第15話 

「ということが実はあってですね……」

『へぇ~。よかったじゃない!だから言ったでしょ諦めたらダメだって!』

「ですね。まぁでも、最後の1人はまだどうなったか分からないんですけどね」

『きっと大丈夫だって!もし無理だったら無理で、また新しい人を探せばいいじゃない!』

「まぁ、それもそうですね」

『そうそう!気楽にいこうよ!2人確保できただけでも進展じゃない!』


 昨日に引き続き、鋼と悟とゲームをした後、白星さんと『スターライト』をプレイしていた。

 そして、ボスモンスターを狩りながら、昼間のことを白星さんに話しているところだった。

 

『あっ!レアドロ来たー!やった!これで新しい武器が作れる!』

「よかったですね」

『ありがとう!昨日も思ったけど、正彦君本当に上手だね!』

「ゲームの中だけは腕っぷし強いので」

『ゲームが上手な人好きだな〜私』


 白星さんはボソッと呟いた。


「そんな人、白星さんの周りにはたくさんいそうですね」

『ん〜。正彦君くらい上手な人はいないかな〜』

「俺なんてただのゲームオタクなだけですよ?」


 俺が自傷気味に言うと、白星さんから相変わらずの自論が返ってきた。


『いいじゃん、オタクでも。私もオタクだし!ゲームオタクでスイーツオタク!てか、世の中の人はみんな何かしらのオタクでしょ!好きなこと=オタクなんだから。好きなことがない人なんていないわよ。みんな何かしら自分の中で好きを持って生きてるんだから!』


 好きなこと=オタクか。

 スマホで検索してみると、オタクとは自分が好んでいるものや興味を持っていることに対して、一般よりも深く愛好する人のことらしい。

 つまり、極端な話。

 白星さんの自論によると家族が好きな人は家族オタクだし、恋人が好きな人は恋人オタクし、それこそゲームが好きな人はゲームオタクになるわけだ。

 

 それを頭では分かっていても自分は違うと言い張る人がたくさんいる。

 オタクという言葉の持つイメージが嫌なのか、自分がオタクだと思われたくないのか、認めたくないのか。

 今も俺はその1人だ。

 だから、「ただのゲームオタクなんですけどね」と自傷気味に言った。

 だけど、白星さんは自分がオタクであることを認めて、自信満々に言い切った。

 

 もしかしたら、それが人間の本来あるべき姿なのかもしれないと思う。

 自分の好きなことを堂々と胸を張って言う。

 それは、なかなか難しいことで、やろうと思っても簡単にできることではない。

 それができずに苦しんでいる人がたくさんいる。

 だから俺は、それをいとも簡単にやってのける白星さんに憧れを抱いてしまった。

 その結果、口から「俺も白星さんみたいに生きれたらな」という言葉がいつの間にか零れ落ちていた。

 その言葉はしっかりと白星さんの耳に届いたらしく『何言ってんのよ』と言われた。


『正彦君はもう立派に生きてるじゃない。人助けを自ら率先して行うなんてなかなかできないことなんだからね!前も言ったけど正彦君はもっと自分に自信を持っていいのよ!それから、ゲームが上手なことも誇っていいことなんだからね!』


 なぜだろうか。

 白星さんの言葉も、もの凄く心に響く。

 やっぱり自分の心に素直に生きてる人の言葉は心にに響くんだな。

 龍一先輩や鋼の言葉がそうであるように。

 俺の言葉は誰かの心に響いてるのだろうか。


『もしもそれでも自分に自信が持てないっていうなら、私が何度でも言ってあげるから!よし、真面目な話は終わり!』


 そう言って手をパチンと叩いた白星さんは『ところでさー。今週の土曜は暇?』と聞いてきた。


「土曜ですか。特に予定はないですね」

『よかったー!ねぇ、一緒にカフェ行かない?』

「カフェですか・・・・・・」

『そう!カフェ!実はね友達のお店が土曜日に2周年祭を開くことになってるんだー!それに一緒に行きたいなって思って!あ、もちろん正彦君に拒否権はないからね!私、正彦君の家知ってるから迎えに行くし!』

「じゃあ、なんで暇か、なんて聞いたんですか!?」

『ほら、一応確認的な?私だってそこまで鬼じゃないよ〜。予定がある人を無理やり連れていったりはしないから!」

「予定があるって言えばよかった・・・・・・」

『あー。そんなこと言っていいのかな〜。私の友達がしてるカフェ、実はゲーム&ブックカフェなんだよね〜』

「ゲーム&ブックカフェ・・・・・・」

 

 なんだそのいかにも楽しそうなカフェは!?

 興味しかない!?

 そんな俺の心を読んだ白星さんは『どう、興味あるでしょ?』と言った。

 電話の先でニヤニヤ笑っているのが目に浮かぶ。


「・・・・・・はい」

『じゃあ、決まりね!この前と同じ時間に迎えに行くから!』

「分かりました」

『さて、私はそろそろ寝ようかな〜。あ、そうだ。今週はちょっと忙しくなるから、土曜日までゲームできないと思う〜』

「了解です。アップデートがあるからですか?」

『正解!アップデート楽しみにしててね〜』

「はい。楽しみにしてます」

『おやすみ♡』

「おやすみなさい」


 


☆☆☆


次回からゲーム&ブックカフェ編

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