第9話 ゲームセンター編

 白星さんが『スターライト』の生みの親だと知った後、俺たちは『スターライト』の話で盛り上がって、一時間ほどレストランにいた。

 そのおかげか俺と白星さんの距離はかなり縮まったと思う。

 そして、今は白星さんの車で次の目的地に移動中だった。


「それで次はどこに向かってるんですか?」

「ん~次はね~ゲームセンターだよ!」

「ゲームセンターですか」

「そう!行ってみたかったんだよね~」

「え、行ったことないんですか?」

「そうなんだよね~。だから、めっちゃ行ってみたかったの!」


 ハンドルを握っている白星さんはウキウキしているように見えた。

 それにしてもゲームセンターに行ったことないって珍しいな。

 その横顔を見ながらそんなことを思っていると、白星さんはチラッと俺のことを見て言った。


「正彦君はゲームセンター行ったことある?」

「ありますね」

「さすが若いね~!」

「何言ってんですか、白星さんだってまだ若いでしょ。てか、ゲームセンターに行ったことある、ないは、年齢関係ないと思うんですけど」

「確かに!」

「てか、その歳までゲーセンに行ったことがないなんて驚きなんですけど、ゲーム好きなんじゃないんですか?」

「しょうがないじゃない!行けなかったんだから!」

「そうなんですね」


 そんな会話をしているうちにゲームセンターに到着した。

 

「ここがゲームセンター・・・・・・」

「ですね」

「あれがあまり取れないと噂のUFOキャッチー・・・・・・」

「誰から聞いた噂が知らないですけど、そうですね」

「やりたい!」


 UFOキャッチーの台を見つめながらその亜栗色の瞳をキラキラと輝かせる白星さん。

 

「これってどうやってやるの?これでできる?」

「いや、それじゃ無理ですね」


 白星さんは財布の中からスッとブラックカードを取り出した。

 レストランの時もそのブラックカードで奢ってくれた。

 だから、せめてもの気持ちで俺はUFOキャッチー代くらいは出してあげることにした。


「UFOキャッチーは100円か500円でやるんですよ。ちなみにどれがやりたいんですか?」

「あのぬいぐるみがやりたい!」

「あれですね。了解です」


 白星さんの指差したUFOキャッチーの台に向かった。

 その台に入っていたのは水色のクマのぬいぐるみだった。

 俺は1回では取れないだろうと思い、500円玉の方を台に入れた。

 

「はい。どうぞ」

「え、これでできるようになったの?」

「ですね」

「じゃあ、やってもいい?」

「どうぞ」


 本当に初めてらしくどう操作すれば分かっていない白星さんはボタンを押してすぐに離してしまった。


「あっ!」

「やっちゃいましたね。それ離しちゃダメなんですよ。ちゃんと、取りたいの景品のところで離さないと」

「先に言ってよ!」


 白星さんは悔しそうに頬を膨らませた。


「もう一回やる!」

「500円を入れたので後5回はできますよ」

「そうなんだ!」


 リベンジとばかりに残りの5回も挑戦するも上手くいかず、白星さんはぬいぐるみを取ることができなかった。

 

「取れない〜!悔しいんだけど!」

「難しいですよね」

「正彦君は取れる?」

「まぁ、取れると思いますよ」

「じゃあ取ってくれない?」


 白星さんがそう言ったその時、「や、やめてって言ってるでしょ!」という女性の声が聞こえてきた。


「ちょ、正彦君!?」

「すみません。俺、行ってきます。ぬいぐるみはあとで取ってあげますから」


 その声が聞こえてきた瞬間、俺は走り出していた。


☆☆☆


本日より、9時と12時に投稿します!

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