いつも俺をからかってくるメスガキ幼馴染が、新年のおみくじで超凶を引いて不幸まみれに陥ってわからせられていたが、大吉引いた俺のそばにいれば収まるらしく、まるで離れようとしない件

くろねこどらごん

第1話

「あけおめことよろ、おにーさん♡」


 元旦の朝、親に起こされ玄関に向かうと、着物を着た女の子が、満面の笑みを浮かべて待っていた。


「げ、百奈かよ」


「げってなに♡それが新年早々挨拶にきてくれたカワイイ幼馴染に言う言葉?おにーさんって鬼畜だね…♡」


 俺の反応に文句を言ってくるのは、御前百奈おまえもな

 どこか舌っ足らずな話し方をする、隣の家に住む一つ年下の幼馴染である。

 口を尖らせ上目遣いに見上げてくるが、小柄で幼い容姿のせいか、まるで怖さを感じない。

 ツリ目がちな瞳のせいで、どこか生意気そうな印象を受けるくらいだろうか。

 まぁ実際生意気だし、口が減らないやつであるのは確かである。


「誰も呼んでないし、そっちが勝手にきたんだろーが。もうちょい寝てたかったのに、叩き起こされたこっちの身にもなれってーの」


「うわ、塩対応♡おにーさんひどいハードそんな冷たくされたら私、泣いちゃう…」


 そう言うと百奈は両手を目に当てた。次いで間を置かず、しゃくり上げる声が聞こえてくる。

 罪悪感を感じさせる仕草だ。突然泣かれると大抵の男は動転するらしい。

 思考停止に陥って、とにかく謝る男も多いことだろう。人間心理とはなかなかに複雑なギミックで出来ているらしい。


「しくしくしく」


「嘘泣き乙。玄関でそれすんのやめろ。親父達に見られたら怒られっから面倒なんだよ」


 もっとも、俺には通用しないんだけどな。

 伊達に長年幼馴染をやっちゃいない。コイツの手口は十分すぎるほど理解していた。


「そんな、ひどいおにーさん…私は本当に悲しんで…」


「今泣き真似やめたらお年玉やってもいいぞ」


「いたと思ったけど、気のせいだったなぁ♡私ってば、あわてんぼうだね✩」


 即座に顔を上げる百奈だったが、案の定嘘泣きだったらしい。

 頬には涙の一滴も流れちゃいし跡もない。表情もケロッとしていてむしろしてやったりといったご様子だ。


「お前な…」


「ほら、お年玉ちょーだいおにーさん♡」


 あまりの変わり身の早さに呆れてしまうも、まるで気にしたふうでもなくお年玉を催促してくる姿はまさにメスガキそのものである。


(こういうとこあるからコイツ苦手なんだよなぁ)


 しょっちゅう人のことをからかってくる百奈に、俺は若干の苦手意識を持っていた。

 生意気だし小賢しいし、利用できるものはなんでも利用する性格は昔から変わらなくて、ガキの頃から散々振り回されてきたのだ。

 自分の子供っぽい外見を逆手に取って、罪悪感を刺激するようなことまでするからタチが悪い。

 とにかく人を見方につけるのが上手く俺の親も百奈にはえらくダダ甘だ。

 なんなら息子である俺より可愛がっているまであったりする。


(別に嫌いとまではいかないし、からかったりしてこなきゃ悪い奴でもないんだがな…)


「なにぼーっとしてるのおにーさん?お年玉ちょうだいお年玉♡おにーさんからもらうのが、毎年の楽しみなんだよね♡」


 なんだかんだ憎めないあたり、俺自身ほだされてる可能性は否定できないが、素直に認めるのも癪だった。

 たとえコイツの言うとおり、毎年元旦になると家に訪れる百奈に、年がひとつしか違わないのにも関わらずお年玉を渡すのが恒例行事と化していても、それとこれとは話が別なのである。


「はぁ…財布部屋にあるから取ってくるわ。あとポチ袋にも入れるからちょっと待ってろ」


「はやく♡はやく♡待ちきれない♡」


 ほんっとに現金なやつだな…

 コイツと付き合う男は間違いなく苦労するだろう。

 将来百奈と付き合う不幸な男子に心の中でエールを送りつつ、俺は階段を上がろうとしたのだが、


「あ、おにーさん♡ちょっと待って♡」


「んあ?」


 媚びっ媚びのロリボイスを受け、釣られるように振り返った。


「なんだよ。お年玉が待ちきれないんじゃないのか?」


「それももちろん欲しいけど…おにーさんから欲しいものが、まだあるんだよね♡」


 そう言うと、百奈は期待するような目を向けてくる。


「欲しいものぉ?」


「もう、おにーさんったら鈍感♡見てわからない?」


 見て?見て、見てねぇ………あー。


「百奈」


「うん」


「着物、似合ってるぞ」


「!…………♡もうっ♡気付くの遅いよ、おにーさん♡やっぱり鈍感♡ほんとニブチンなんだから♡」


 一際甘ったるい声が返ってくるのを背に受けながら、俺は階段をのぼっていく。


(マジで苦手なんだよ、こういうの…)


 やっぱりからかわれるのは好きじゃない。

 頬が熱を帯びていくのを感じて、俺は改めてそう思うのだった。







 ザワザワ…


「うわー、さすが元旦の初詣。人がいっぱいいるね✩」


 どうしてこうなったんだろう。

 人でごった返す神社の参道で、俺は密かにため息をついていた。


「なんでわざわざ人が多い中、初詣なんてしなきゃいかんのだ…」


「まだ愚痴愚痴言ってるの?男らしくなーい♡そんなんだから彼女のできないんだよ、このザコおにーさん♡」


「ぐっ…!」


 い、痛いことを言いおってからに!人には言っていいことと悪いことがあるんだぞ!


「どうせ家にいてもやることないじゃん♡ダラダラ寝て過ごすなら、百奈と一緒に初詣きたほうがずっと有意義だったと思うよ♡お年玉のお礼に百奈みたいなカワイイ子が隣にいてあげるんだから、感謝してよね♡」


「へいへい。ありがとーござーます」


 割に合わないお礼だなおい。

 時給15分で2000円とか、ぼったくりにもほどがあんだろ。人生の格差を感じるわ。世渡り上手ってこういうやつのことを言うんだろうなぁ。


「返事テキトー✩心こもってなーい✩モテない理由がよくわかる♡やっぱりおにーさんってクソザコだぁ♡」


「うるせー、ほっとけ!ほら、参拝に並んでさっさと帰るぞ」


 ああ言えばこう言うやつだなほんとによ!どんだけ口が回るんだ!?

 いっそはぐれたふりしてこっそり家に帰ろうかなんて考えが浮かんだその時だった。


「あっ、待っておにーさん♡私、その前にあれやりたい♡」


「ん?」


 不意に百奈が神社の境内。その中のとある一点を指さした。


「くじ引きか」


「おみくじ今なら空いてるみたい♡ね、引いてみようよ♡新年最初の運試し♡」


 言いながら、俺のコートの袖をクイクイ引っ張る百奈。

 ええい、イチイチうっとおしいことするやつめ。


「ふむ」


 しかし、おみくじ。おみくじね。まぁ悪くないな。

 初詣の定番でもあるし、俺だって今年の運勢は気になるところだ。あえて断る理由はない。空いているなら早めにやっておくのは吉だろうし、ここは素直に頷くか。


「そうだな、んじゃ引くか」


「やった♡じゃあおにーさんのおごりね♡」


「いや、それくらいは自分で金出せよ!?」


 100円くらいケチんなよ。てか、そういうことすると運が逃げるぞ。

 根拠はないけど、なんとなくそんな気がする。


「えー✩」


「えーじゃない。ほら、引くぞ」


 文句を言う百奈を横に、俺たちはくじ引きのみくじ筒の前に立ち100円を入れた。


(大吉が当たりますように…)


 そんな願いとともに多角形の細長い箱を数回カシャカシャと振り回し、ひっくり返すと一本のみくじ棒が飛び出した。


「お!」


 そこに書かれた番号は七十七番。

 言うまでもなくラッキーナンバーだ。これはひょっとするかも…そんな期待を胸に番号通りの箱からくじの結果を取り出すと、


「よし、やっぱり大吉だ!」


 最高のくじを引けたことに、思わずガッツポーズを取ってしまう。

 ただの運に過ぎないけど、やっぱり一番いい結果が出るというのは気分がいいものだ。

 2022年はいい年になるかもしれないな…そんな感慨にふけってしまっていたのだが、


「………………」


「ん?」


 ふと覚えた違和感。

 そういえば、さっきかメスガキである幼馴染が大人しいのだ。

 見ると百奈もくじは引き終えていたのだが、何故かくじを広げて固まっている。

 それも真顔で。いつもコロコロと表情を変える幼馴染にして、これは非常に珍しいことである。


「おーい、百奈。どうした固まったりして。もしかして大凶でも引いたんじゃ…」


 これはチャンスと思い、硬直している百奈の上からおみくじの内容を盗み見るのだったが、


「…………え゛」


 そこに書かれていたのは、俺の予想を遥かに上回るものだった。



 四十九番 超凶


 運極大低下。今年一年色んなことで苦しむYO。そういうことで夜露死苦!


 願望―むりぽ

 待人―ふくぼんっ!

 失物―ド☆ン( ゚д゚)マ☆イ

 旅行―死ぬ気か?

 商売―うんちっち

 学問―ルナティックフォーリナー








「…………なにこれ」


 いや、マジでなんだこれ。

 超凶ってなに。ていうか、書いてあることもなにこれ。

 色々ふざけすぎだろ。意味わからん。小学生でももうちょいマシな文章書くぞ。


「あ、あはは♡なんか変なの出ちゃったみたい♡おかしいね♡」


 俺の声に反応したのか、ゆっくりこっちに振り返る百奈。

 口調はいつも通りだったが、口元が微妙に引きつっている。


「おい、こんなの気にすんなよ。神社の人がこんなの入れると思えないし、きっと誰かの悪ふざけだろ」


「そ、そうだよね♡おにーさんもたまにはいいこというじゃん♡超凶なんて有り得ないもん♡」


 本気で悪ふざけと思っているというよりは、まるで自分に言い聞かせるようだったが、それでいいと思う。

 タチの悪いいたずらだが、くじなんてただの結果。その場の運に過ぎない。

 超凶に書かれているような、一年も不運に見舞われるなんてことが、ただの紙切れ一枚で左右されるはずがないんだ。


「あ、それじゃあこんなくじ、結んでくるね♡まったくもう、こんなのほんとに最低な…」


 言いながら、百奈が一歩踏み出した瞬間。


 ツルリ


「あ」


「イタズラなんだかめるへぶんっ!!??」


 雪で凍結していたのだろう。境内の石畳に見事にすっ転び、百奈は尻を強かに地面へと打ち付けていた。


「ホ、ホ、ホアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」


「お、おい!?大丈夫か!?」


 よっぽど強く激突したのか、メスガキとは思えない悲鳴を上げる百奈。

 日頃の余裕などどこ吹く風とばかりに悶絶し、顔面も蒼白になっていた。


「だ、だいじょう…大丈夫♡ザコおにーさんに心配なんてされても嬉しくないし♡すぐに立ち上が…」


「明日はホームランだー!」


 プルプルと震えながらも、百奈がなんとか立ち上がりかけた、その時だった。


 バシィィィィン!


「私、アウトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


 どこからともなく現れた、小学生低学年くらいの男子が持っていたプラスチックバットのフルスイングが、百奈の尻を直撃していた。


「も、もなああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 な、なんでいきなり!?半立ち状態だったから、ダウンスイングの軌道と完全に重なって、完全にホームランコースのバッティングになってたぞ!?

 我が故郷の生んだ偉大なる大○選手並のバレルだ。正確にはぶっ叩いたのは球ではなく尻だから、バレルゾーンではなくバレルケツというべきかもしれないが…い、いや、今はそんなことはどうでもいい!


「も、百奈!?無事か!?しっかりしろ!!」


「おし、お尻が割れてるぅっ!タイキックを食らった田○のごとくぅっ!メスガキックでお尻が横にまっぷたツゥゥゥ!!」


 それじゃただの+だ。足し算になっちまうから割り算にはならんぞ。

 いや、尻が4分割されたなら割ることはできるが…いかん、また思考がそれちまった!


「立てるか?俺が支えてやるから、なんとか踏ん張れ!」


「踏ん張ったら出ちゃうぅぅぅ…♡私のお尻、今よわよわなのぉ……♡だめだめざこざこヒップなのぉ……♡」


 案外余裕あるなおい。だがハートマークで誤魔化そうったってそうはいかんぞ。

 単体で見ればエロいセリフと言えなくもないが、実際は天丼で尻にダメージ負っただけだからな。

 文章表現の妙と言える。文学って偉大だなぁ。


(しかし、二回もこんなことが起こるなんて、ついてな…)


 そこで俺はふと気付く。


(まさか、超凶ってほんとに…)


 いや、そんなことあるはずがない。おみくじで運命が決まってたまるか。

 頭に浮かんだ考えを振り払うように、俺達は参拝をせずに神社を後にするのだった。









「おにーさん、私もうダメかも」


 嫌な予感は的中した。

 あれから二週間が経った現在、百奈はボロボロになっていた。


「百奈…」


「家にいても眠れないの。寝てたらどこからともなく本が落ちてきたりお尻の痛みが倍増するし、道を歩いていたらケツバット貰うし買い物してたらクソガキにカ○チョーされかけたんだ。なんとか防いだけど、私ボロボロだよ。お尻の被害が特にひどいのほんとなんなの」


 目元にはクマができ、頬もこけてる。生意気そうな勝気さを感じさせるつり目も生気がない。

 語尾についていたハートマークも消えてしまい、今の百奈はメスガキとしてのアイデンティティを失いつつあった。


「命に別状はないって言っても、このままだと倒れちゃうよ…ねぇおにーさん。私どうすればいいのかな」


 トドメはこれだ。いつもからかっていた俺にまで、縋るような目を向けてくるのだ。

 こんな百奈は見たことがなかった。それだけ追い詰められているということなんだろう。


「百奈…」


 そして、俺はこんな百奈を見たくなかった。

 こんな弱々しい百奈は、百奈らしくない。

 いつも散々からかわれて、大人しくなって欲しいと思っていたのに、あの生意気な眼差しを向けて欲しいと切に思う。


「おにーさん、私…」


「大丈夫だ、百奈」


 俺は百奈を抱きしめた。

 強く強く抱きしめて、そして誓う。


「俺が守ってやる」


「え…」


「この一年、俺がお前のことを守ってみせるよ」


 そうだ、百奈が俺を頼りにしてきたというのなら、それに応えなくてどうするっていうんだ。


「俺は大吉引いたラッキーボーイなんだぜ?超凶の効果なんて、打ち消してみせら。だから安心しろ。俺がお前をどんな不運からも守ってやる」


 そう告げると、百奈の目尻に涙が溢れた。


「……くそざこおにーさんのくせに、かっこつけすぎだよ…♡」


「ほっとけ」


 そりゃクソザコだけども。

 自分を頼ってきた女の子に啖呵くらい切れないようじゃ、男がすたるってもんだろ。


「ふあああ…♡」


「ん?眠いのか?」


「あ、うん…安心したら、なんだか眠くなってきちゃった…♡」


 そう言って百奈は目を擦る。

 それを見て、俺はなんだか嬉しくなった。

 この生意気だった幼馴染に、本当に頼られているんだという実感が湧いてきて、心に勇気の火が宿る。


「いいよ。寝ろよ。見ててやっから」


「うん♡おにーさんが守ってくれるんだもんね…♡」


「もちろんだ」


 大きく頷くと、百奈は安心したように目を瞑り、やがてスースーと寝息をたてて眠りについた。


「…ったく、可愛い顔しやがって」


 こうして見ると、本当にあどけない顔をした、年下の女の子だ。

 絶対守らなくてはいけないという決意がますます強まり、俺は周囲に気を配って身構える。


 だけど不思議なことに、百奈が目覚めるときまで一度も不幸に見舞われることはなかった。





 一ヶ月。三ヶ月。やがて半年。そして11ヶ月と、月日は瞬く間に過ぎていった。

 その間、俺はずっと百奈のそばにいた。学校にいる間も、授業中以外は必ず一緒にいるようにしたし、登下校もそう。休日だっていつも一緒に過ごしてた。


 その甲斐があったのかはわからないけど、俺といる間は何故か百奈は不幸には合わなかった。

 ラッキーマンは見栄を張った虚勢だったけど、案外本当に大吉の加護があったのかもしれない。

 少なくとも、この一年に関してはそうであったと思う。


「もうすぐ一年が経つね…♡」


 そして現在は12月31日。大晦日だ。

 あのおみくじを引いた日から、一年が経とうとしている。

 それはつまり、超凶の効果が切れる時が目の前だということだ。


「そうだな」


「この一年、色んなことがあったね…♡そのたびに、おにーさんに助けてもらっちゃった…♡」


 今、百奈との距離は吐息を感じられるほど近い。

 最後の瞬間までなにが起こるかわからないから怖いという百奈の意見を組んで、俺たちは体をピッタリと寄せ合って俺の部屋のソファーに座っている。


「言っただろ。守るって」


「うん♡本当に守ってくれたよね♡おにーさん、いつもかっこよかったよ♡」


 この一年で、百奈との随分距離は縮まったと思う。

 いつもはからかうだけだったのに、今は素直に褒めてくれる位の仲にはなれていた。


「そりゃよかった。なんとかなるもんだなぁ。クソザコだった俺でも、やればできるって自信持てた気がするよ」


「……そんなことない」


 ギュッと、百奈の小さな指が俺の指に絡みつく。


「おにーさんは、最初からずっとかっこよかったよ♡昔から、いつも私のわがまま聞いてくれたもん♡いつだって優しくて頼りになって…それに」


 気付けば百奈の顔が、目の前にあった。


「大好きな、おにーさんだった…♡」


「百奈…」


「ねぇ、おにーさん♡私ね、日付が変わったら言いたいことがあるの♡」


 その先の言葉は分かってる。

 でも、先に言わせたくない。


「そっか、奇遇だな。俺もだ」


 だって、俺も同じ気持ちだったから。


「……それって♡」


「その先はもう少しお預けだ。ほら、もう一分切ったぞ」


 テレビではカウントダウンが始まっている。

 50秒、45秒、40秒と進んでいく。


「守るだけの関係じゃ、対等じゃないもんな」


「守ってもらうだけの関係じゃ、対等じゃないもんね…♡」


 言葉がハモって、俺たちは顔を見合わせ笑った。

 ほら、やっぱり同じ気持ちだ。

 なら、その先の言葉はやっぱり―――


 カチン


 時計の針が重なった。

 日本中ではこの瞬間、新年を祝う言葉が呟かれていることだろう。


「―――――」


 そんな中で、俺達が口にしたのは全く別の言葉だった。

 それを告げ合い笑った後で、俺達は改めて明けましておめでとうを口にした。


 そして今年もよろしくお願いしますとも。

 だけどそれは、これから先ずっと続く、新しい関係を紡ぐための言葉だった。

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いつも俺をからかってくるメスガキ幼馴染が、新年のおみくじで超凶を引いて不幸まみれに陥ってわからせられていたが、大吉引いた俺のそばにいれば収まるらしく、まるで離れようとしない件 くろねこどらごん @dragon1250

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