第10話
一年前、当時大学の二年だった女子学生が殺害された。犯人は彼女と同じ大学に身を置く男子学生だった。
死因は刺殺。チャイムに応じ、ドアを開けた女子大生の腹部を、凶器のナイフで一突きにしたという。
このニュースは各種メディアで取り上げられ、テレビには幾度となく、こちらにピースサインを向ける彼女の写真が映された。
犯人として捕らえられた男は、その殺害動機についてかく語る。
「彼女が他の男のものになることが許せなかった」
女子大生が命を落としたのは、彼女が意中の相手と交際を開始してからわずか三日後のことだった。加害者の男は退学を余儀なくされ、懲役刑が言い渡された。
他方、被害者もかく語りき。
宅配便か何かかと思って、不用意にドアを開けてしまったことがすべての元凶でした。刺された瞬間は、怖かったと言うよりは、素直に悔しかった。なんて呆気ないんだろうって。まだ彼とは一度もデートしてないのに、手すら繋いでないのに、二十歳にもなってないのに、これから楽しいことがたくさん起こりそうな予感がしてたのに、ああ、こんなところで人生終わっちゃうのかって。執念深いなあ、わたし。こんなだから、地縛霊なんかになっちゃったんですよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます