第14話 カズキの家

  2人は廊下に戻ってきた。

 タケシは、スマホで時間を確認すると2時半をまわっていたので、「そろそろ今日は帰らねぇか?お腹空いてきたでしょ」と言った。それを聞いたタケも、スマホを取り出して、時間を確認した。

「うーん、そうだね。それにしても、あんまり、いいもの見つかんなかったね」

 タケは、そう言うと、メモアプリを開いて、今回得られた情報を書き込んだ。タケシも、真似してメモアプリを開くと、撮った写真を貼り付けて下に説明文を書き込んでいった。

 タケは、自分のが終わるとまだ書き込んでいるタケシに向かって「早くして」と、口悪く言った。「待って待って」と忙しそうに指を動かすタケシに、タケは同じ言葉を繰り返して、急かした。

 しばらくすると、「ごめんごめん」と言いながら、タケシは、スマホをしまい込んだ。はぁー、とため息をついたタケが「5分待ったよ」と、主張してきた。

 5分?あー、意外と経ってるな

 タケシは、「いやぁ、すまんすまん」と照れ笑いしながら言うと、タケは、スタスタと右方に歩き出した。

 光の差し込む窓を超え、突き当たりを左に曲がってしばらく行った階段を降りると、そのまま廃墟の外に出た。

 まぶしっ!

 タケシは、予想以上の眩しさに目を細めると、頭がくらくらしてきた。蝉の鳴き声が空のように広がっていて、日常であったのだとこの時思った。

 2人は来た道を戻りながら、話し出した。

 「なあ、タケ。もしさ、ソウタさんもユウタの姉も自殺じゃなくて、他殺だったら、どうする?」

タケシは、そうさらっと聞くと、タケは、チラッとこちらを見た。

 「うーん。どうだろうね。でも、一つ正しいことは、廃墟にはホームレスがいたってことかな」

 「じゃあ、廃墟で起こった不可思議な出来事は、ホームレスの仕業ってこと?」

「もしかしたらね。ホームレスが住処を邪魔されたくなくて、やってたってことかも」

 タケの推理にも、納得がいく。しかし、廃墟外で自殺が起こっている、最低でも二組も。

 「なあ、タケ。電灯の光を見て、自殺した人って何人いるのかな?」

「俺は、二組しか知らないよ」

「ふーん」タケシは、再び思案に耽った。

 二組なら、偶然かもしれない。なんなら、カップルの方は行方不明ってだけで、死んだとは限らない。

 「なあ、タケシ。もし、ソウタが他殺されたとしたら、誰が犯人だと思う」

 タケが突拍子もないことを言い出した。

 「え、、、だ、だれだろ。ソウタの友人とか?案外、ケンジさんとか?」

 タケは、タケシの顔をじーっと眺めると、ボソッと「俺かもね」と呟いた。

 「へ?タケ、お前、人殺しなのか?」

 タケシは、タケの発言に突っ込む。

 タケは、「いや、そういうことじゃない」と焦ったように手首を横に振った。

 「お前、、マジで?」タケシは、震えるように言った。そして、首を振るタケに畳み掛けるようにこう言った。

 「なんで、ソウタさんを殺したんだ?どういう関係だったんだ?」

 「だから!俺じゃないんだってば。ソウタさんの顔も知らないし」

 やっぱり、誰かを擁護してるのか?タケ

 「じゃあ、ユウタが?」

「違う」

「カズキ?」

「違う」

タケが作ったように同じ調子で答えるので、タケシは、諦めてこう言った。

 「違うならいいよ」

コンビニの自転車に戻ってきた。自転車の有無を確認すると、2人はコンビニに入店し、タケシはスパゲッティ、タケはそーめんを買ってさささっと食べてしまった。

 「タケはどこか行きたいところある?」

 自転車に跨りながら、そう聞くと、タケは「強いていうなら、ケンジさんのとこかな?」と答えた。

 「ケンジさん?やっぱりあの人怪しいよなー」

「そういうことじゃないけど、、、」

 タケは、ペダルを漕ぎ出し、坂を降りていった。タケシは、タケを追った。そして、彼の横に付くと、「なあ、カズキんち行こうよ。いいだろ?」と語りかけた。無反応のタケに対し、タケシは、何度もしつこく語りかけた。

 「ケンジんち行こう。ケンジんち行こう、、、」

すると、タケは折れたのか、「わかった、わかった」と声を出した。タケシは、その言葉を聞くと、スピードを弱め、タケの真後ろに付いた。

 畑に出、街を通り、2人は山井市に戻ってきた。

 タケシは、黙ってタケの後ろをついていってた。タケシは、山井駅の横を通っても、自転車を返さず、カズキの家にしか行きようがない道に入ったので、安心してタケから少し離れて、ゆっくり走らせた。

 タケがカズキの家の前でブレーキをかけ、後方のタケシを振り返った。タケがじーっとこちらを見てくる中、タケシもカズキの家の前にたどり着いた。

 タケは、家の庭に自転車を停めると、チャイムを鳴らした。

 ピンポーン

 その間に、タケシも自転車を並べて、立てる。

 「はい?」カズキの声が聞こえた。

 「俺、タケ。ちょっと、上がってもいい?タケシもいるんだけど。ケンジさんいる?」

「あー、そっか。ケンジもしばらくしたら帰ってくるよ。開けるわ」

カズキの怠そうな声の後、プツッと音がして数秒後、ガチャと音を立ててカズキがドアから顔を出した。

 「入ってー」

 カズキは、顔を赤くして、額に熱冷シートを貼り付けていた。

 「カズキ、風邪引いてる?」タケシが声をかけた。カズキは、「まあ」と答えると、スッと家の中に帰っていった。

 鍵のかかってないドアをタケは開け入っていき、タケシも続いて入った。

 玄関に誰も立っていなかったので、タケシは、靴を脱ぎ、黙って忍足でカズキの部屋に向かった。タケも後ろから、ついてきているような気配を感じる。

 襖を開くと、カズキがベッドの上で寝ていた。

 「適当に座って」カズキは、こちらに気づいてそう言った。

 タケシとタケが床であぐらをかいていると、玄関の方でガチャと音がして、「ただいまー」とケンジの声が聞こえてきた。そして、水を流す音が聞こえた後、ぎしぎしとこちらに向かってくる足音が大きくなっていった。

 サーっと襖が開き、ケンジが顔を見せた。

 「お、全員そろってるじゃないか。カズキ大丈夫か?今から、話したいことがあるんだけど」

 カズキは、怠そうに体を起こし、足を床に下ろした。そして、ケンジは、話し出した。

 「今朝、ユウタがソウタ殺しで逮捕されたわけだけど、、」

 

 

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