第13話 電灯の正体

奥の鉄扉を開くと、正面に光が差し込む窓と、左の方に同様の窓、そして、鉄扉の右隣に階段があった。

 「同じ構造だね」と先頭のタケが呟く。

 タケシは、頷くと、「とりあえず、二階を回りたいから、左行こう」と言った。

 タケは、左に向くと、廊下をゆっくり前進し出した。タケシは、タケの背中に肘から先をぴったりくっつけて、ついていった。

 しばらく歩くと、「暑いから、離れて」とタケが文句を言ってきた。

 「いいじゃん」とタケシが、照れ笑いする。タケは、バレないように静かにチッと舌打ちした。しかし、物音一つしない空間で、誤魔化すことはできなかったようで、タケシが文句を言い出した。

 「あー、舌打ちしたなぁー。タケが怖いこと言うからだよ!」

タケは、「ん?」と少し考えると、「あー、あれね」と笑ってきた。

 ニヤニヤしながら、タケは、タケシの顔をチョロチョロ見出した。

 「なんだよ!こっちばっか見んなよ」

「へー、タケシって幽霊怖いんだね、意外と」

 タケシは、「危ないから、前見ろ!」と怒鳴って、タケの注意を前に向かせた。

 「はいはーい」

タケがそう言った瞬間、2人は右からヒヤリとした風を感じた。タケが、さっと横に光を当てると、歩いてきた廊下よりも少し狭い通路が伸びていた。

 「タケ、、」とタケシが呟くと、タケが頷く。

 2人は、同じ格好でその通路に入っていった。少し進むとすぐに、奥に正面壁が見えた。歩くたびにひんやりとした空気が向こうから流れてくるのを感じる。タケが身震いしたのをタケシは感じ、それに釣られて、タケシも、身震いしてしまった。

 「タケ、寒くないか?」と、聞いてみると、「寒い、代わって」と言ってきた。

 仕方ないな、ずっと前歩かせるのも悪いし

 タケシは、「よし」と声を上げて、タケから、懐中電灯を受け取ると前を歩いた。

 奥まで行くと、道は右と左に分かれていた。そして、ひんやりとした風は、右の方から、流れてきていることがわかった。

 タケシは、「どっちから行ってみる?」と、聞いてみた。

 「うーん。中庭なら、外だと思うし、右じゃないかなー」とタケが言った。

 タケシは、「じゃあ、右から行ってみるか」と言うと、足先を右に向けた。

 しばらく歩くと、出口が見えてきた。タケシは、出口に近づくにつれて、進むスピードを遅らせた。

 タケが「ビビりすぎでしょー」と馬鹿にしだしたので、タケシは、「じゃあ、お前が先行けよ」と喚いた。

 タケは、「はいはい」と言って、懐中電灯を受け取ると、さっさと歩き、出口の角を掴んだ。彼は、手の勢いも加えて、真っ暗な空間に突入していった。タケに遅れたタケシは、少し走って、急に立ち止まったタケの背中に衝突した。

 「うわっと」

タケシは、タケに重なりながら、彼の斜め前に倒れそうになったのを必死に持ち堪えた。タケは、無言のまま、前方に光を向けている。

 「ねえ、これ」

 タケの呟きに、タケシは、照らされている方を見た。

 そこには、どこにでもある街灯が立っていた。タケは、街灯の周りを照らし始めた。

 見える限り、ここは、床に土が敷き詰められていて、中心に街灯と、複数の雑草が生えている小部屋だった。そして、なにか撮影スタジオのような空間だった。

 「ここかな?」とタケが聞いてきた。

 「多分、そうかな。中庭って感じじゃないけど、、」

 タケは、街灯に近づき、下の方を照らし出した。そして、棒に盛り上がっている土を指で掃き出した。

 「何してるの?」とタケシが聞くと、「いや、電気繋がってるかなって」と返ってきた。

 タケは、しばらく棒の周辺を掘ると、立ち上がって、「分からない」と首を振った。

 タケシは、「貸して」と言って、タケから懐中電灯を取り上げると、街灯の上方を照らした。

 「電線に繋がっているわけでもないのか」

 その時、「あっ!」とタケの声が聞こえた。

 「どうしたんだ?タケ?」

 タケの方を見ると、彼は、いつの間にか部屋の反対側に立っていた。

「今、電灯照らしてたでしょ?こっちから見たら、電灯が光っているように見えたんだよ」

タケシは、半信半疑で、懐中電灯をタケに渡すと、「じゃあ、タケ照らしてくれよ」と言った。

 タケがその場から、電灯を照らすと、タケシは、さっきのとこに戻り、電灯が微かに光っているのを見た。

 「ほんとだ!」

「でしょ?もしかしたら、光るってのは、偶然って可能性ない?」

「もしかしたら、わからんけど」

 タケシは、「ちょっと待って」と言って、スマホを取り出し、フラッシュをオフして、電灯にカメラを向けた。タケは、再び光を電灯に向けると、タケシがシャッターボタンを複数回押した。

 タケは、タケシが写真を確認している様子を見ると、「いい?」と言い通路に戻り出した。そして、彼は通路に入る直前にタケシを振り返って「ここにずっと居ても意味ないからもう一方の方行こうよ」と付け加えた。

 タケシが頷くと、タケはスタスタと歩いていってしまった。タケシは、スマホのライトを向けながら、タケを追いかけた。

 分かれ道で、タケに追いつくことができた。足音で気付いたタケは、真後ろのタケシを方を見て、「次、こっち行くよ」と真剣そうな顔を見せた。

 頷くタケシの顔を見て、タケは、スタスタと前に進む。しばらく歩くと、扉が見えた。近づくと、扉の上方に張り紙が貼ってあり、[店長室]と書かれていた。

 タケは、躊躇なく、ドアノブを捻って開け、中に入った。タケシも続いて入ると、そこは簡易な机と椅子だけが置かれていた。扉から見て、右側に大きめの窓があり、部屋が明るく、埃が隅に大量にあるのがわかる。

 「ここには、なにもないね」とタケが単調に言った。

 タケシは、無言のまま部屋を見渡した。

 タケは、「次行こ」と言って、タケシの腕を通路に引き戻した。

 

 

 

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