第4話 ニンジン城崩落

 実家の居間で、クロは彼の父と母に、旅の土産話をしていた。

 そんな中、突然、家の外がピカッと光り、窓をツンツンと突く音がした。彼らは、びっくりした。しかし、クロだけは、瞬時に閃光伝書鳩だと察知し、窓を開け、手紙の文章を読んだ。

(サマダ 王殺し 帰還せよ)

 クロにはピンと来なかった。しかし、一大事だと思い、父母に用を伝え、父に一級の馬車を手配させた。この馬車を使えば、ニンジン城まで6時間で着く。クロは嫌な予感が頭によぎりつつも、サマダの戦闘傾向を馬車の中で思い出し、いざという時に備えることにした。

 (魔王の日記、サマダ殿は旅の途中でこのワードをよく使っていた。しかし、本当に魔王の日記が存在していたとは。あれには魔物を取り込む論文のようなものが書いてあったが。もしや、ずっとサマダ殿は……)

 次々と火の弾が飛んできて、ニンジン城は、穴だらけ状態になっていた。サマダは、ニンジン城の真横で、バサバサと生やした翼で宙に浮いている。

 彼と対峙しているのは、ニンジン城に開いた穴から顔を覗かせているモモだ。

 モモは、「貴様!貴様が今何をやっているのか分かっておるのか!!王の首を狙い、城までも。我が国だけじゃない、我が国と同盟を結んでいる世界の各国とも戦うことになるんだぞ!」と、訴えた。しかし、サマダは「俺様に勝てる奴がいるのか?この世に。前魔王を世界各国は倒せなかった。俺様は今その前魔王の力を手に入れている。それがどういう意味か分かるか?」と嘲笑った。

 モモは、「もういい、ここで殺す。」と言うと、背中に天使の翼を生やし、続けて「瞬息魔法突き」という技を披露した。

 サマダは、突進してくる光輝く彼女に対し、最強魔物アークに変身し、槍攻撃をし、そして、彼女と正面衝突した。力勝ちしたのはサマダ、モモはニンジン城に新しく穴を作る羽目になった。

 モモは、衝突する前に「絶対保護キューブ」を発動していたので無傷だった。しかし、アークの余りに強大なパワーにより、強大なキューブを作る必要があったため、モモは多くのMPをここで使ってしまった。

 モモは、頭の中で戦況を整理した。(キュウリの帰還を最優先にすることに。彼が帰ってきたら、また戦おう。)モモは、城の中に逃げるように入り、声の届く範囲にいた3番隊員に敵の撹乱を命じた。

 サマダは、元の人型に戻り、ニヤニヤと敵の貧弱さを心から馬鹿にしていた。その時、背中から、強い突風が吹き、不意を突かれたサマダは城に叩きつけられた。サマダは、いきなりのことで防御が出来なかった。そのため、生身で城にぶつかり、全身に大怪我を負ってしまった。

 ツカツカと音がすると、「キュウリが来たわね、意外と早かったじゃない。流石、国一の瞬足様。」とモモが姿を現した。次に、サマダを挟んだモモの逆側に、小さな竜巻が起こるとキュウリが姿を現した。

 血だらけのサマダを見て、キュウリは、「これで、コイツは動けないな。よし、じっくりと痛ぶってやろう。」と言った。サマダは、ギギギと歯を鳴らして、モモを睨みつけていたが、何かを思い付いたのか、ニヤニヤ笑い出した。

 モモが引くような表情をして、「こいつを気持ち悪いわ。早く殺しましょう。」とキュウリに言った。キュウリも、頷いたが、「しかし、さっきのバケモンみたいな姿になったのはなんなんだ。いや、今も何か得体の知れないもの見にまとっているけどよ。」と冷静になった。「これは、秘密に魔王がやっていた、魔物を体内に取り込む行為よ。彼の中には、魔物が住んでいるの。さっき、研究室で部下に調べさせたわ。」とモモ。「魔物を取り込む?そんなことが可能なのか?ほんとにそうなら、世の戦争はもっと悲惨になっているだろうな。」

 モモは、「一発瞬殺の突き」をサマダにお見舞いしようと武器を構えた。その瞬間、サマダは巨大な観音に変身し、全回復魔法を自身に発動した。その衝撃で、モモとキュウリは、吹っ飛んでしまった。

 続けて、観音の右手の槍を、体を一回転するように振り回し、周囲を一掃した。その衝撃で、ニンジン城は倒壊、振動波が丸く綺麗に広がっていった。城下町では、風圧で屋台が倒れる程度だったが、空の鳥達は下の家や教会の壁に叩きつけら、町人達を怖がらせた。

 キュウリは、倒れているモモを抱え、悠々と立っているサマダと対峙していた。

 「魔王を取り入れたとはいえ、流石にMPを使い過ぎてしまった。戦いは、終わりだ。じっくりと、国の再建に励むがいい。フフフ」と、サマダはキュウリに言い、翼を生やして、空へと去っていった。

 キュウリは、「貴様だけは…許さぬ。覚えておれ。」と、激しく苛立ち、サマダの後ろ姿をずっと見つめていた。

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