感じですか?」

「知ってるも何も・・・・・・」

「お久しぶりです。川崎さん。山崎さん」


 俺たちに丁寧に頭を下げた彼女の名前は月城美弥子つきしろみやこ

 月城先輩の妹さんだ。

 美弥子ちゃんとは、学校ではあまり話したことがないが、月城先輩の家に遊びに行かせてもらった時に何度か話をしたことがある。


「久しぶり。この前お姉さんに会ったよ」

「聞いてます。川崎さんにリベンジできたって電話かけてきましたから」

「そっか」

「正彦が月城先輩に会った話も気になるが、今はこっちだな。それで、本当に美弥子ちゃんはボランティア部に入るの?」

「はい。そのつもりです。姉が残したてきたものをなくすわけにはいきませんから」


 それは俺も鋼も同じ気持ちだった。

 

「そっか。俺たちとしても入部してくれるなら、有難いからな。じゃあ、残り少ないけどよろしくな」


 鋼が美弥子ちゃんに手を差し出した。

 その手を美弥子ちゃんが握る。

 これで、3人目の部員を確保できたことになる。

 何とか龍一先輩に面目が立つかな。

 

「よろしくね。美弥子ちゃん」

「はい。よろしくお願いします」


 美弥子ちゃんは少しだけ微笑んで頭を下げた。

 

「そうそう!ちょうど月城財閥の話をしてたんだよ!ほら、これ」

 

 鋼は俺の手から新聞を奪うと美弥子ちゃんに見せた。


「ああ、彼ですか」

「5回も狙われるなんて大変だな〜」

「お祖父様が怪盗kkに挑戦状を出してしまいますからね」

「そうなんだ」

「はい。最初だけは、怪盗kkの方から予告状が届いたのですが、それで宝石を奪われてしまったお祖父様の負けず嫌いに火がついたみたいで」


 なるほど、月城先輩のあの負けず嫌いの性格はお祖父さん譲りというわけか。

 

「まぁ、いまだに1度も勝ててないんですけどね」


 美弥子ちゃんは呆れた口調でそういうと苦笑いを浮かべた。


「どうせやるなら徹底的に叩き潰してもらいたいものです」


 あ、美弥子ちゃんもそっち側か・・・・・・。

 ボソッと呟いたその一言でそう思った。


「といわけなので、これから色々と教えてください」

「俺はまだしばらく受験勉強があるから、綺羅ちゃんたち同様、分からないことがあったら正彦に聞いてくれ」


 そう言って鋼は俺の肩をポンっと叩いた。


「分かりました。では、よろしくお願いします。川崎先輩」

「うん。よろしく」 

  

 これから何かと忙しくなりそうだな。

 といってもボランティア部のやることはただ一つ。 

 人助けをすること。

 それだけなんだけどな。

 図書室から出ていく2人の背中を見ながら俺は微笑んだ。

  

☆☆☆


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