第7話


「龍一先輩。白星さんのことを知ってるんですか?」

「知ってるよ。白星先輩が作った会社もうちが支援してるからね」

「え、そうなんですか?」

「そうだよ。実はね、あのゲームは白星先輩の会社が・・・・・・」

「あ、龍一君じゃん!」


 龍一先輩が最後まで言い切る前に料理を両手に持った白星さんが戻ってきた。

 


☆☆☆


 戻ってきた白星さんは俺と龍一先輩の顔を交互に見る。

 そして言う。


「正彦君……なんで龍一君に抱きついてるの?」

「あ、これは・・・・・・その・・・・・・」

「あっ……もしかして、正彦君にはそっちの趣味が・・・・・・」


 そう言った白星さんは、はっとした表情を作った。


「ち、違いますから!ちゃんと俺は女性が好きですから!」


 俺が顔を真っ赤にしてそう言うと、白星さんにケラケラと笑われてしまい。またからかわれたのだと気がついた。

 しまいには、龍一先輩にもクスッと笑われてしまって、からかわれてしまった。


「なんだい。正彦君は僕のことが嫌いなのかい?」

「いや、そうじゃなくててですね・・・・・・」

「あーあ。正彦君が龍一君のことをふったー!」

「僕は悲しいよ。正彦君」


 2人に責められて俺は若干涙目になっていた。


「ごめんごめん。からかいすぎたね」


 龍一先輩は慰めるように俺の頭を撫でた。


「それにしてもこうやって顔を合わせるのは久しぶりですね。白星先輩」

「久しぶりだねー!龍一君!支援の件。本当にありがとうございました。星城財閥に支援していただけて、なんとかここまで来ることができました」


 さっきまで愉快に笑っていた白星さんは両手に持っていたお皿をテーブルに置くと、龍一先輩に丁寧に頭を下げた。


「いえいえ、ほとんど先輩の力ですよ。僕はただ支援しただけにすぎませんから。あのゲームも好調みたいですね。僕も楽しく遊ばせていただいてますよ」

「えっ、ほんとに!?まさか、遊んでくれてるなんて!ありがとう!」

「それにしても白星先輩は随分と明るくなりましたね」

「それもこれも全て龍一君のおかげ!本当にありがとう!」


 恥ずかしがっていた俺は完全に蚊帳の外。

 しかし、2人の会話を聞いているうちに冷静さを取り戻し、気になるワードがいくつか頭の中に浮かんでいた。

 あのゲームとは?

 白星さんの会社とは?

 随分と明るくなったとは?

 

「それにしても正彦君と白星先輩が一緒にいるなんて驚いたよ。どういう関係だい?」

「それは・・・・・・」

「それは、私たちは恋人同士なんだ!」


 俺の言葉を遮って行った白星さんのその言葉に俺は「違うわ!」と即答した。


「もぅ〜。照れなくてもよくない〜」

「照れてませんし、そもそも付き合ってません!」

「やっぱり正彦君はからかい甲斐があるわ〜」

「俺をおもちゃにしないでください!」

「あはは、そんな冗談はおいといて、正彦君とはね。数日前に知り合ったばかりの関係でね。私が雪で立ち往生してたら、助けてくれたんだ!」

「なるほどそういうことですか。さすが正彦君だね。偉いよ」


 そう言って龍一先輩は俺に満面の笑みを向けた。 

 

「あ、ありがとうございます」


 龍一先輩に褒められるのはやっぱり照れる。  

 その一言だけで全てが報われたような気になる。

 人助けをしてよかったと思わせてくれる。

 やっぱり龍一先輩は凄い人だ。

 

「それでその時に私が恋に落ちちゃったというわけ!」

「なるほど、ということは僕は邪魔ですかね?」


 2人してニヤッと笑うと俺のことを見た。


「だから!2人して俺のことをからかわないでください!」

「さて、正彦君のことをからかったし、僕はそろそろ仕事に戻るとするよ。ぜひともおいしい料理を楽しんでね」

 

 そう言うと龍一先輩はレストランから出て行った。

 

「いや~。それにしてもまさか龍一君と会うなんてね~」


 白星さんは椅子に座りながらそう言った。

 俺も白星さんの対面の椅子に座る。


「それも驚きましたけど、白星さんが龍一先輩と顔見知りなことにも俺は驚いてるんですけど?あ、もしかしてこの前言ってたあの人って……」

「そう!龍一君のこと!」

「そうだったんですね」


 本当にあの人はいろんな人を助けてるな。

 

「てか、正彦君も龍一君のこと知ってたんだね」

「そりゃあ、俺、ボランティア部ですから。知ってますよ」

「それもそっか」

「それに俺の最も尊敬する人ですから」

「あ、だから抱き着いてたの?」

「そのことはもう忘れてください……」

「仕方ないな~。忘れてあげよう!忘れてあげるから、正彦君も料理取ってきちゃいなよ!」

「わかりました。取りに行ってくるので、白星さんは先に食べてていいですよ」

「はーい!」


 俺は料理を取りに向かった。

 どれもこれも美味しそうなものばかりで迷う。

 真白さんがあんなにたくさんの種類の料理を持ってきたのも頷けた。

 あの華奢な体のどこにそんな量が入るのかと思ったが、このおいしそうな料理を前にしたら、取りたくなったのだろう。

 同じ気持ちなった俺も皿いっぱいに料理を乗せて白星さんのところへ戻った。



☆☆☆





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