第6話

 目的地のホテルには1時間くらいで到着した。

 俺が見上げていたホテルは一体どのくらい働けば泊まれるようになるのだろうと思わされるほど高級感が漂っていた。

 

「だいぶ時間がかかったわね」

「・・・・・・」


 雪道ということもあって白星さんは慎重にゆっくりと運転してくれていたことも、高級ホテルだということも、俺にとってはそんなことはどうでもよかった。

 俺の頭の中はホテルのことで一杯だった。

 そのせいで、ここに来るまでの車内で白星さんは何度も話しかけてくれたが、俺はどれも上の空の返事しかすることができなかった。

 

「ねぇ、正彦君。もしかして、緊張してる?」

「え・・・・・・し、してませんよ」

「嘘。してるわよね。車の中でも変な態度だったし・・・・・・あっ!もしかして・・・・・・」


 白星さんは何かを察したようにニヤッとからかいの笑みを浮かべた。


「正彦。エッチな想像してるでしょ?」

「し・・・・・・」

「ほら、言葉に詰まった」

「し、してませんから!?す、少ししか・・・・・・」

「やっぱり思ってるんじゃん!」

「もう!からかわないでください!」


 俺がそう言って頬を膨らませると「ごめんごめん!」と白星さんは腹を抱えて笑いながら謝った。


「少しは緊張ほぐれた?」

「ほぐれませんよ!?」

「だよね〜。まぁ、いいや!ほら、行くよ!」


 白星さんは俺の手を取ってホテルの入り口へと歩き始めた。

 そのままエレベーターへと向かうと上りのボタンを押した。

 よく考えたら、この時間から部屋にチェックインなんてできるわけがなかった。

 今はまだ12時前だ。

 エレベーターに二人で乗り込むと白星さんは最上階のボタンを押した。

 どうやら目的地はこのホテルの最上階らしい。


「ところで、正彦君はお腹空いてる?」

「え、お腹ですか?まぁ、空いてますけど・・・・・・」

「よかった!それならたくさん食べれられるね!」

「たくさん食べれる?」


 俺はそこでエレベーター内の案内を見た。

 最上階は・・・・・・。


「レストラン『スターイート』・・・・・・」

「そう!そこが今回の目的地!ここのホテルの屋上ねレストランになってて、バイキング形式なんだ!」


 白星さんがそう言っている間にエレベーターは最上階に到着した。


「うわ〜!凄い!」


 エレベーターが開いた瞬間に目の前に広がったのは煌びやかなレストランだった。

 高級ホテルにふさわしい高級レストラン。

 その高級さに気後れしながらも、白星さんの後に続いてレストランの中に入った。


「さすがの人気ね〜」

「もしかして有名なレストランだったりするんですか?」


 俺たちはスーツをビシッと着こなしたウエイトレスさんに空いてる席に案内された。

 レストラン内はかなりの人がいて賑わっていてる。


「そうね〜。なんてったってここのレストランは去年三ツ星を獲得したお店だからね!」

「それは人気なはずですね」


 つまりここのレストランは三ツ星レストランというわけか。

 三ツ星レストラン!?

 

「て、ここ三ツ星レストランですか!?」

「正彦君は三ツ星レストラン初めて?」

「そりゃあ初めてに決まってますよ!」

「だよね〜。よかったね来れて!」

「いや、敷居高すぎますって!」

「まぁ、もう中に入ってるから関係ないんじゃない?そんなことより、ほら!美味しそうな料理がたくさんあるから取りに行こ!」


 自由か!

 そうだった白星さんは自分勝手な人だった。

 白星さんは一人で料理を取りに行ってしまった。

 とりあえず、俺も料理を取りに行くかと立ち上がろうとしたその時、「あれ、正彦君じゃないか」と後ろから声をかけられた。

 振り向くとそこにはスーツ姿の金髪の超絶イケメンがいた。


「え、龍一先輩・・・・・・」


 約1年ぶりの再会。

 

「この前電話では話したけど、こうやって会うのは久しぶりだね」

「りゅ、龍一先輩!」


 俺は周りの目も気にせずに龍一先輩に抱きついた。

 思わぬ形で龍一先輩と再会を果たした俺はテンション爆上がり中だった。

 

「龍一先輩久しぶりですね!こんなところでなにやってるんですか!?」

「今日は仕事だよ。ここのお店は星城財閥が支援してるお店の一つだからね」

「あ、そうなんですね!」


 そう言われて納得した。

 星城財閥が支援してるなら、そりゃあ三ツ星レストランになるわけだ。

 

「正彦君はどうしてここに?」

「それは・・・・・・」


 俺は料理を取っている白星さんのことを見た。

 白星さんのことをどう説明したものかと思っていると、龍一先輩が俺の視線の先を見て「あれは、白星先輩かな?」と呟いた。


「龍一先輩。白星さんのことを知ってるんですか?」

「知ってるよ。白星先輩が作った会社もうちが支援してるからね」

「え、そうなんですか?」

「そうだよ。実はね、あのゲームは白星先輩の会社が・・・・・・」

「あ、龍一君じゃん!」


 龍一先輩が最後まで言い切る前に料理を両手に持った白星さんが戻ってきた。

 


☆☆☆

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