第4話 違和感

 蛇公園は、低い鉄の柵に囲まれていてる小さな公園だ。その中に、滑り台とぶらんこ、鉄の輪っかが横向きにずらーっと並んでいる遊具がある。

 タケシもカズキに続き、中に入ると、遊んでいる子供達が見えた。彼らは、遊具の周りをぐるぐる回って、鬼ごっこをしているようだ。

 カズキを探すと、入り口の横にあるベンチに座っていた。

 タケシは、カズキの隣に座ると、彼が話しかけてきた。

 「まだまだ時間あるよな〜。どうする?サッカーするか?」

 カズキは、子供達を眺めている。

 「俺、中学生以来だわ。全くやってねー。高校は、帰宅部だもんなー。」

 「そっか、高校はなにもやってないのか。俺はまだサッカー続けてるよ。」

 なんともない世間話を2人は続けた。

 気がつけば、午後5時になっていた。

子供達のお母さん達が公園内に入ってきていて、楽しそうな遊び声を聞きながら、微笑み見せている。

 「あー、暇だなー。」

 カズキが、目線を上に向けて、背もたれにもたれかかった。そして、続けた。

 「なあ、ユウタんちいかね?あいつも暇してるでしょ」

「あー、でも昼間バイト入れてるらしいよ。いま、どうだろ」

 ユウタは、隣駅の遊園地で短期バイトしている。俺は、夏前に彼に誘われたから知ってる。めんどくさかったから、断った。

 「ふーん」

 カズキは、わざとらしく声を出して、返事した。

 タケシは、カズキが立ち上がるかなと思ってじっとしていた。

 カズキが立ったら、俺も立とう。

しかし、カズキが逆にダラダラし出しので、タケシは立ち上がり、「いくぞ」と声をかけて、一人で公園を出た。

 でてすぐ、後ろを振り向くと、カズキが付いてきていることがわかった。

 ちゃんと来るじゃん

 タケシは、心の中でツッコミを入れると、そそくさとユウタの家に歩み進めた。そのあとをカズキは、無言でついてきていた。

 2人は無言のまま、ユウタの家に着いた。

 ピーンポーン

 タケシは、早速、インターホンを鳴らす。

 しばらく待つと、男の声が聞こえた。

 「はい、もしもーし。あー、タケシ?どうした?暇か?」

 「うん。暇。だから、出てきて」

 タケシは、適当な返事をした。

 「ユウタくるってさ。」

カズキに話しかける。

 「んー、タケのとこも行く?」

 カズキは、頭をポリポリかきながら、目は合わせない。

 ガチャっと音がなると、ユウタが家から出てきた。

 「げっ、カズキいるじゃん。まあ、あのことは一旦、許してやるよ。タケシもいるし。」

 ユウタは、声を上げた。

 タケシは、ハっ?とした顔で、カズキを眺めた。

 カズキは、こちらを見ようともせず、「うん」と頷くだけだった。

 空気を読んでか、ユウタは2人に話しかけた。

 「なあ、どこ行く?映画行かね?俺まだ君の名は見てないんだよ。お前ら見た?」

 「俺、タケと行ったよ。カズキはまだだったよな。」

 あれ、君の名は見に行ったのは、1週間前だよな。タケのことは、随分前から苦手だったような。

 タケシは、言い終わる前に、視線をもう一度、カズキに合わせる。カズキは、ずっとどこかを向いている。

 なんだよ、こいつ。ユウタのとこ行くって、誘ったのお前じゃん。

 タケシは、むすっとした顔でユウタを振り返った。

 ユウタは、タケシの目の前まで来ていて、「いやぁ、許してくれ。俺たちちょっとあってな。」と肩を叩いて、なだめてきた。

昨日、LINEで喧嘩でもしたのか?普通に仲良さそうだっただろ、昨日の午前中。

 「ケンジさん、まだ大学いるんだろ?タケんとこ行こうぜ。あいつ、嫌がるかな。」

ユウタは、カズキに近づき、そう言った。

 ん?俺の知らない話してる?

 タケシは、訝しげに2人に聞いた。

 「なあ、もしかして、俺のこと、はぶってる?」

 「いや、別に。」カズキは、呟いた。

 「さあ、行こうぜ。」

 ユウタは、そう声を上げるとさっさと道を歩いていった。

 カズキは、それに続く。

 タケシも、それについて行った。

 無言のまま、3人は、約1m間隔で縦に歩いてる。

 タケシは、スマホの電源を入れ、のぞいた。  6時5分

 目の前に、ちょうどタケの家が見えてきた。

 先頭のユウタがインターホンを押す。

 プルプルプル、、、、プルプルプル

 その時、タケシのスマホが鳴り出した。

 誰だろうと、画面を見ると、タケからだった。

 タケシは、びっくりして、「ええーーーっ」と低く、声を上げてしまった。

 ユウタとカズキがタケシを見る。そして、ユウタが話しかけてきた。

 「どうした?タケシ。誰からだ?」

 「タケからだよ。は?あいつ、今、どこいんだよ」

 カズキとユウタは、顔を合わせる。タケシは、2人の様子を見ると、ついに違和感を発散させた。

 「おい、お前らなんだよ。俺の知らないとこで何あったんだよ。」

 タケシの言葉に、ユウタとカズキの顔色が少し悪くなった。

 「いや、、、、出なくていいのか?電話。」

ユウタは、なだめるように言った。

 そういや、出ないと可哀想だな。

 タケシは、通話ボタンを押した。

 耳を近づけると、タケが涙声が聞こえてきた。

 「今日も行くのか?廃墟に。俺は、俺は、多分、、行かない」

 今日も?この前も行ったのか?

 タケシは、「あ、ああ、そうなんだ。行かないんだ。」と返事した。

 プープープー

 電話が切れた。

 今日も行くのか?か、カズキも兄の為にとか言ってたし、こいつら、もう既に行ってるんじゃないか?

 「おい、なんて言ってた?」

ユウタが、心配顔で聞いてきた。

 「多分、行かないってさ。今日も」

「今日も?」

カズキは最後の言葉に反応した。

 「なあ、カズキ、ユウタ。お前ら、もう既に廃墟行ってるとかない?」

 タケシは、切り込んだ事を言った。

 「以前というかさ、まあ、多分行くのは、今日が最初で最後だと思うんだけど」

カズキのあやふやな発言にタケシは、ついに沸点を超えた。

 「だ、か、ら!!俺に何隠してんだよ!俺も今日、行くんだから、関係あるだろ。教えろ!」

 「行けば、多分分かる」

 ユウタは、下を向いて、小声で言った。

 「行けば?人が死んでるんだろ?なあ、ユウタ。俺は行かんぞ。危ないんだろ?」

「いや、今は答えられない。ただ、タケシには来てほしい。タケにも。」

 カズキは、そう言うと、タケシの目を見た。

 その時、家のドアが開いて、タケが顔を出した。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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