第4話

「ほらー!みんな、しっかり手を伸ばす!

 怜、いい感じ!」


「じゃあ、今日の練習はここまで!明日は本番頑張ってね!」


 はーー。やっと、レッスンが終わった。

 今日はライブの前日ということでハードだった。もう家に帰っても何も食べたくないくらいへとへとだ。

 私は、先生からも気合が入っていると何度も褒められた。


 今から数時間前、私は山本くんにチケットを渡したんだな。

 桃田怜が佐藤怜わたしだということを少し匂わせた事を後悔する。

 TVにも出てる芸能人だからって少し自慢したくなってしまった。

 彼は明日ライブに来るんだな。

 よっし、居残り練習をしよう!


「怜、まだ練習するんだ〜

 喋るのも下手だし、ダンスや歌もできるまで時間かかるよね〜

 アイドル、向いてないんじゃない?

 じゃあ、私は帰ろっと。」


 そう言うのは、リーダーの木下りんご。

 本名は木下美希。

 彼女は、フルセブのオーディションの前から子役やモデルと活躍してきた最も人気のあるメンバーだ。

 それに加えて、巨乳でエロいお色気担当という事で彼女のファンはさらに増えてきてる。

 実際は新しく芸能界に入ったフルセブのメンバーに嫌がらせをしている嫌な先輩だ。


「怜、そんな事ないよ。

 美希さん、嫌味だから気にしない方が良いよ!

 先生も言ってたけど今回気合い入ってるね〜彼氏でも出来た?」


 一瞬、ある男子の顔が浮かんだが


「そんなのじゃないです!!」


 と、否定する。


「怜がライブのチケット一枚欲しいとマネージャーさんに頼むしなぁ〜」


 そう言って元気付けてくれるのは、久保みかん。

 本名は久保美穂。

 山本君の推しだ。


「ちょっと落ち込んでる時に嬉しい事を言ってくれたのでお礼に渡しただけです!そんな事ないです!!」


 そう言って私は練習に励む。

 私はあの日の事があったから立ち直れた。彼のおかげだな。



 あの日、ネットを見て私ってやっぱりアイドルに向いてなかったのかな。初めから無理だったのかなとへこんでいた。

 ダンスや歌も未経験で他の人に比べて下手なのは自分でも分かってた。だから、一生懸命練習をして上手なメンバーとファンの人から言われるようになった。

 でも、テレビ番組や大勢の人の前で話す時は緊張と恐怖でどうしても話せなくなってしまう。

 実際にネットでも、アイドルに向いてないや、こいつはつまんないとよく叩かれていた。面白く喋れない私はこのグループにいらないのかなと思っている時に彼が教室で騒いでいた。


「みかんちゃーん、みかんちゃんはどこ?」


 教室でみかんちゃんこと美穂さんのキーホルダーがついた鍵を拾ってこれをどうしようかなと思っていたやつだ。

 それを彼の目の前に差し出すと大喜びをしていた。美穂さんはこんなにも認められてていいな。それに対し私ってダメだなぁと思っていた。なんでそんなことを聞いたか分からないけど、桃田怜ってどう思うと聞いていた。


『トークは苦手なのに頑張ってファンの人を喜ばせようと頑張ってるのも分かるし、ダンスや歌も陰で努力をしっかりしてるんだろうな。さらにな……』


 その言葉を聞いて、私の頑張りって認めてくれる人もいるんだ。必要とされてるんだって思えて頑張ろう!と前向きな気分になれたんだな。


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