第11話

「私、あなたみたいな男嫌いなんだよね~。見てると昔を思い出してムカついてきちゃう。だから、今すぐにこの場から消えてくれない?」

 

 そう言った白星さんの声は絶対零度のような冷たさをしていた。

 後ろにいた俺まで凍り付いてしまいそうだった。

 そんな絶対零度のような言葉を浴びたロン毛の男は少しずつ後ずさると何も言わずに立ち去った。


☆☆☆


「よし!邪魔者はいなくなったし、UFOキャッチャーの続きしよー!」


 白星さんは何事もなかったかのように俺の腕を掴んでそう言った。


「い、いや、ちょっと待ってください!白星さんほんとに何者なんですか!?」

「言ったじゃん!ゲームとケーキが大好きな女の子だって!」

「それは知ってますよ!俺が言いたいのはそうじゃななくてですね……」

「まぁまぁ、私のことはいいじゃん!それよりもUFOキャッチャーを!」

 

 本当に自分勝手な人だな!?

 まぁ、助けてもらったから何も言えないけど。

 

「行きますけど、その前に一つだけ。大丈夫ですか?怪我とかないですか?」


 突然の白星さんの登場に忘れてしまいそうになっていた金髪のツインテールの女性に俺は話しかけた。


「あ、はい・・・・・・大丈夫です」


 そう言った金髪ツインテールの女性はなぜか白星さんのことを見つめている。


「なら、よかったです」


 見たところ、俺と同じ高校生か?

 ギャルメイクをしたその女性は白星さんには負けるが、とても綺麗な顔をしていた。

 というか、この顔どこかで見覚えがあるような……。


「もしかして、桃空さん?」

「え・・・・・・」

「君、2年の桃空綺羅ももそらきらさんでしょ?」

「・・・・・・」

「この子、正彦君の知り合いなの?」

 

 驚いて何も言えなくなっている桃空の代わりに白星さんが俺に聞いてきた。


「俺が一方的に知ってるだけですね。話したこともないですから」

「ふーん。そうなんだ」


 白星さんは興味がなさそうに言うと桃空のことを見る。


「ねぇ、もう一人で大丈夫だよね?」

「あ、はい……」

「だってさ!ほら、行こうよ正彦君!」

「いや、だから自由か!」


 あまりにも白星さんが自分勝手すぎて思わずツッコんでしまった。


「どんだけUFOキャッチャーしたいんですか!?」

「だって、あのぬいぐるみが欲しいんだもん」


 しょんぼりとした顔で両の頬を膨らませて俺のことを見上げてくる白星さん。

 その顔でそれをやられると反則なんですけど……。

 もちろんぬいぐるみは取ってあげるつもりだった。

 ちゃんと後で取るって約束したしな。


「分かってますって。ちゃんと取ってあげますか。そのまえに桃空さんです」

「さっきの」

「え?」

「さっき彼女がされてたやつやってくれたら我慢してあげる」

「さっきのって、さっきのですか……?」

「そう!さっきの!それから一緒にプリクラとかいうやつもやりたい!」

「分かりましたよ。全部付き合いますから」

「やった!じゃあ、先に正彦君の用事を済ませていいよ」

「ありがとうございます。ということで、とりあえず外まで一緒に行こうか。さすがにもうさっきのやつはいないと思うけど」


 桃空にそう言うと、コクっと頷いて俺たちの後をついてきた。

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