第13話 1月11日 幕間【桃空綺羅の入部】

1月11日


 三連休週明けの火曜日。

 時間的に今は1、2年は昼休憩。

 

「ふぁ〜」

「どうした、正彦。いつになく眠そうだな」

「まぁな。鋼たちとゲームした後、ちょっと付き合わされてな」


 なぜ俺がこんなに眠そうにしているかというと、それは昨日の夜、鋼たちと毎日恒例のゲームをした後に白星さんに一緒にゲームをしようと誘われたからだ。

 

「ほら、いつだったか話したろ?雪で立ち往生してた車を助けたって」

「あぁ、聞いたな」


 鋼にはまだ白星さんのことに関して何も言ってなかった。

 特に白星さんから口止めされてるわけでもないし、言っても大丈夫だろうと思った俺は白星さんが『スターライト』の生みの親だということを鋼に教えることにした。

 それに鋼に相談したいこともあった。


「その人、白星澪さんっていうんだけどな。実はスターライトの生みの親だったんだよ」

「・・・・・・」


 鋼は手に持っていたシャーペンを机に落とし、口を開けたまま俺のことを見ていた。

 その様子は2日前、俺が白星さんからそのことを聞かされたときの反応と同じのだった。

 さすがに俺はいきなり口にケーキを突っ込んだりしないがな。ケーキもないしな。


「やっぱりその反応になるよなー。俺も同じ反応したわ」

「いや、それ、どんな確率だよ!?」


 ここが図書室だということも忘れて鋼は大きな声を上げた。

 そんな鋼を注意しつつ「鋼。驚くのはまだ早いぞ」と俺は言って、真白さんが俺たちの先輩で、龍一先輩と知り合いだということを教えた。


「マジかよそれ・・・・・・あ、だから龍一先輩は俺たちにあのゲームを進めてきたのか」

「だろうな」

「やべぇな。たまたま助けた相手が、俺たちがどハマり中のスターライトの生みの親で、それを作ったのが俺たちの先輩で、龍一先輩とも知り合いでって、マジでどんな確率だよ。宝くじに当たるより凄くねぇか!?」


 宝くじか。

 確かにこの出会いは宝くじに当たるよりも凄いものかもしれない。

 昨日、1日。白星さんが経営している『ホワイトスター』について初めて調べたがとんでもない会社だった。 

 設立されたのは去年らしい。

 初めて世に出したゲームはもちろん『スターライト』だった。というか、それ以外は出してなかった。

 わずか1年で上場企業になった。

 年商は・・・・・・年末ジャンボの一等に何十回以上当選した額。

 従業員の数は50人以上。

 一等地のビルにオフィスを構えている。

 そんな会社に俺は誘われている。

 しかも社長から直々に。

  

「かもな。それで実は鋼に相談したいことがあるんだ」

「ん?相談?」

「実はな、その白星さんから・・・・・・」


 会社に来ないかと誘われてるんだ、と言おうとしたその時、「あ、本当にいた!」と誰かが言った。

 俺と鋼がその声のした方を向くと、そこには金髪のツインテールの美少女と悟が立っていた。


「悟と桃空さん」

「川崎先輩!土曜日はありがとうございました!」


 開口一番にお礼の言葉を言った桃空は俺に頭を下げた。

 その桃空の隣にいた悟は謝罪の言葉を口にしながら頭を下げる。

 

「すみません。正彦さん。桃空さんにここにいるだろうって言っちゃいました」

「いや、別にいいけど」

 

 対極的な言葉を言った2人は同時に頭を上げた。

 俺は悟のことを見て困惑気味に言った。


「えっと、とりあえず説明してもらえる?」

「はい。桃空さんとは同じクラスで、狩られる側と狩る側って関係です」

「何それ?いきなりそんなこと言われてもわけわかんないんだが?」

「正彦さんも桃空さんの噂は聞いたことありますよね?」

「まぁ、知ってるな。ああ、そういうことか」

「そういうことです」


 悟は苦笑いを浮かべて俺のことを見た。

 桃空綺羅。

 通称『ぼっちキラー』。

 

☆☆☆

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