第14話
悟は苦笑いを浮かべて俺のことを見た。
桃空綺羅。
通称『ぼっちキラー』。
☆☆☆
2年生の桃空の噂は3年生の俺たちにまで届いていた。
『ぼっちキラー』。そう呼ばれている桃空はなんでも教室で1人浮いている生徒に積極的に話しかけて仲良くなるらしい。
なんとも不思議な子で、ボランティア部に是非とも入れたい子だった。
だから鋼は何度か桃空のことをボランティア部に誘おうとしたが、その度に興味がないと断られていた。
そんな彼女が悟と一緒にいる理由は、まぁそういうことだ。
悟は教室で浮いた存在だった。
もともとあんまり人付き合いが得意ではない悟は入学した当初いじめられていた。それを助けたのが俺たちで、それからは一緒にゲームをするような関係になった。
いじめはなくなったらしいが未だに悟は教室では1人でいるらしい。本人がそれを良しとしてるので、俺たちはそのことについては何も口出さなかったが、どうやら桃空に狩られてしまったらしい。
「ところで、正彦さん。土曜日に桃空さんのことを助けたって本当ですか?」
「んー。あれを助けたって言っていいのか分からないけど・・・・・・」
結果的に俺も助けられたわけで。
白星さんに。
あれを助けたと言っていいのか微妙なところだった。
「まぁ、桃空に会ったのは会ったな」
「そうなんですね」
「あの時は本当に助かりました!マジで困ってたので!」
「お、おう……」
ん?なんか一昨日とキャラ違くね?
一昨日はもう少し大人しそうな子だと思ったんだけどな。
「あの、悟から川崎先輩はボランティア部って聞いたんですけど本当ですか
?」
「そうだね」
「そうなんですね!これまで断り続けて今更こんなこと言うのなんなんですけど、私をボランティア部に入れてください!」
桃空のその言葉に被せるように鋼が「もちろん大歓迎だ!」と言った。
そんな鋼に続いて俺も「入ってくれるなら助かるな」と言った。
「助かるけど本当にいいのか?桃空さんは何部にも入ってないの?」
「私は帰宅部です!」
「それからもう一つ。ほとんど確定事項なんだけど、俺たちが卒業したらボランティア部は廃部になることが決まってるんだけど、それでもいいか?」
「え……それマジですか」
「マジなんだよね~。まぁ、桃空ちゃん以外にも2人入部してくれる生徒がいたら廃部は免れるんだけどね」
「2人ですか……」
桃空はそう呟くと悟のことを見た。
「1人は確定ね」
「え、僕?」
「そうよ!悟は確定!となると、あと一人か~。彼女を誘うかな~」
「ちょ、ちょっと待って僕が入る前提で話を進めないで」
「いいじゃん!どうせ悟も帰宅部なんだから!どうせ暇でしょ!」
「暇だけど……」
そんな2人のやりとりに俺は既視感を覚えた。
どうやら桃空は白星さんと同じ自分勝手な性格らしい。
てか、やっぱり一昨日の桃空とキャラ違うよな?
「じゃあ決まりね!ということなので、先輩方よろしくお願いします!」
「マジでいいのか?悟、大丈夫か?」
「こうなった桃空さんを止めることは不可能なので、仕方ありません」
「そっか。お前も苦労してんだな。まぁ、悟の性格は把握してるからそこは安心してくれ。無理させるようなことはさせないから」
「ありがとうございます」
「よし!これであと1人は入部してくれたら何とか廃部は阻止できそうだな!2人の入部歓迎会はまた後日取り行うから楽しみにしといてくれ!」
「マジですか!それは楽しみにしときます!あ、それからあと1人も期待しといてください!」
桃空は鋼にニコッと笑うとVサインを向けた。
「心当たりがあるんで!おそらく入ってくれるはずです」
「お、マジか!」
その笑顔に自信がみなぎっているとこから見ると、本当に心当たりがあるのだろう。
これはもしかするともしかするのではないか。
つい先日、鋼に部員探しを諦めないといった矢先のことだったので、若干驚いてはいるが、もしこのまま桃空がもう1人連れてきてくれたなら、ボランティア部は存続することができるかもしれない。
そう思ったその時、昼休憩の終わりを知らせる音楽が鳴り始めた。
「あ、そろそろ戻らないとヤバいじゃん!先輩連絡先だけ教えてください!」
ということで、桃空は俺と鋼と連絡先を交換すると悟と一緒に図書室から出ていき教室に戻っていった。
☆☆☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます