第9話 2回目の8月3日
ケンジは、車に戻ると、ガチャっと鍵ひねって、運転席の扉を開いた。
彼は来た道を振り返ると、「おーい、コンビニ寄るかー?」と叫んだ。
カズキは、後ろを振り返る。彼の後をタケ、ユウタ、タケシの順で歩いていた。
カズキは、近くのタケに話しかける。
「タケ、コンビニ寄るか?」
「うん、喉乾いたから、寄りたいな」
それを聞くと、カズキは、ケンジに「よるー」と叫んだ。
ケンジは、指でOKサインを出すと、「先、車乗っとくわ」と言い返した。
タケシが車に辿り着くと、ケンジだけが中にいた。
コンコンと運転席の窓を叩き、それに気づいたケンジは、後ろのドアのロックを解除した。タケシは、後部座席にドサッと座り込んだ。
「あれ、カズキ達はどこ行かれたんですか?」
「そこのコンビニに行ってるよ」
ケンジは、指を差しながらそう言う。
「あー、俺も欲しいな」
タケシは、そう呟くと「ケンジさん僕も行ってきます」と言い、車を出て行った。
タケシと入れかわりにユウタが車の中に入った。
タケシは、MATCHを買うことにした。一本手に取り、カズキの次に、レジに並んだ。
「カズキ、さっきはごめんな。疑って」
「いいよいいよ」カズキは、笑いながらそう言ってくれた。
カズキと車に戻ると、ユウタが眠りについていた。カズキは、助手席に座り、タケシは、ユウタを押しながら、三列目に座った。
「よし、全員揃ったな」
ケンジは、後ろを見ながら、そう言うと、車のエンジンを動かした。
「着いたよー」
タケシはケンジの声で目を覚ました。どうやら寝てたみたいで、ユウタに肩を叩かれている。
外に滑り出すと、蛇公園前にいることがわかった。そして、ケンジが優しく語りかけてきた。
「大丈夫、一人で帰れる?家まで送ってこうか?」
顔が悪いとか言われてたし、気絶したし、心配されてるのかなー
タケシは、そう思いながら、「大丈夫です」と胸前で右手を横に振った。
「そっか、良かった良かった」
ケンジは、そう言うと、運転席に戻り、助手席に座っているカズキと車で帰っていった。
「俺たちも帰るか〜、タケは、、、、まあ、大丈夫かな」ユウタは、そう言うと、バイバイと手を振って一人帰路に着いた。
タケは、タケシと無言でしばらくいたが、気まずくなったようで、「俺も帰るよー。また、明日ね」と言って、彼も帰路に着いた。
タケシは、タケを見送ると、蛇公園に入り、ブランコに座った。上を見て、空の星をのんびり眺めた。
人生で1番星が見える夜だった。
ピピピピッ、、、、ピピピピッ、、、、
はっと目を開くと、カズキがそばにいて、少し離れたところにユウタとタケが立っていた。
タケが「12時だよー」と涙声で言っている。
ここは、、
タケシは、懐中電灯をそこらじゅうに向けた。すると、すぐホームレスの死体を見つけた。
「タケシ、俺たち戻ってきたみたいだな」
カズキが耳元で囁いてきた。
タケシは、ふらっと立ち上がるとユウタの前でしゃがみ、優しく話しかけた。
「ユウタ大丈夫か?ホームレス倒してくれて、助かるよ」
ユウタは、「大丈夫だ」と答えながらも、よく見たら、汗ダラダラで顔を青ざめているようだ。
「本当に、大丈夫か?顔色悪いぞ。気にしなくていいから、俺たちのためにやってくれたんだよな」
ユウタは、タケシを一瞬睨むと、下に俯いてしまった。
「とりあえず、俺はケンジに電話するよ」
カズキの声が後方から聞こえる。
「タケシは、タケにループについて話してくれ」
タケシは、カズキの言う通り、タケにこれまでのことを話した。
説明終わる頃にケンジがやってきた。
「おっすー、したいはどこに?」
ケンジは、キョロキョロし、足元の死体にびっくりした。
「これかー、うん、まあ、よしっ、これは俺たち5人の秘密にしよう」
「これ見つかったら、俺捕まりますかね?」ユウタがケンジに聞いた。
「まあ、殺人は殺人だもんね。ユウタ君以外にも、俺たちだって捕まるだろうな」
「事故とかにできないですよね?」
「刺し傷があるから、厳しいだろうねー」
ユウタは、はぁとため息を吐くと、じっと下を見つめ続けた。
「まあ、見つからなければいいよ。ナイフは?せめて、血は拭いとこう」
タケシは、タケに「テッシュあるよね」と言って、大量のテッシュを手を取ると、ケンジに渡した。
「おお、ちょうどいいね。ありがとう」
ケンジは、刃の血を綺麗に拭き取ると、「指紋が残ってるから、これは俺が持って帰ってやるよ」と言った。
ユウタは、返事をしないどころか、無反応だった。
「俺、下見に来たことあるって言ってたじゃん?一階の裏手に井戸があるんだけど、そこに死体を隠すってのがいいと思うんだ、どうかな?心霊スポットの井戸なら、人もそんな寄り付かないでしょ。発見も遅れるだろうな」
「いいと思いますよ」とタケシは、即答した。
他の3人が無反応だったので、ケンジは、「そうだよね」と言うと、死体の肩を持ちあげた。
「タケ君、死体の足持ってくれる?あと、カズキ、先頭でライト照らしてくれ」
3人が、歩き出すと、タケシは、ユウタの肩に手を乗せ、「いけるか?肩貸してやるよ」と言った。
「大丈夫だ」
ユウタは、そういうも明らかに汗をダラダラと流していた。タケシとユウタは、立ち上がり、3人の後をついていった。
なぜ、殺した直後より、今の方が焦ってるみたいなんだ?もしかして、ユウタがループの犯人だったりして?いや、え、まてよ。蛇公園で別れた後、タケは、一人だった。もし、このループが人為的なものだったら、タケは一人になった時に殺されて、、、
タケシは、再びユウタの顔を見た。そして、冗談っぽくこう言った。
「もしかして、このループってユウタが犯人?」
ユウタは、明らかに動揺し出して、目が泳ぎ出した。
ユウタの傾いた体を、タケシが支えると、「わかった。後で話を聞こう」とタケシは語りかけた。
「よっこらしょっと!」
死体を井戸に滑り落とすと、ケンジは、井戸の中をライトで照らしながら、覗いた。
「深いねー」と彼は、呟いた。
「さて、今日はもう帰るかい?俺もなんだか疲れてきたよ。調査は、後日でいいかな?」
カズキとタケは頷く。タケシは、言いたいことがあったが、ユウタの顔を見て、「帰りましょう」と声を上げた。
ケンジを先頭に車に戻る。最後尾をタケシはユウタを支えて歩いた。
「タケとタケシ、そしてカズキ、、。俺は本当にいい友達を持ったよ」
ユウタは、泣きながら、そう呟いた。
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