第11話サマダvsサイ、サル
サマダは、森の茂みに隠れ、回復魔法を唱えていた。彼は、回復魔法が得意な方ではないようで、時間をかけても完治には至らない。斬られたのは左腕の内側で、5分かけたが血が止まるくらいで、まだズキズキとした。
彼は、ふーっとため息をつき、安静にしていると、近くの物音に気が付いた。ガサガサ、草に外力が加わった音が聞こえる。その音は、次第に増え、複数人がこちらに歩いてきているように思えた。
サマダは、息をひそめて、その音が通り過ぎ去るのを待った。しかし、その音があまりにも多く増え、見逃してもらえないくらいの大人数がこちらに向かって来ているように感じたその時、彼の隻眼が発動した。
(ここを通る、強い男二人が。一人は猿の様な、もう一人は巨大な騎士の様な。)
サマダは、周囲の地中に魔王の体を張り巡らし、ゆっくりとその場から離れた。
サルは、サマダの分身を倒した後、後から来た部下と合流した。「サル様、好勝負、素晴らしかったです。先程、サイ様のしもべ達がこちらにやってきまして、サイ様がサマダの分身を2体やっつけたとの報告がありました。」「そうか。」サルは、クールに返答すると、テントへ戻り始めた。
しばらく歩くと、城の方から、赤い光が薄ら見えた。サルは、まさかサマダ本体が突破したのかと一瞬焦った。そして、森に光弾はもう上がっていない。彼は、走り出し、急いでテントへ戻った。
しばらく走っていると、前から光が見え、その光に近づくと、それはサイのものだとわかった。
サイは、「おう、もう光弾が上がってこねえから、サマダに前線を突破されたのかと思って、ここまで来てしまったよ。どうだ、そっちには、二つ光弾が上がっていたけど、倒しきったか?」と聞いてきた。それに対し、サルは、「2つ?僕は1つしか見てないから、1人だけしか倒してないですよ。」と答えた。すると、サイは、顔を青ざめて、「はっ!お前、いや、たしかに2つ上がってた。サマダに突発されたか。あー、後衛には、ヒョウさんがいるが、とりあえず、念の為、部下達は前線に残して、俺たちだけで下がるぞ。」と指示した。サルは、己の失態に気付き、顔が俯いた。
2人は、ヒョウの陣営に向かった。「まあ、気にするな。ミスは誰にでもある。ヒョウさんがそうやられるとは思えんからな。あの人は、今うちの国で1番強いぞ。」サイは、そう言うと、焦るサルを落ち着かせ、ゆっくり一緒に歩いた。サルは、サイに感謝の気持ちを見せつつも、焦る気持ちはなかなか消えなかった。
そろそろ森も出るかと思われるところで、彼らは何者かの殺意を察知した。彼らは立ち止まり、武器を手に取り、ソロソロとゆっくり前進することにした。
サマダは、その2人に勘付かれたのか彼らの物音がゆっくりになったので、先手を取ることにした。
隻眼で、数秒後2人が通る位置を予知し、先端のとんがった彼の腕が勢いよくそこに伸ばした。
その瞬間、隻眼が不幸を知らせにきた。2人は、すらっと腕をかわすと、武器を構えて突進してくるらしい。サマダは、張り巡らしていた魔王の体からも針を彼らに突き刺すことにした。
サマダの腕が伸びると、また隻眼が不幸を知らせた。地中からの針もかわされるのだという。
しかし、もう遅い。サイとサルは、2つの攻撃をかわしきると、前方の目に見えない敵にきりかかった。
その時突然、彼らの目の前に赤い巨大な炎が現れた。そして、その炎は、物凄い勢いでこちらへ向かってくる。彼らも炎の方へ突進していたので、避けられない。サルは、咄嗟に石に変化し、耐えることができた。しかし、サイは、どうしようもなかった。火玉をもろに食らったサイは、丸焦げになりながら、すっとんころころと数メートル飛ばされた。
サルは、火玉が通り過ぎると変化を解き、サイの安否を確認しに行った。
サイは、一命をとりとめていた。火玉と接触する前に急所だけはと、分厚い木の壁を形成していたようだ。
サマダは、人に戻り、横たわる大男とそれをいたわる若者を見て、彼らの能力を分析し出した。大男は、木の術を使い、触れた木を操り人形のようにできる。若者は、木製の如意棒を使い、変化の術、天変地異の術などなど、数多くの術を持っている。
サマダが分析しているうちに、サイがふらふらと立ち上がり、術を唱えた。しかし、なんだその術かというような感じで、サマダは木の攻撃を避けると、しれっと攻撃に使われた木々の中に魔王の体を取り込ませた。
サイが、再び術を唱えると、待ってましたと言わんばかりか、サイが動かした木から針の形をした魔王の体が飛び出してきて、サイとサルに襲いかかった。
サルは、なんとか避けることができた。しかし、咄嗟の出来事でサイは避けることが出来ず、心臓をえぐりとられた。
サルは、言葉にならない大声を上げた。長い間の恩師であり、さっきまで励ましてくれた人が死ぬという現実が頭をよぎったのだ。(サイさんの心臓が、、、)サルは、目の前で立っている男がどうしても許せなくなった。激しく憎み、メラメラと心に火を灯した。サマダを睨み、武器を構え、相手の出方を探った。
サマダは、その光景を冷静に眺めていた。(如意棒持ちの彼は、分析よりもすばしっこいのかもしれない。それに、厄介な術を多く持っている。さて、どうするか、、、)
まず最初に先手を打ったのは、サルだった。自身の髪の毛を出来るだけ抜き、空中に撒き散らした。そして、身外身の術を唱えると、撒き散らした毛、一本一本が彼と如意棒になり、それらは百体をも超える数となった。それらは、サマダを包むように広がり、サマダに一斉に襲いかかった。
それに対し、サマダは、リヴァイアサンに変化し、大量のサルらを水でおし流した。そして、一瞬で人型に戻ると、すぐに最強魔物、ケルベロスに変化し、本物のサルに目がけて、突進した。
サルは、その3つ頭相手に如意棒を構えたが、ケルベロスの口から広範囲の毒が発射され、一旦避けることにした。
危険地帯にいたサルの分身は逃げ、安全地帯にいた彼らは、ケルベロスに襲いかかった。サマダは、彼らが一点に集中したのを見て、突進してる途中に、千手観音に変化し、周囲を一掃した。
サルの分身は悉く消滅し、サル本人もダメージを負った。背を向けた彼の如意棒は、千手観音の一振りで折れたのだ。千手観音、なんたるパワー、サルは脇腹から血を流した。
サマダは、サルの弱り具合を見て、とどめの一撃を選んだ。
人型に戻り、魔王の体をまた地中に張り巡らした。サルは、それを見て、死を覚悟し出した。(負ける、勝てない。さっきの一撃で深手を負ってしまった。くそ、くそ、くそ、、)
サルは、覚悟を決めたらしく、最終奥義を唱えることにした。「天変地異」彼がそう言うと、木が背伸びし、石が浮き上がり、砂が舞い上がり、そしてサマダが上空へ落ち始めた。
サマダは、落ち行く中で、地中からの針でサルにトドメを刺した。
サルが死んだのか、再び下に重力がかかると、サマダはバハムートで地上に降り立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます