第13話 サマダ、ライゴウ城に潜入
サマダは、後戻りできないところまで来ていた。MPは最大値の四分の一にまで減っている。しかし、ライゴウ国には、強者がまだまだいることを彼は知っている。ツル、ウマ、ウサギ、タカ、そして、シマウマ。タカは、ヒョウと並ぶ国の大御所で、強さも彼並みである。シマウマは、ウマの父親であり、ライゴウ国歴代最強と謳われた男、そして、サマダの、、、、。
サマダの狙いは、シマウマの首だった。サマダの故郷は、彼が10歳の頃にライゴウ国に滅ぼされた。その時、軍率いて攻めてきたのがシマウマ、彼はサマダの目の前でサマダの父親を殺したのだ。
サマダは、それを思い出して、薄ら涙を浮かべていた。
夜が完全に明け、多くのものが見えるようになった。サマダは、腰袋の入れていた簡単な小麦の固め物を口にすると、作戦を立てた。
ウマがツルの元に戻ると、サイ、サル、ヒョウの状況を伝えた。
ツルは、なるほどと考えるとこう言った。「俺たちでは、対処しきれないかもな。ウサギさんと、タカさんを集めよう。サマダも疲労は溜まっているだろうから、4人で行けば、勝てるかもしれない。一応だが、同盟国からの援軍も申請しよう。」
ウマは、ツルと意見が一致したことに安堵した。続けて、ウマは、「サイさんとサルさんが連れていた2番隊、4番隊がまだ前線に残っています。タカさんとウサギさんを呼んで、挟み撃ちしましょう。」と提案した。それに対して、ツルは反論した。「ああ、しかし、ウサギさんは来てくれるか。タカさんも病み上がり、城に戻って軍営を立て直そう。」「だけど、2番隊、4番隊の兵士だけでは、サマダを抑えられません。逃げられてしまいます。それに、彼らを見ごろすんですか?」「仕方ねぇだろ、時と場合によっては、味方を見捨てるしかないことだってあんだよ。」「そうですか。なら、私は2番隊と4番隊を救出しに向かいます。ツルさんは、ここで待っていて下さいね。」「あ?今は一刻も早く、ウサギ、タカと合流して、戦力を上げる時間だろ。行くなら、一人で行け。お前の5番隊は、俺らと一緒に城へ戻るからな。」「いいですよ!一人で行きます。最悪、僕の逃げ足ならサマダから逃れきれますから。」「おい、本気で言ってるのか?サマダを舐めすぎだろ。瞬足のヒョウさんを倒した男だぞ。」「ヒョウさんが負けたとは限らないでしょ?逃げ切ったかもしれないし、勝ったかもしれない。」「ああ、そうだとも。逃げ切れたかもな。なら、行ってこい。」
2人の口論は白熱し、周囲の兵士達に不安感をもたらした。ウマは、最悪な雰囲気で軍を離れ、馬に跨り、森の方へ走っていった。
ツルは、号令をかけるともしもに備えて陣形を保ちつつ、城へ退軍しだした。
ウマは、再び森に戻ってきた。彼は、サマダに気づかれないように馬から降り、歩いて森を渡ることにした。
一方、その頃サマダは、強行突破を企てていた。彼の目的は一つ、シマウマの死、それさえ上手くいけば、あとはどうでもいいのだ。(森終わりから、ライゴウ城まで約10キロ。バハムートで飛んでいけばすぐ。城に着く頃にはMPも残りわずかだろうから、千手観音での回復は出来ないだろうけど。)
サマダは、バハムートに変身すると、城の方へ羽ばたいていった。
ウマは、バハムートの羽ばたきを見た。見た上で、前線の兵士を回収しに急いだ。(数が増えれば、敵が困る。急いで集めて、急いで戻ろう。)
最後尾にいた7番隊の兵士が声を上げた。「ああ!あれは、バハムートじゃないか?おい、ツル様まで流せ!くそっ、俺たちが分裂しかけているタイミングを狙ってきたのか。」
情報が流れてきて、ツルはバハムートに気付くと、1番隊に敵の撹乱を7番隊8番隊に軍全体の防御を命令した。
10人くらいの1番隊員が、上空を旋回し、ドラゴンにちょっかいをかけまくった。すると、バハムートはスピードを落とし、ウロウロし出した。
サマダは、MP節約のため、あまり技を使いたくなかった。しかし、1番隊に隠れて、ツルの殺意が見えていたので、反撃するしかなかった。
サマダは、火玉を正確に打ち、1番隊に道を開かせると、再びスピードを上げた。
ツルは、水力を溜めていた。そして、サマダが通り過ぎる直前に、水圧で飛び上がり、彼に斬りかかった。
しかし、ぎりぎりで剣は当たらなかった。そのまま、バハムートがものすごいスピードで遠ざかっていくのが見えた。城まで5キロしかない。
「まずいな。」ツルは、つぶやいた。
サマダは、城と同時に、その周りを一周している城下町が見えた。
(俺の予想だが、ウサギが城下町全域に防護壁を作っているはずだ。彼女の壁を破壊するには、白爆弾10回分必要だと聞いたことがある。これで、ほぼそこを尽きるが、やるしかない。)
サマダは、バハムート最大魔法の大火玉を作ると、薄ら見える防護壁の真ん前で放った。
空にヒビが入ると、壁の内側に大爆発が起こった。壁近くに立っていた30世帯くらいの家々が吹き飛び、更に遠くの家々の上に落下した。
サマダは、煙に紛れて人間に戻ると、顔を変え、路地裏にさっと降り立った。
ウサギら、防御班の9番隊は唐突な襲来に何も出来なかった。
破壊された瓦礫に集まり、サマダの姿を探すも、住民の死体しか見つからなかった。
「これは、わし史上最大のミスじゃ。」ウサギは、かなりの焦りを見せた。
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