第3話
『おっしゃー!レア素材ゲット!』
『これで武器が強化できます!皆さんありがとうございます!』
電話越しに後輩の
今は、毎夜恒例のゲームタイムの時間だった。
三人と電話をつないで「スターライト」というタイトルのMMORPGをプレイしているところだった。
「スターライト」というこのゲームは「ホワイトスター」というゲーム会社が最近リリースしたスマホゲームだ。
今夜は悟の武器を強化するために必要な素材集めをする会だった。
そして、ちょうど今、武器を強化するのに必要なレア素材がモンスターからドロップした。
『やっぱり正彦がいると効率が違うわ〜』
『ですね。正彦先輩。上手過ぎです』
『だね。さすが正彦君って感じだね』
三人が俺のことを褒める。
鋼と悟が俺のことを褒めてくるのはいつものことなので慣れているが、龍一先輩に褒められるのは慣れていないので、なんだか照れ臭かった。
星城龍一。
俺と鋼が最も尊敬している先輩で、元ボランティア部の部長。
この「スターライト」というゲームを教えてくれたのも龍一先輩だった。
「ありがとうございます。てか、こうやって龍一先輩とゲームするの久しぶりですね」
『そうだね。忙しくてなかなかログインできなかったからね』
『龍一先輩の活躍はよく拝見してます。この前もネットの記事に……』
『まぁまぁ、僕の話はいいから。今はゲームに集中しないかい?せっかく、こうして一緒にゲームする時間が取れたんだから』
『そうですね。じゃあ、次は俺の武器強化に必要な素材を集めるの手伝ってもらってもいいですか?』
『もちろんだよ。他の二人もいいかな?』
「はい」
『僕も大丈夫です』
ということで、残り三十分くらいは鋼の武器強化のための素材集めをすることになった。
ゲーム中の三十分なんて、体感数秒だった。
三十分はあっという間に過ぎた。
『くそー。俺の方は落ちなかったかー』
「鋼の武器の素材の方がレアだからな。仕方ないだろ」
『だなー。また挑戦するしかねぇなー』
『次は落ちるといいね。きっと僕は参加できないだろうけど応援してるよ』
『ありがとうございます。また龍一先輩とゲームできるの楽しみにしてますね!』
『もちろんだよ』とそこで一度言葉を切った龍一先輩は『せっかくだから僕から激励を』というと俺たちに向かって激励を送ってくれた。
『鋼は受験頑張るんだよ。鋼が医者になったら僕の専属になってもらうつもりなんだからね。応援してよ。正彦はゲームを作りたいんだったよね。正彦の作るゲームはきっと面白いんだろうね。プレイするのが今から楽しみだよ。頑張ってね。悟は漫画家になりたいって言ってたよね。一度書いた漫画を読ませてもらったことがあるけど、あれはよく描けてたね。きっと悟なら賞を取って人気漫画家に一気に駆け上がっていくんだろうね。本が出るのを楽しみにしてるよ』
やばい感動する。
やっぱり龍一先輩は人のことをよく見てるし、よく覚えてる。
そして、人の心を揺さぶるのがうまい。人をやる気にさせるのがうまい。
『龍一先輩……それはズルいっすよ。俺……涙止まんないです』
『僕も……です。覚えててくれたんですね……』
どうやら二人も心に来るものがあったらしい。
電話越しに鼻をすする音が聞えてくる。
そんな二人につられて、俺も溜まっていた涙が目から流れ落ちた。
「龍一先輩。ありがとうございます。絶対に面白いゲーム作ってみせます!」
『俺も絶対に医者になります!』
『僕も面白い漫画書きます!』
『うん。大丈夫。三人の未来は僕が保証するよ』
ああ、この人の言葉はなんて心強いのだろうか。
鋼が俺に言ってくれた「保証する」ももちろん心強かったが、龍一先輩の「保証する」は何十倍もの心強さを感じる。俺に絶対の安心感を覚えさせる。
この人が言ったことは必ずそうなるのだ。
それを俺たちは何度も体験してきたし、見てきた。
だから、龍一先輩の「保証する」はこんなにも心強いのだろう。
『さて、今日はここらへんで失礼させてもらうよ。まだ仕事があるからね。楽しかったよ。また四人でゲームしよう』
「絶対にやりましょう!忙しい中、付き合っていただきありがとうございました。龍一先輩もお仕事頑張ってください。これからも俺たちにかっこいい背中をいつまでも見続けさせてください」
『です!俺たちはいつまでも龍一先輩の後をついていきます!』
『僕もついていきます!』
『こんなに後輩に期待されて頑張らないわけにはいかないね』
龍一先輩はそう言うと『じゃあ、またね』とゲームからログアウトして電話を切った。
それから俺たちも「おやすみ」と言い合うとログアウトして電話を切った。
椅子に座ってゲームをしていた俺はスマホを勉強机の上に置くとベッドに寝転がって目を瞑った。
久しぶりに龍一先輩とゲームができて楽しかった。
ゲームを始める寸前までは俺と鋼と悟の三人でやる予定だった。
しかし、突然龍一先輩から「久しぶりに一緒にゲームをやらない?」と連絡をもらって、急遽四人ですることになった。
鋼も悟も龍一先輩とは仲が良いし、四人でゲームをすることも何度もあったから、二人にそのことを伝えると二つ返事で連絡が返ってきた。
「鋼に無理やりボランティア部に入部させられてなければ、龍一先輩とは出会ってなかったのかもしれないんだよな」
生徒会長もしていた龍一先輩だから、もしかしたらどこかで関わることがあったかもしれないが、こんなに親密な関係にはなれてはいなかっただろう。
そう思うと鋼には感謝しかない。
こんなに早くから人生の師として一生を捧げたいと思える存在に出会えたのだから。
「頑張るしかねぇよな」
俺がそうボソッと呟いたところで、勉強机に置いたスマホがブーと振動し始めた。
どうやら電話がきたらしい。
「鋼か?」
何か言い忘れたことでもあったのだろうかと思い、ベッドから起き上がるってスマホを手に取ると、そこには知らない電話番号が表示されていた。
☆☆☆
登場人物多めです!
まだまだいろんな人が出てきます!
次回はいよいよ・・・・・・。
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