第5話

 はー。今日の塾もだるかったな。

 大学進学という事で一応塾に火曜日、金曜日と通っている。

 残念な事に今日は授業が長引きいつもの電車に乗れるか分からなくなってしまった。

 大慌てで改札に着き、一段飛ばしで階段を登りながらホームに向かった。だか、ちょうどその時電車のドアが閉まった。

 今日は本来落選し行けないはずのライブのチケットを佐藤さんにもらい運を使い果たしていたので仕方がないが、ため息がもれてしまった。


「はー」

「はー」


 だが、誰かと重なり、横を見ると佐藤さんが同じようにため息をついていた。


「やや山本くん!?」


 ずいぶんとびっくりしてる彼女に話しかける。


「塾の帰りですか?」


 こんなに遅くなるのは塾の帰りくらいだと脳内で名探偵の俺が推理をする。


「えっと、少し違うんですけどそんな感じです。」


 結局彼女の言いたい事はよく分からなかったが何かあるみたいだ。

 次のが来るまで喋りながら時間を潰す。

 どうやら彼女はいつも俺が乗っているあの電車に乗っているらしい。


「今まで、知らないだけで会っていたのかもしれないですね。」


 と言って、彼女はくすっと笑う。


 電車が来て乗り込むと席が一つ空いていたので彼女を座らせて自分はその前に立つ。

 そうした気遣いをする事でモテポイントを稼ごうとしているのは秘密だ。


 話題が尽きて何を話そうかと悩んでる時に佐藤さんの最寄り駅に着いた。

 最後に彼女は


「明日、ライブ楽しんで下さいね!」


 と一言、言って降りた。

 やっぱり、フルセブのファンなのか?

 布教しようかなと思いながら、


「マジでありがとう!」


 と言うと笑みを浮かべ、窓の外から手を振っていた。


 そして、ガタンゴトンと電車が動き出す。さっきまで横にいたのに、彼女と電車の距離はどんどん離れていく。

 そして、俺はさっきまで彼女が座っていた席に座る。

 なんかあったかい。うへへぇ。

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