第3話 親戚の子?
〈一週間後、勤務後の居酒屋で〉
かおり:先輩、今日の新商品の販売の報告会では、トチってばかりで、さんざ迷惑をかけちゃってゴメンナサイ。本当ひどい社員ですよね。
紗英:何、しょげてるの? いまさら言っても始まらないでしょう。次に向かって頑張るのよ。
かおり:もうおまえに次はないって課長から言われたんです。また左遷されそうです。
紗英:それはないんじゃない? この間、こちらに戻ってきたばかりじゃない。
かおり:でも私、先輩みたいに頭良くないし、やっぱり小さな店舗で簡単な販売位が向いてるみたいです。ただそういうのもパートさんとかとの人間関係があるから、前の職場でしんどかったんです。
紗英:向こうで人間関係うまくやっていると思っていたわ。
かおり:私がですか?
紗英:だって私と違っていつもニコニコしていてかわいいじゃない。顔文字の笑顔と差がないわ。
かおり:私、空気読めないから。それにすぐに顔に出るし。仕事でイヤな事があるとアパートの部屋に帰る時がいちばんイヤなんです。ああ、誰もいない真っ暗な部屋に帰るんだ、私は誰にも必要とされていないんだなーって。地方に飛ばされたら近所に知り合いもいないし。
紗英:異動にしてもあまり遠くない所にしてって私からもお願いしてみるわ。
店主:こちらのお客様、もうかなり酔われているので、これ以上はやめておいた方がいいと思いますよ。
紗英:ねえ、何だったら今日はうちのマンションに来ない? あなたのアパートに一人で戻せないわ。
かおり:えっ、先輩のマンションですか。そんな厚かましい事できません! せっかくの夫婦水入らずの生活に。うっかり行って親戚の子みたく……。
紗英:親戚の子? どうしたの? 両手で口ふさいで。
かおり:何でもありません。私のグチを聞かせてしまってゴメンナサイ。先輩には最後の最後まで迷惑かけちゃいそうですね。
紗英:いいのよ。ほらタクシーに乗って。
***
〈かおりのマンションの部屋〉
かおり:ここは先輩のマンションの部屋? 静かだ。うちの商品のクワイエットペインが窓枠に仕組まれてるんだ。でも人の声がしないって、風の音も聞こえないって寂しいですね。
***
(後半へ続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます