JAN.4, 2022
アリーと身の上話をした。彼女の生い立ちの断片を聞いた。曰く
「幼いころの私は25歳にどんなイメージを抱いていただろうか。結婚して、家庭に入って、もう子どもも2人ぐらい産んでいる感じだろうか。25歳、それはお母さんが私を産んだ歳で私が来月迎えようとしている歳。
お父さんは私が産まれた時は29歳で、33歳の時に私の前から姿を消した。通っていた幼稚園から帰ってくると、お母さんが食卓に伏していたのを今でも覚えている。忘れろと言われても無理だ。だからお父さんというものがイマイチわからないしずっとそう。これは自分の周りではありふれた風景で、小学校ではクラスに似たような境遇の子が5,6名はいた。まぁ似ていると言っても単に片親というだけしか共通項はないんでけれど。お父さんについてよく知らないと言っても軍属でないということぐらいは知っていた。
それならばお母さん、一緒に暮らしていた彼女のことはどれぐらい知っているのだろうか?実は大して知らない。自由奔放と言うには生真面目で、水商売をしていた割には甲斐甲斐しく私の面倒を見ていた。週の3分の2は惣菜だったが米ぐらいはきちんと炊いていった。
さすがに習い事とかをする余裕はなかったから小学校の頃はずっと家に居てテレビを見ていた。余談だが当時のお家には今ならミニマリストと呼ばれそうなほど家具がなかった。本当にテレビと冷蔵庫と炊飯器ぐらいしかなかった。
幸せかどうかはわからないけど不満はなかった。テレビ見て、適当に宿題して、寝て、気が付いたら高校に通っていた。一番近い高校に入って、バイトとかしながら、大学でも行こうかと考えていた。それも味気なく叶った。奨学金とか授業料免除の手続きとかして、さぁ入学、という矢先に母が消えた。
本当、どこ行ったんだろうか。警察に届けとかも出したけれど未だに梨の礫。手続きに際して会ったこともないような親戚に出くわしたりしたけれど今ではもう付き合いすらない。困ったら連絡して、と社交辞令的に電話番号とか渡されたけど掛けたことないな。だから結局お母さん、あなたについてもイマイチよくわかりません。中身のある会話をした記憶もないし、これがネグレクトなら恨みの一つでも抱くのでしょうか。私は野生動物よりもあっさりと親離れをしてしまった。そして、その後のことは、まぁ、追々。」
そしてマチル夫は何かを知っているらしい。彼は、本当に、何でも知っている情報屋だ。そういう能力と星の下に生まれた奴だ。
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