第5話 1月8日 レストラン編(白星とデート?)

1月8日


 土曜日は気持ちのいいほどの晴れ模様だった。

 白星さんが俺の家に来るのは10時。

 俺は準備をすでに済ませていていつでも出れる状態でリビングのソファーでくつろいでいた。

 

「あら、正彦。そんなにオシャレしちゃってどうしたの?あっ!もしかして、デート?」


 いつもより少し遅い時間に起きてきた母さんがリビングにやってきた。 

 ゲーム会社に勤めている母さんは昨夜も遅くまで作業をしていたようだ。目の下に少しだけ隈ができていた。

 

「おはよう。母さん。そんなんじゃないから。ご飯テーブルの上に置いてるから。それから父さんは今日遅くなるって」

「おはよ。あらそうなの。残念だわ〜。いつもありがとね。了解」


 そう言いながら母さんは冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注ぎレンジで温めた。


「俺も今日出かけるから。一応夕方までには帰ってくると思うから、晩御飯は帰ってから作るよ」

「やっぱりデートなんでしょ?」

「だから、違うって」

「じゃあ、相手は男なの?」

「それは・・・・・・女性だけど、違うから」

「あらあら、とうとう正彦にも・・・・・・」


 ピンポーン。

 家の呼び鈴が鳴らされた。


「あ、待って・・・・・・」


 それに先に反応したのは母さんだった。

 俺より先に玄関に向かった。

 その後を追って俺が玄関に到着した時にはもう扉は開いていて、母さんと白星さんが顔を合わせていた。


「ねぇ、正彦。もしかしてこの方があなたの彼女なの?」


 母さんは少し驚いた様子で俺の方を振り向いた。

 なぜそんな顔を?

 そのことを不思議に思ったがとりあえず俺は白星さんに挨拶をした。 


「だから、そんなんじゃないって。白星さんおはようございます。すみません。いきなり母さんが変なことを言って」

「おはよ。私が正彦君の彼女かー。悪くないね!」

「いや、本気にしないでください!」


 ケラケラと楽しそうに笑っている白星さんは、2日前も思ったがやっぱりめっちゃ美人だ。 

 純白のストレートヘアに亜栗色の大きな瞳。

 綺麗な整った顔立ち。左目の下にあるほくろはセクシー。

 黒いコートを白いセーターの上に羽織っていて、ジーパンを履いている白星さんの醸し出している雰囲気はかっこいい。

 そんなザ・かっこいい大人を体現したような白星さんの白いセーター越しに分かるその豊満なバストに思わず目が行ってしまうのは仕方のないことだろう。


「あはは、分かってるわよ!お母様。ご挨拶が遅れました。私は白星澪といいます。今日は正彦君とデートをさせてもらいます」


 そう言って母さんに丁寧に頭を下げた白星さんに「白星さん!?」と俺は目を見開いた。


「な、何言ってるんですか!?」

「え、だって二人でお出かけするんだからデートでしょ?」


 完全にからかわれてる。

 それが分かった。

 なぜなら、白星さんはこれでもかと口角を上げてニヤニヤとした笑顔で俺のことを見ていたから。


「ということでお母様。夕方くらいまで正彦君のことをお借りしますね」

「ええ、それはもう・・・・・どうぞ。こんな息子でよければ、夕方までとはいわず、今日一日帰ってこなくても何も言いませんので」

「か、母さん!?」


 何言ってんだこの人!?

 てか、母さんってこんなキャラだたっけ?

 白星さんに対して低姿勢というか緊張しているというか……。

 とにかくいつもの母さんとキャラが違い過ぎる。


「お母様。それは・・・・・・」


 ほら、白星さんも困って・・・・・・


「いいんですか!?」


 むしろ喜んでる!?

 白星さんの亜栗色の瞳がキラキラと輝いていた。


「いや、母さんがよくても俺が許さないから!」

「あはは、分かってるって、今日のところは夕方に帰らせてあ・げ・る!」


 そう言って白星さんは俺に向かってウインクをした。

 今日のところはって、まるでこれからも2人でどこかに行く予定があるみたいじゃねえか!?

 もちろん、そんな予定は今のところない。


「さて、そろそろ行きましょうか!」

「ほら、正彦。楽しんできなさい」


 そう言った母さんが俺のそばにやってきて耳打ちをする。


(正彦。あんた白星さんのことを怒らせんじゃないわよ)

(は?どういうこと?)

(とにかく、白星さんの機嫌を損ねることだけはしないこと。いいわね?)

(意味が分かんないけど、機嫌を損ねなければいいんだな)

(そうよ。頼むわよ)


 とりあえず、白星さんの機嫌を損ねないようにしてほしいらしい。

 どうして母さんがそんなことを言ってくるのかさっぱり分からなかったが、その顔が真剣そのものだったので、気を付けようと思った。

 母さんに背中をポンと押された俺は玄関を出た。


「それじゃあ、行ってきます」

「また、夕方に会いましょう。お母様」


 白星さんが母さんに手を振ると、白星さんの車に向かって歩き始めた。

 家の前にはピンク色の車が停まっていた。

 それは、俺が数日前に雪の中から助けた車だった。

 

「さ、乗って」

「よろしくお願いします」


 そう言って俺は後部座席のドアを開けようとした。


「なに後部座席に乗ろうとしてるのよ。助手席に乗りなさい」

「ですよね・・・・・・」


 俺は助手席のドアを開けて車の中に乗ってシートベルをつけた。


「シートベルトつけたわね」

「はい」

「じゃあ、行きましょうか。ホテルに!」

「えっ!い、今なんて言いました!?」

「ん?ホテルに行くって言ったのよ」


 聞き間違いじゃなければ、ホテルって言ったよな・・・・・・。

 え、俺は今から白星さんと、この超絶美人とホテルに行くのか・・・・・・。

 唖然としてある俺をよそに、白星さんは車をゆっくりと発進させた。

 

☆☆☆

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