第10話
「うっせぇ、俺と付き合えって言ってるだけだろ」
「無理だから!それに、しつこい!何度誘われても無理なものは無理だから」
「お前も強情な女だなー。俺と付き合えばメリットしかないっていうのに」
「あんたと付き合って何のメリットがあんのよ。それに私好きな人がいるから」
「そんなの知るか。俺には関係ねぇ。お前は黙って俺と付き合えばいいんだ」
「あんたの方がよっぽど強情じゃない」
視線の少し先、金髪ツインテールの女性とロン毛の男がUFOキャッチーの前でそんな話をしていた。
そして、ちょうど今ロン毛の男が金髪ツインテールの女性を壁ドンならぬ、UFOキャッチードンをしたところだった。
あんなのでトキメク女性がいるの・・・・・・。
「あれ、私もされたい!」
あ、隣にいたわ・・・・・・。
てか、いつの間に。
「白星さんはここにいてくださいね」
「なんでよ!私も行く!」
「ダメです。白星さんを危ない目に遭われせられません」
「心配してくれてるんだ?」
「そうです。だから、ここにいてください」
「あんな男1人くらいならどうとでもなるけど、正彦君がそう言うなら、分かった。私はここにいる」
「ありがとうございます。あんまりリアルの腕っぷしは強くないんですけど、行ってきます」
「えっ!ちょっと!?」
リアルの殴り合いは嫌いだ。
もちろん、そうならないのが一番なのだが、あの見るからにチャラいロン毛の男はゲームの中だと完全に敵役。
殴られるのも覚悟で俺は2人の間に割って入った。
「おい、そこの男!やめろっ!」
「はぁ、なんだてめぇ」
ロン毛の男が俺のことを睨みつけてきた。
「お、俺のことはどうでもいい。彼女、嫌がってるだろ」
「うっせぇ!お前には関係ねぇだろ」
「そうだな。関係ないよ。だが、困ってるやつを助けるのがボランティア部の宿命なんだ。だから、悪いが彼女のことを助けさせてもらう」
俺は震える足で金髪ツインテールの前に立ってロン毛の男に言った。
「はっ、偽善かよ。うぜぇな」
「ど、どうでもいいよそんなこと。とにかく、こんなことはやめろよ」
「はぁ~うぜぇな。痛い目に遭いたくなかったらさっさとそこをどけ」
「できるわけないだろ」
「もういい」
ロン毛の男はため息交じりにそう言うと、本当に俺に殴りかかってきた。
だから、リアルの殴り合いは得意じゃないんだっで。
俺は目を閉じて殴られる態勢に入る。
「まったく、今更かっこつけなくても正彦君は十分にかっこいいよ!」
ゆっくりと目を開けると、俺の前に白星さんが立っていてロン毛の男が俺を殴ろうとしていた拳を受け止めていた。
そして、白星さんはロン毛の男を押し返した。
「なんなんだよ次から次へと!」
「私、あなたみたいな男嫌いなんだよね~。見てると昔を思い出してムカついてきちゃう。だから、今すぐにこの場から消えてくれない?」
そう言った白星さんの声は絶対零度のような冷たさをしていた。
後ろにいた俺まで凍り付いてしまいそうだった。
そんな絶対零度のような言葉を浴びたロン毛の男は少しずつ後ずさると何も言わずに立ち去った。
☆☆☆
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