第3話 心霊スポット
タケシは、店を出ると、空が綺麗な群青色をしていることに気がついた。
今日いい天気だったんだな
タケシは、人目もはばからず、両手の指を組むと、ぐーーっと背伸びした。気持ちいい。気持ちよさに目を瞑ってしまった。
「あれ、お前の母親じゃねぇか?」
後ろから、カズキの声がした。
タケシは、カズキの方を振り向くと、次に彼の指先を見つめた。
本当だ。お母さんがいる。
駅前のぐるっと一周できるバス停の向こう側に、母と、彼女と同じ世代のおばさん達が4人ほどいる。
タケシでも一人はわかる、ご近所さんのミチルおばさんだ。小さい頃は、よくゼリーとかジュースとかくれた人だ。
彼女達は、レストランの前でゲラゲラと笑っている。昼食をそのレストランで食べて出てきたのだろう。
あ、やべ。お母さんに昼食作ってもらってたんだっけ。
タケシは、慌てて視線をカズキに戻すと、「ここに居たら、邪魔になるし、どっか行こうぜ」と言った。
カズキが口を開く前に、サスケが声を上げた。
「あ〜、悪い。俺今から、ミユとバイトあるわ。」
「あー、まじ?おけいおけい、じゃあ、また遊ぼな。」
カズキは、そういうと、サスケとミユに手を振った。タケシも彼に倣って、「バイバーイ」といいながら、手を振った。
サスケは、「またな」とだけ言うと、ミユと腕を組んで、2人で改札口の方へ歩いて行った。
タケシとカズキが2人を見送ると、カズキがタケシに向き直って、「どうする?」と言ってきた。
タケシは、「どうする。うーん、時間あるしな、ボーリングとかいかね?」と返した。
カズキは、少し考えると、思い出したかのようにこう言った。
「あー、そういえば、すぐそこのROUND1のボーリング場工事入っているらしい。だから、ボーリングはなしな。」
タケシは、少しがっかりした、
そうか、あそこ、修理してるんか。じゃあ、どうしよう。
タケシは、とりあえずそこを離れたかったので、カズキに「とりま、歩こう」と声をかけた。
カズキの体が動くのが見えると、タケシは、自宅の方へ歩き出した。カズキは、タケシの横に付き、タケシに話しかけた。
「そういえば、今日行く心霊スポットの話してなかったよな。それについて教えたる」
歩きながら、カズキは、続けた。
「あのラブホが閉鎖されたのは、タケシも知ってる通り、3年前。理由は、売り上げが下がってきたかららしい。で、あのラブホ、店長の趣味で結構変な物がたくさんあるらしい。まず、カウンターに等身大の鳥人間の像があるだろう?で、その隣に西洋甲冑が飾られているだろ?、、、、、、、、、」
タケシは、うんうんと頷いて聞いている。
「でさ、建物の中心に謎の小庭があって、電線の繋がっていない電柱が立っているらしいんだ。その電柱の灯りが夜になると、たまに光るらしい。それが、今回の心霊スポット。」
しょぼ
タケシは、嘲笑した。
訪問者のライトがうまい具合に当たってそう見えただけじゃない?もしくは、電気がまだ生きてて、たまたま光ったとか。
タケシは、カズキの方を見るとニヤニヤしながら、こう言った。
「それって、勘違いとかそういう類いのものじゃない?心霊かな〜」
カズキは、思った通りの反応だといった顔をして、タケシの顔を覗いた。
「まあ、そう思うよな。俺もそう思ったよ。でもな、この話には続きがあってな、あの時、4人で行ってたらしいんだけど、帰り道、車を出した一人は、全員を見送った後、事故って車壊したらしい。で、1人は、持っていってたスマホがいかれて、修理に出したらしい。で、もう一人は、元気だったおじいちゃんが後日、急に死んだらしい。それで最後の一人は、急に行方不明になって、その翌日、山井川の河口から、死体で発見されたらしい。」
タケシは、つい先日の大学生水死自殺事件を思い出した。
「人が死んでるのか?やばくねぇか?」
タケシは、驚愕した。
カズキは、タケシの反応を見ると、冷静にこう言った。
「でも、水死した人は、何か別の事件が絡んでるかもってさ。自殺って言われてるけど、他殺かも。ただ、これで、しょぼい心霊スポットじゃないってことはわかっただろ?」
言い終わると、カズキは、自身ありげな表情をみせた。それを見て、タケシは、カズキの顔を怪しげにみた。
危なくないか?他殺ってのは可能性の話だろ。人が本当に死ぬかもしれないとこなんか行けるかよ。
そう恐怖するもののタケシは、好奇心もあったので、頭の中では葛藤が渦巻いていた。
「カズキは、怖くないのか?他殺だと言い切れる?」
タケシは、尋ねた。
「俺も怖いよ。でも、兄ちゃんが行きたがってるんだ、真相を知りたいって。俺は行くよ。」
カズキは、ちゃんとした理由を言ってくれなかった。兄の為、、、、。タケシは、兄の為に何故行くのか聞けなかった。ただ、真っ当なことだけを聞いた。
「なあ、この話は、ユウタとかタケには言ってないよな?あいつらにも言ったほうがいいんじゃね?」
「そうだな、聞くか。ちょっと、待ってて」
カズキは、そう言うと、道の端に寄り、立ち止まると、スマホをポケットから取り出した。ぽちぽちと画面を叩いてしばらくした後、「お待たせ」と言って、タケシの方に戻ってきた。
2人は再び歩き出した。無言のまま、ずっと馴染みある道を歩いた。
気がつくと、2人は蛇公園に着いていた。
タケシは、立ち止まり、スマホを取り出して、時間を見た。 午後3:43
タケシに倣ってカズキも立ち止まり、スマホを手に取った。
「あ、LINEきてる。ユウタは、来るって。タケは、よくわからん。」
そう言うと、スマホ画面をタケシに見せてきた。
タケシがそれを覗いてみると、タケとのメッセージが見えた。
(今日行くって言ってた廃墟のとこ、前行った人が死んでるっぽい。たまたまかもしれないから、多分大丈夫だと思うけどどうする?やめる?)
(死んでるの?幽霊のせい?なしよりのありかな。)
タケシが読み終わり、顔を遠ざけると、カズキは、スマホの画面を自分に向け、ぽちぽちと何かを打った。
カズキは、スマホをしまうと、「来るかどうかはっきりして、って送っといた」と言って、蛇公園の中に入って行った。
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