第14話 サマダ、クロと再会
ツル達が城に着くと、タカが出迎えてくれた。
「そうか、サイとサルが。そして、ヒョウが不明。なるほど。しかし、サマダがそれほどのやり手だったとは。わかっていると思うが、城内にもう来てどこかに隠れよった。今、捜索中だが、見つかっていない。」タカは、状況を伝えた。「ニンジン城にも、変装して入ったと聞いております。破壊した壁の瓦礫に紛れて、ここの住民になりすましているに違いありません。」ツルは、現状を推し量ると会釈し、門から城内に入っていった。
サマダは、城に続く大通りを歩いていた。彼の狙いシマウマが城にいると、狙いを付けているのだ。
その通りには、左右に様々な店が建ち並んでいる。レストランに服屋、小物屋、武器屋などなど、人が多く、紛れ込みやすいのは彼にとってメリットだ。
しばらく歩くと、中央に巨大な噴水がある大広場に出た。その広場からは、右と左にそこそこ大きい通りが伸びている。
噴水の周りには、待ち合わせをしているような人達や子供を噴水内で遊ばせて、それを眺めている親達など、多くの人々がいる。
サマダは、静かな店で食事をしたかったので、広場を右に曲がって、人通りの少ない小道を探した。
しばらく行くと、人通りもまばらになっていき、そのうち左手にちょうどいい路地裏が見えた。入ると、さっきまでとはうってかわって、寂れた雰囲気になり、オシャレのない飲食店が建ち並んでいた。
そこをさらに歩くと、「宿屋、レストラン」の看板が見えた。(疲れていたから丁度いい、ここなら、そう見つからないだろう)と思うと、中に入いった。
入ると、店の大将さんが出迎えてくれた。「いらっしゃいませ。お客様はご予約をなさっておりますか?」「いえいえ、私は、丁度通りかかって、良いなと思って入っただけです。まだ、朝方ですが、今夜の部屋の予約は可能でしょうか?」「ええええ、そういうことでしたか。観光で御座いましょうか。今夜は一部屋ちょうど空いております。しかし、申し訳ないことなのですが、その部屋の昨晩のお客さまがまだ退出しておりません。すぐのご案内は、致しかねます。が、退出が昼頃を予定しておりますので、それまでお待ちいただくことは、可能でしょうか?」「ええ、仕方ないです。では、その前にここのレストランで早めの昼食でも頂きましょうか。」「さようで御座いますか。旅もお疲れのようで。席に着いて、ゆっくりしていってください。」
サマダは、レストランに案内され、席に着くと、(もしかしたら、これが人生最後の食事になるかもしれないからな。好きな食べ物頼もう。)と思った。彼は、好物のたらこスパゲッティを注文すると、待ち時間にレストランの雰囲気を楽しんだ。
寂れた道の普通の店に見えたわりには、黄金色の模様が入っている椅子だったり、端っこに渦巻きがある木の机だったり、レストラン自体は広くないのだが、市民にまで行き渡るほど国の財政が暗喩されているようだった。
(ニンジン国とは、違うな。)そう思いながら、サマダは、故郷がこの国の金のために滅ぼされたことを熟慮していた。
食事を終えてもまだ昼前だったので、下見を含めた観光のために広場へ戻ることにした。
戻ると、広場はさっきよりも人で賑わっていて、高くなった太陽のせいもあってか、熱気を感じるようになっていた。
城の方への大通りに入ると、急に後ろから「サマダさんですよね?」と誰かの声が聞こえた。
サマダは、焦った。逃げ場のない窮地に追い込ませたのかと、ビクビクしながら、振り返った。
そこには、麦わら帽子を被った殺したはずのクロが立っていた。
サマダは、びっくりしながら、「お前、殺したはずじゃ、それにどうして俺が分かった?」と聞いた。クロは、笑いながら、「サマダさん思い出しましたよ。あなたがなぜそこまで復讐に駆られているのかを。ここだとなんですし、何処か人の少ないところで話しませんか?」
サマダは、クロから殺意を感じられなかったので、彼に従うことにした。
案内されながら、路地裏の静かなバーに入ると、クロは個室を注文した。席につくと、クロは、メニューを2人が見えるように置いた。「何にします?酒でも飲みましょう。なんせ、もう戦う必要はないのですから。」このクロの発言に、サマダは、は?っとした顔をするも(酒を飲めるのもこれで最後かもしれないし。)と思い、ネーミングセンスのいい酒を一つ頼んだ。
2人の酒が届き、一息つくと、クロは話し出した。
「まずは、私が生きていることについて話しましょう。ニンジン城近くの荒野で私は確かに貴方に殺された。確かにそうなのですが、私は殺されることを予想して、自身にとある禁術をかけていました。魔王を取り込んだあなたの力は、未知数だったのです。そして、その禁術とは、死んだ自分を生き返せるもの。本来、死者蘇生は上級術者には、なんでもないことです。なので、それ自体はなんともないのですが、死んだ自分を生き返らすものは、デメリットがあります。それは、自身の体と魂にダメージを与えてしまうことです。しかも、相当なダメージ、あなたともう一度戦えと言われても無理なくらいです。」
サマダは、流石クロと感心するも、彼の態度に疑問を抱いた。
「それはわかった。しかし、なぜだ?俺はお前やオノ、アイ、他にも多くの人間を殺した。怖くないのか?憎くないのか?」「少しはあります。しかし、それには理由があるのです。サマダさん、あなたがそれほどシマウマへの復讐に駆られる理由が。」
サマダは、びっくりした。「お前、シマウマの件、知っていたのか?」「ええ、今あなたの呪いを解いてあげます。」
そういうとクロは、酒をまた口に含んだ。
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