第11話 朝
目を覚ますと、知らない天井が見えた。体を起こすと、昨日の疲労からか、体がガチガチに痛かった。
ベッドから出て、側のソファーに手をかけて、反対側の座るとこを覗いた。タケがクッションを枕がわりにして、薄い毛布をかぶって寝ている。
まだ、起きてないか、、
タケシは、そう思うと、部屋に掛けてある時計を探した。
9時23分くらい?
ぐーっと伸びをして、洗面器に向かい、顔を洗った。
とりあえず、昨晩タケは死なずに済んだ
ポケットに手を入れ、スマホを取り出した。アプリにとっておいたメモを眺めると、タケが言ったこと、ユウタが言ったことを確認した。
ケンジとユウタがグルで、ユウタにはケンジに従う理由があった。そして、ソウタ以外にも、ユウタの姉が例の電灯の光を見て、行方不明になっている。そして、もしかしたら、死んでいる。
ユウタの家の家族構成は、父の連れ子3人と父と母の、血のつながった子供4人の大家族だ。兄弟は、男5人、女2人で、その中でユウタは1番下らしい。連れ子の1番上はもう30代で所帯を持っているらしく、相当年が離れているため、ユウタが生まれてくる前に、もう兄弟は何人か独り立ちしていて、ユウタも面識が少ないことが多いらしい。
ユウタには、姉が2人いる。そして、その2人のどっちかが彼氏と行方不明になった。駆け落ちにも見えるが、真相はわからない。
「おはよう」とタケの声が聞こえた。
タケシは、廊下を塞いでいることに気づき、道を開けると、タケは洗面器に向かった。
「ご飯、一緒に買いに行こう。コンビニでいいよな」と、タケシは、タオルで顔を拭いているタケに言った。
「一緒に行くの?俺、何欲しいか注文するからさ、まとめて買ってきてくれない?」
「いや、一緒に行こう。一人だと危ないだろ」
「もうちょっと寝たいんだよね」
タケは、可愛く笑顔を作った。
「ダメだ。どうせすぐ目が覚める。それに、明るいうちに廃墟行くんだろ?もたもたしてられないじゃん?」
「だったら、一人でやっさと行ってきなよ。ここで待ってるからさ」
そっか、こいつ朝苦手だったよなー
タケシは、頭を抱えながら、「よし、わかった。俺が一人で行ってくるから、ここで待っていてくれ」と言った。
タケは、好きなおにぎりの具を言うと、1000円札を手渡してきた。タケシは、それを受け取ると、部屋を出ていった。
エレベーターで、LINEを確認すると、母から来ていた。
(昼ご飯も晩ごはんも用意してたのに、食べてくれなかったのね。お母さん、悲しいわ〜 昨晩は、お友達と泊まってきたのね。いつ頃帰ってくるのか、連絡下さい)
昨晩、寝る前に送ったLINEの返信だった。
(いつ帰れるかわからない)と、送信すると、カズキのLINEを開いた。エレベーターが一階に着いたので、降りて、ロビーまで歩いた。
(昼から廃墟に行くけど、一緒に来る?)と、送信しかけたが、彼への疑いもあったので、止めることにした。
とりあえず、グーグルマップで近くのコンビニを探した。タケシが不在中にタケが襲われることがあるかもしれないので、急足で買い物を済ませると、部屋まで帰ってきた。そして、扉の前で、タケに電話をかけると、部屋が開いた。
どうやら、タケは無事だったようだ。タケシが部屋に入ると、タケは嬉しそうにビニール袋を受け取り、奥のベッドルームへ行き、品分けをしだした。タケシが手を洗い、ベッドルームに行くと、タケは、ほぼ彼の分を完食しようとしてた。
「お、少なかったか?いうても3つは買ってきたからな」
タケシがそう言うと、タケが「いや、もう10時前だからね。俺んちの朝食、いつも6時半からだから、お腹空いちゃって」と答えた。
そのくせ、朝は弱いらしい
タケシも朝食に手をつける。
買ってきたのは、蕎麦と菓子パン2つ、15分くらいかけて食べた。その間、タケはテレビをつけ、ニュース番組を観ていた。タケシもちょくちょくテレビに目をやったが、行方不明に関する情報は全く流れなかった。
ご馳走様と心の中で呟くと、タケのゴミと一緒に、コンビニのビニール袋に入れた。そして、それをゴミ箱に捨て、身支度を始めた。
「タケ、そろそろ行くぞ。明るいうちに行きたいからな」
タケシは、布団を畳んで、隅に寄せ、その上にタケが使っていた毛布を乗せた。そして、ひと通り忘れ物チェックをしていると、タケが洗面所の方を見にいってくれた。
「こっちは、大丈夫だよ」
「よし、行くか」
2人は部屋を出て、ロビーに鍵を返しに向かった。
エレベーターで、タケシはタケにこう聞いてみた。
「タケのとこの親はどうだった?いきなり泊まったこと怒ってた?」
「いや、そんなに。まあ、もう高校生だもんねー。許してくれるっしょ」
1の数字が灯り、チンーと音とともに、扉が開いた。
「まずは、自転車が必要だね。俺らの家に戻るよりも、レンタルサイクルで自転車を借りた方が早いと思う」
タケが降りながら、声を出した。
タケシは、「確かに、そうだな」と返事した。
2人は、山井駅前のレンタルサイクルまで来た。
借りるには、本来、証明書か長期契約カードが必要だ。2人は、それらを持っていなかったのだが、店長とは顔見知りだったので、住所と名前を書くだけで、借りることができた。
自転車に跨ると、タケシは、グーグルマップを開いた。「これの指示通りに行くぞ」とタケに声をかけ、彼が頷いたのを確認すると、自転車を発進させた。
住宅街を超え、田んぼの横を走り、山の周りをぐるぐると登る車道を、自転車を降りて登った。
平坦な、広場が見えてきた。それは昨晩来たコンビニの駐車場だとわかった。夜だと、わからなかったが、そこは結構広い。
「ここから、徒歩15分だ」
タケシは、タケに声をかける。
タケは、「うん」と頷き、スマホを覗いた。
続けて、「ここから、廃墟まで自転車で行けるっけ?」とタケシが言った。
「うーん。朧げだけど、砂利とかあったような。借り物だし」
2人は、自転車をコンビニのそばに停めることにした。
タケの提案でコンビニでお茶を買うと、2人は廃墟への道に入った。
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